派遣労働者を受け入れるとき

★★ 派遣労働者を受け入れるとき ★★

御社に派遣労働者はいらっしゃいますか。

派遣労働者を受けいれるときに注意することをまとめてみました。

■ 重要ポイント ────────────────────────

派遣労働者を雇用しているのは派遣元(人材派遣会社)だが、実際に派遣労働
者に指揮命令している派遣先会社は、様々な雇用管理上の義務を負っている。

■ 派遣労働者とは ────────────────────────

派遣労働者とは人材派遣会社(派遣元)と雇用契約を結び、その会社が労働者
派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に派遣され、派遣先の指揮命令を受けて
働く労働者のことです。

派遣元に雇用され賃金をもらいますが、働くのは派遣先の会社、即戦力とし
て期待されることが多い労働者といえます。

■ 派遣労働者の数は ────────────────────────

派遣労働者はどのくらいいるのでしょうか。

2017年の派遣労働者実態調査の概況によれば、派遣労働者が就業している事業
所の割合は12.7%です。また全労働者数に対する派遣労働者の割合は3.2%と
なっています。

■ そもそも労働者派遣とは ────────────────────────

労働基準法第6条は「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他
人の就業に介入して利益を得てはならない。」と中間搾取の排除を定めていま
す。

職業安定法第44条は労働者供給を業として行うことを禁止しています。

労働者供給事業は強制労働につながり、使用従属関係を利用して労働者の人格
が無視され、賃金をピンハネする中間搾取も起こると考えられ、禁止されてい
ました。

1986年、その規制を解除する法律として労働者派遣法が制定されました。

派遣元は労働者を雇用しその責任を果たすことを前提に、違法な労働者供給事
業が適法化されたのです。労働者派遣事業に参入するには許可(許可の有効期
間は3年)を受けなければなりません。

派遣元・派遣先双方は派遣法の定める規制の遵守が強く求められています。

■ 派遣労働者を受け入れる理由 ───────────────────────

派遣労働者を受け入れる主な理由について前掲実態調査の概況では「欠員補充
等必要な人員を迅速に確保できるため」「一時的・季節的な業務量の変動に対
処するため」「軽作業、補助的業務等を行うため」「専門性を生かした人材を
活用するため」など様々なものがあります。

直接雇用するよりリスクが少ないように思える派遣労働者の受け入れですが、
派遣先も法令を遵守しなければなりません。

■ 派遣先が派遣法で求められている主なこと ─────────────────

派遣先における派遣労働者の適正な就業を確保するため、派遣先責任者を選任
しなければなりません。

派遣先は派遣労働者の就業実態を的確に把握するために派遣先管理台帳を作成
し、3年間保存することが求められています。

派遣先は派遣労働者の就業実績を1か月ごとに1回以上、一定の期日を定めて派
遣元事業主に通知する必要があります。この通知により派遣元事業主・派遣先
共に法令や契約内容が守られているか確認することになっています。

派遣先は派遣労働者から苦情の申出を受けた場合、苦情の内容を派遣元事業主
に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携のもとに誠意をもって、
遅滞なく、苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければなりません。

■ 2020年改正の労働者派遣法 ────────────────────────

「パートタイム労働法」が「パート・有期雇用労働法」に改正され、パートタ
イム労働者と有期雇用労働者は、同一企業内の通常の労働者と比較し、均等・
均衡ルールが適用されることになりました。

派遣労働者の場合には、派遣先の通常の労働者と比較して均等・均衡の待遇が
求められることになりました。

原則的な方式は「派遣先均等・均衡方式」です。派遣先は派遣元に比較対
象労働者の待遇情報の提供をしなければなりません。

特例的な方法が「労使協定方式」です。

派遣元は同じ地域で働く、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の
額と同等以上の賃金額、待遇になるように労使協定を締結し、それによって待
遇を決定します。労使協定方式では、派遣先の待遇を考慮する必要はありませ
ん。

派遣先管理台帳には協定対象派遣労働者であるか否かを追加記載しなければなりません。

■ ハラスメント防止と派遣先の責任 ─────────────────────

2020年6月(中小企業は2022年4月)からパワハラの予防措置が義務化されまし
た。

パワハラ防止については労働施策総合推進法で以下のことが求められています。

「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境
が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するた
めに必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならな
い。」

ここでは「雇用する労働者」となっており、派遣労働者は除外されているよう
な印象を受けますが、派遣法では、パワハラ・セクハラ防止措置、妊娠・出産
や育児休業取得を理由とする不利益取り扱いの禁止について、派遣先は派遣労
働者の雇用主とみなして適用するとなっています。派遣労働者を対象に含めた
対策をとることが求められています。