★★ 時間単位年休を付与しますか ★★
「時間単位年休の制度はあった方が良いのでしょうか」
そう考える総務の方は少なくないようです。確かに仕事と生活の調和を図り、
年次有給休暇を有効活用するため、時間単位で年次有給休暇を付与すべきだと
いう考えもありますが…
■ 重要ポイント────────────────────────
時間単位年休は管理が難しいだけでなく気をつけなければならないことがい
ろいろあります。
■ 年次有給休暇の原則は1日──────────────────────
年次有給休暇は原則として労働日ごと、1日単位で付与するものです。
労働者の請求があって任意に半日単位の付与をすることは認められていました。
時間単位での取得が認められたのは平成20年の労基法改正(平成22年4月1日施
行)からで、労使協定の締結を条件に認められています。
■ 労使協定の締結────────────────────────
時間単位年休は労使協定の締結により、1年に5日を限度として時間単位で年休
を付与することができます。
労使協定で以下を規定します。
(1)時間単位年休の対象労働者の範囲
(2)時間単位年休の日数
(3)時間単位年休1日の時間数
(4)1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
■ 対象労働者の範囲────────────────────────
事業の正常な運営が妨げられる場合は、一部の労働者を対象外とすることがで
きます。
例えば以下の労働者を除外とすることは可能です。
イ) 工場の生産ラインにおいて業務に従事する者
ロ) 就業規則第X条(管理監督者の適用除外)に該当する者
ただし、「育児を行う労働者に限る」など取得目的を制限することはできませ
ん。
■ 時間単位年休の日数────────────────────────
労基法上、時間単位年休の取得限度は、鉛年度からの繰越しがある場合であっ
ても、5日が上限となっています。3日といった5日より少ない限度を定めるこ
とも可能です。
時間単位年休を付与しても、年5日の使用者による年休の指定義務の日数から
は控除することができません。使用者の側から時間単位で年次有給休暇の時季
指定をすることもできません。
■ 時間単位年休1日の時間数────────────────────────
1日8時間の所定労働時間の会社では「1日分の年次有給休暇は、8時間分の時間
単位年休に相当するものとする」で違和感はないでしょう。
所定労働時間が7時間45分などの会社では、時間に満たない端数がある場合は
時間単位に切り上げます。
■ 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数──────────────
時間単位年休は2時間、3時間などの1時間以外の時間を単位とすることもでき
ます。
■ 1年目に4時間の時間単位年休が残ったら?─────────────────
1年目に付与された年休のうち未消化の時間単位年休が4時間だけ残った場合、
2年目に年次有給休暇が新たに付与されるタイミングで4時間は1日に満たない
ので切り捨ててよいでしょうか。
1日未満の端数が残った場合は、
(1)翌年に繰り越す
(2)端数を日単位に切り上げ1日として与える
などの対応が考えられますが、残った端数時間をの付与しないことは認められ
ません。
■ 1年の途中で所定労働時間が変更された場合───────────────────
1年の途中で所定労働時間が変更された場合、時間単位で取得できる時間数は
どうなるでしょうか。
時間単位年休として取得できる範囲のうち、日単位で残っている部分について
は、1日が何時間に当たるかは変更後の所定労働時間によることとなります。
日単位に満たず時間単位で保有している部分については、所定労働時間の変動
に比例して時間数が変更されることとなります。
例えば所定労働時間が8時間から4時間に変更され、年休が3日と3時間残ってい
る場合は、3日と3/8日残っていると考え、以下のとおりとなります。
【変更前】3日(1日当たりの時間数は8時間)と3時間
【変更後】3日(1日当たりの時間数は4時間)と2時間
(比例して変更すると1.5時間となりますが、1時間未満の端数は切り上げます)
(厚生労働省パンフレットより)
■ 時間単位年休は取り入れなければならないものではない──────────────
仕事と生活の調和という観点から時間単位年休を取り入れてほしいという従業
員は少なくないかもしれません。
取入れた場合は日単位と時間単位の両方で年次有給休暇を管理しなければなら
ず、新たに年休が付与される時は時間分の持越し等の事務も煩雑です。所定労
働時間が変わったときの端数処理などの事務もあります。
事務負担を考えると、1時間単位ではなく、2時間単位という時間単位年休もよ
いのではないかと思います。