130万円の壁

130万円の壁を解消する取組みが議論されています。

■ 重要ポイント ────────────────────────

サラリーマンや公務員が加入する社会保険制度には年収130万円までを無職の
ように扱って扶養と認める制度があります。

130万円という数字は制度ができたころからの数字。現状にそぐわなくなって
います。

■ 年収130万円を超えると配偶者の被扶養者を外れる ───────────────

サラリーマンや公務員が加入する社会保険制度では、家族を扶養してもしなく
ても保険料は変わりません。

扶養されている家族の年収が130万円以上だと健康保険の被扶養者から外れて
しまいます。さらに扶養されている者が配偶者である場合は、年金も自分で納
めなければならなくなり(第3号被保険者でいられなくなる)ます。

■ 健康保険の被扶養者になるには ────────────────────────

健康保険の被扶養者とは、「社会保険の被保険者によって生計を維持する
者」のことです。

収入のない学生や子どもが被扶養者になることに問題はありませんが、収入
がある配偶者や子ども等については、次のような基準があります。

(1)同居の場合
対象となる人の年間収入が130万円未満(対象者が60歳以上の者である場合
又は障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合は180万円未
満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること

(2)別居の場合
対象となる人の年間収入が130万円未満で、被保険者からの仕送り額(援助
額)より少ないこと

■ 健康保険の130万円未満の基準はいつから ───────────────────

健康保険の被保険者の要件である130万円という基準は、昭和52年(1977年)4
月6日の厚生省保険局長の通知文書です。(なんと46年前!)

■ 年金の扶養制度の130万円はどうして ─────────────────────

年金制度ではサラリーマンや公務員など厚生年金に加入している者を第2号被
保険者、第2号被保険者の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の者を第3号被
保険者、それ以外の年金制度加入者(自営業者など)を第1号被保険者といい
ます。

夫が働き妻は無職である世帯をモデルとしてできた制度です。年収130万円ま
での扶養されている配偶者は(制度上は性別にかかわりなく)第3号被保険者
になれます。

■ 第3号被保険者はいつから ────────────────────────

昭和36年(1961年)に国民皆年金制度となったにもかかわらず、サラリーマン
や公務員に扶養されている配偶者は年金が任意加入だったため、障害になった
ときや離婚時に無年金になるという状態でした。

昭和60年(1985年)、基礎年金が創設され、すべての者がいずれかの年金制度
に加入することとなり、第3号被保険者の制度ができました。第3号被保険者は
保険料の負担なしに65歳になると基礎年金が支給されます。第3号被保険者の
保険料にあたる費用は、第2号被保険者全体で負担している仕組みです。

■ 第3号被保険者は配偶者が第2号であることが要件 ───────────────

第3号被保険者は配偶者が第2号被保険者である場合に限られるので、自営業や
フリーランスのような第1号被保険者が配偶者である場合は所得がなくても第1
号被保険者です。毎月の保険料は一人16,540円(2022年度)です。

(保険料の免除制度はありますが、手続きをしないで未納が続くと障害の状態
になったときに障害年金が受けられなくなります)

配偶者の離職、死亡、離婚の場合も第3号被保険者になることはできません。

■ 女性の年収は100万円から200万円がボリュームゾーン ──────────────

国税庁では毎年平均年収のデータを出しています。

令和3年(2021年)の平均年収は443万円ですが、性別では男性は545万円、女
性は302万円です。

さらに構成比のデータを見ると男性は400~500万円が17%で最も高く、女性
は100~200万円が22.5%で最も高いゾーンとなっています。

130万円未満なら健康保険料も年金保険料も負担がなく、年金は掛けていた
ことになり将来の給付もあるのですから、就労調整をする者は少なくないでし
ょう。制度当初に想定した無業の妻はほとんどいなくなっているのです。

■ 社会保険の適用拡大と130万円の壁 ──────────────────────

週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上の労働者について、
社会保険の適用拡大が進められています。来年2024年10月からは従業員数51人
以上の企業で働く該当者が社会保険に加入することになりなります。短時間労
働者の社会保険の加入が進むことで結果的に130万円の壁が崩れる可能性があ
ります。

130万円の壁は年金の第3号被保険者問題と複雑に絡み解決が難しい課題です。