平成22年4月から、労使協定を結べば時間単位での年休がとれるようになります。
「えっつ?時間単位での年休はダメだったはず・・・」
ハイ、年休は1日単位が原則です。
法改正を前に年休について間違いやすい点を整理し、来年からの取扱いを間違わないようにしましょう。
■ 重要ポイント
年休は、仕事以外の生活を充実させるためのもの。その取得単位は原則1労働日です。
改正労基法で、労使協定により時間単位の取得を認めることになりましたが、考え方の基本に変更はないので、時間単位の付与は無制限には認められません。
■ そもそも年休とは
休日とは違って、労働日に就労義務が免除されている日のことです。「有給」とは、使用者に賃金を支払う義務はあるけれど、労働者に働く義務はない、ということです。
労働基準法に基づく年次有給休暇は、後で述べる算定期間中の出勤率が8割以上である労働者に対して、理由を問わず、労働者が指定する時期に与えなければなりません。
■ 「2日前までに文書で申し出ること」という規定は?
勤続年数に応じた年休を自由に利用する権限は、「出勤率8割以上」という過去に属する要件を満足した時に発生します。労働者からの申し出は使用者に許可を求めるものではなく、すでに発生している権利を行使する時期を通知するものでしかありません。
不意の時期指定であっても不許可にはできないので、「決められた手続を守らなければ休暇を与えない」という強い意思ならその規定は無効です。
ただし、「その時期だと事業の正常な運営を妨げる」客観的な理由がある場合、使用者が時期変更権を行使することは認められています。
■ 最高何日まで?
過去の勤続年数に応じて、算定期間(最初は半年間、以後は連続する各1年間)中8割以上出勤した労働者に対して、次年度1年間に与えるべき年休の日数が下表のとおり定められています。
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年・・・ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
発生日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 各20日 |
採用後最初の半年が満了した時点で10日間・・ ・・6年半で20日間(あとは頭打ち)。この20日が単年度発生分としての最高日数です。これは労働基準法のキマリですので、勤続年数(期間)には試用期間を含みます。
労基法の他の権利と同じく、年休も発生後2年で時効により消滅します。それまでの2年間は権利が生きているので、前年度の20日がすべて未消化の人は、本年度分と合わせ最大40日の休暇を取得できることとなるわけですが・・
■ 1年間の雇用契約でも年休は10日?
雇用の期間が最初から1年と決まっている人は、半年過ぎた時点であと半年しかないのだから、10日ではなく5日でいいのでは?
労基法に基づく年次有給休暇の権利は、[最初の6カ月・その後1年間毎の継続勤務]と[8割以上の出勤] という過去に属する二つの法定要件さえ満たせば、雇用関係が終了するなど未来に属する事情には左右されず機械的に発生しますので、後半年なのだから、年休も半年分ということにはなりません。
■ 定年後再雇用者の年休は?
60歳定年後再雇用し人の場合、再雇用前の勤続年数は通算されるのでしょうか?リセットされ、ゼロから始まるのでしょうか?
勤務の実態はどうかということが判断のポイントとなります。定年後再雇用だと通常は労働関係が継続しているので、通算しないといけないでしょう。
■ 年休の買い上げは?
来月退社する人から未消化の年休を買い上げてくれと言われ困っています。
使用者が買い上げると自由利用がきなくなるので、労基法上の年休は買い上げが禁止されいます。
年休は期間中の完全消化が原則なので、退職日が迫っている労働者から未消化年休を請求されたら、その全ての日数を在職中に消化させるよにしなければなりません。
時期変更権の行使は可能ですが、退職間際に、「事業の正常な運営を妨げる」として是認できるのは業務の引継ぎに最低限必要な日数だけでしょう。残余は全て年休処理し・・
それでも消化し切れない年休は労働者にあきらめてもらうしかありません。
使用者が買取請求に応じる義務ないのですが、日ごろの年休管理に自信がない使用者は・・ ・・そのような場合には、監督署は「違法として取り扱わない」ようです。
以上、労働基準法上の年次有給休暇は、期間中にいつでも自由に使えなくてはならないので買い上げはできませんが、金銭に換えるのではなく、時効消滅分の積み立て制度を設け、長期の病気休業のときなどに利用できるようにしている会社はあります。
■ 早退・遅刻は出勤率でどうなる
「8割出勤」の関係で、遅刻や早退をした日はどう数えるのでしょう?
労基法上の年休の取得要件として出勤率を計算するにあたっては、遅刻・早退の一部欠勤は「出勤」としてカウントしてください。
■ 半日年休は
1日は休みにくいけれど半日ならとりやすい。
よく聞くところですが、年次有給休暇の取得単位は1労働日が原則。半日休暇は、労使の合意(一方の申し出と他方の承諾)があれば認められます。
半日年休の「半日」は、午前又は午後の半日で、実時間の長さに関わりなくいずれも0.5日の年休取得として管理することになります。
同じ半日でも、午前の途中(例えば10時)から午後の途中(例えば3時)までの5時間(休憩時間をくと4時間?)はここで言う半日ではなく、次の時間単位年休の5時間分(4時間分?)となりますので、これを採用するなら、何をもって午前半日とし午後半日とするか、混同が生じないよう就業規則で明確に定義しておく必要があります。
■ 時間単位年休は
平成22年4月1日以降、労使協定で次の事項を定めておけば、労働者の発意を前提として、法定年休の5日分を限度に、時間単位の年休を付与することが認められるようになります
- 時間単位で年次有給休暇を与えることができることとする労働者の範囲
- 時間単位で与えることができることとする年次有給休暇の日数(5日以内)
- 時間単位年休1日の時間数、1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
時間単位の年休は、労働者発意の申し出がない限り与えることができません。時間単位年休を実施する場合には、年休の付与方法として就業規則に記載しておく必要があります。
■ 年休取得の政府目標
仕事と生活の調和推進のための行動指針が策定されています。 行動指針では現在46.6%である年次有給休暇取得率を2012年には60%、2017年には100%にすると目標値を定めています。
時間単位年休を認めるという改正も、年休の取得率アップのために考えられたことです。年次有給休暇の単位はあくまでも1日が原則で、時間単位年休は労使協定があって労働者が希望した場合、例外的に取得できるものなのです。
その他の記事 (詳細はPDFをご覧ください)
○ ト ピ ッ ク ス 健康保険の料率が都道府県別に 平成21年9月から
全国一律で1000分の82だった健康保険の料率が9月からは都道府県ごとに違う料率となり、新潟県は1000分の81.8になります。
一番高いのは北海道で82.6/1000、一番低いのは長野県で81.5/1000です。
○ シリーズ年金 ~ 未支給年金 ~ 請求を忘れずに
年金は偶数月の半ばに前月と前々月分が支給されます。 Aさんが8月10日に死亡すると、8月にもらえるはずだった6月と7月分の年金と8月分の年金が未支給年金となります。 Aさんと生計を同じくしていた遺族は「未支給年金・保険給付請求書」で手続きをし、未支給年金を受給できます。 遺族とは「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」をいいます。
○ 人事労務の素朴な疑問 朝遅刻した社員が残業した、残業代は?
足し引きしたあとの実労働時間が法定労働時間(原則1日8時間)を超えている場合には割増賃金を支払わなければなりません。 所定労働時間8時間の会社で、朝1時間遅刻した従業員がその日1時間残業しても実労働時間は8時間(ちょうど)なので、「労基法上は」、割増賃金は発生しません。
業 務 日 誌 か ら
◆ 労災になる、ならない? ◆
「組立作業をしている従業員が、腰痛になり医師の診断を受けた。業務について聞かれたというが、同様の作業をしている者に腰痛はなく、まったく意外なこと。どのように対応すればいいのでしょう?」
「腰痛になった従業員の方が労災申請をしたいというのであれば、会社としては業務の状況をできる限り証明してやるべきでしょう。
業務上か否かの判断は、あくまでも行政官庁(労働基準監督署)が行うものです。腰痛症の業務上外の取り扱いは難しい問題ですが、認定基準については『・・・症状の内容及び経過、負傷又は作用した力の程度、作業状態(取り扱い重量物の形状、重量、作業姿勢、持続時間、回数等)、当該労働者の身体的条件(性別、年齢、体格等)、素因又は基礎疾患、作業従事歴、従事期間等認定上の客観的な条件の把握に努めるとともに必要な場合は専門医の意見を聞く等の方法により認定の適正を図ること』と通達が出ています。」