育児休業法30年

★★ 育児休業法30年 ★★

育児休業法が今年大きく改正されました。

育児休業を取得する男性が増えることが期待されています。

育児休業法は成立から30年になる法律です。

■ 重要ポイント ────────────────────────

育児休業法の原型は勤労婦人福祉法に遡ることができます。

育児休業は休業期間の社会保障制度の充実とともに取得しやすいものとなって
きました。

■ 勤労福祉婦人法と仕事と生活の調和 ──────────────────

1972(昭和47)年に成立した勤労婦人福祉法は勤労婦人の福祉の増進と地位の
向上を図ることを目的とした法律でした。基本的理念(第2条)は次のとおり
です。

「勤労婦人は、次代をになう者の生育について重大な役割を有するとともに、
経済及び社会の発展に寄与する者であることにかんがみ、勤労婦人が職業生活
と家庭生活との調和を図り、及び母性を尊重されつつしかも性別により差別さ
れることなくその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができる
ように配慮されるものとする。」

当時のリーフレットには妊娠中及び出産後の勤労婦人について、超過勤務の
制限や勤務時間の短縮等による勤務の軽減などを求めています。

育児休業の努力義務も定めています。

「育児休業とは、乳・幼児をもつ勤労婦人が申し出た場合に雇用関係を維持
したまま一定期間育児のために休業することを認めることをいう」とあり、対
象は女性のみですが育児休業法の原点を見ることができると思います。育児に
関する便宜の供与(保育所に通うための時間などについての配慮)も求めてい
ます。

■ 育児休業は30年前から ────────────────────────

1992(平成4)年4月1日育児休業法が施行されました。1986(昭和61)年4月か
ら雇用機会均等法(雇用の分野での男女の均等な機会及び待遇の確保)が施行
されましたが、さらに労働者が育児のために雇用を中断しないで、能力を発揮
できるようにすることが育児休業法の目的です。

当時は、従業員数が常時30人以上の事業所を適用の対象としていました。

 

■ 1995(平成7)4月1日改正 ────────────────────────

1995(平成7)年4月1日に、育児休業法が改正され、現在の「育児・介護休
業法」となり、介護休業制度が法制化されました(介護部分については、1999
(平成11)年4月1日から施行)。従業員数に関わらず、すべての事業所が法
律の適用対象となりました。

1999(平成11)年4月1日改正では、介護休業制度の義務化や深夜業の制限制
度が創設されました。

■ 2017(平成29)年10月1日改正 ──────────────────────

その後度重なる改正がありましたが、現在の形に近くなったのは2017年の改正
です。

育児休業の期間について最長2歳までの再延長が可能となりました。

介護休業の分割取得、介護のための所定労働時間の短縮措置、介護のための所
定外労働の制限の制度ができました。

子の看護休暇・介護休暇については、1日単位での取得からの半日単位の取得
が可能になりました。

改正前は、育児休業の対象になるのは、法律上の親子関係である実子・養子に
限られていましたが、改正後は、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里
親に委託されている子などについても、新たに対象とされました。

妊娠、出産、育児休業、介護休業などを理由とする、上司、同僚による就業環
境を害する行為を防止するため、雇用管理上必要な措置を講じることが会社に
義務付けられました。雇用管理上の必要な措置とは、会社の方針の明確化と、
従業員への周知・啓発、相談体制の整備、ハラスメント行為への対応をいいま
す。

会社は、従業員またはその配偶者が妊娠・出産した場合、あるいは家族を介護
していることを知った場合には、当該従業員に対して、個別に、育児休業・介
護休業に関する定め(育児休業中や休業後の待遇や労働条件など)を周知する
よう努めることとされました。

育児目的休暇の努力義務が創設されました。

■ 2021(令和3)年1月1日改正 ────────────────────────

子の看護休暇・介護休暇が、半日単位から、1時間単位で取得することが可能
になりました。

■ 2022(令和4)年、4月10月改正 ───────────────────────

4月に育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、個別の周知・意向確認が求め
られるようになり、10月から出生時育児休業が創設されました。

■ 育児休業給付金の改正 ────────────────────────

育児休業法ができても経済的な保障がなければ休業は取得しにくいものです。

雇用保険で育児休業給付金の支給が開始されたのは1995(平成7)年4月のこと
です。給付率は合計25%でしたが、育児休業中は20%のみの支給で職場復帰し
て6カ月経過後に残りの5%が支給されるというものでした。

その後2001(平成13)年1月に40%(休業中30%、職場復帰後10%)に上がり、
さらに2007(平成19)年10月に50%(休業中30%、職場復帰後20%)に改正さ
れました。2010(平成22)年4月には50%の全額が休業期間中に支給されるよ
うになり、2014(平成26)年1月からは休業前賃金の50%(休業開始から6か月
間は67%)支給となり現在に至っています。

■ 社会保険料の免除 ────────────────────────

1995(平成7)年4月から育児休業期間の社会保険料が本人負担分のみ免除とな
りました。事業主負担分の免除はありませんでした。

2000(平成12)年4月から事業主負担分も含めて免除となりました。

2014(平成26)年4月から産前・産後休業中についても労使ともに社会保険料
が免除されることになりました。

■ まとめ ────────────────────────

育児休業制度ができてからの30年、子の養育と仕事の両立を図る改正が続いて
きたことがわかります。2014年から育児休業給付金も今の水準となり、育児休
業も産前・産後休業も労使ともに社会保険料が免除となりました。

出生時育休(産後パパ育休)の法改正が男性の育児休業取得率(政府目標は
2025年男性の育休取得率30%)を高めワークライフバランスに資することになる
のでしょうか。