デジタル払いをしますか?

給与の支払い方法が一つ増えます。

■ 重要ポイント ────────────────────────

4月に入ってKDDIと楽天グループが、デジタル給与事業への参入を厚生労働相
に申請したと伝えられました。

審査が通れば、KDDIのauペイ、楽天キャッシュで給与を受け取ることができる
ようになります。

■ 賃金は通貨払いが大原則 ────────────────────────

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」労働
基準法で定められています。従業員から同意を得た場合に、本人の銀行口座や
証券総合口座に振り込むことができます。

■ デジタル払いとは ────────────────────────

PayPayなどの「資金移動業者」の口座へ給与を移動することを給与のデジタル
払いといいます。

「資金移動業者」は金融庁への登録が必要です。金融庁に登録された資金移動
業者は84あります。

そのなかで、「賃金の確実な支払」を担保するための要件を満たす一部の資金
移動業者のみに限定して(厚生労働省が審査する)その口座に給与を振り込む
ことができるようになるのです。
資金移動業者が要件を満たすかどうかの審査に数か月かかるといわれています
ので、まだ実際にデジタルで給与を受け取ることはできません。

■ デジタル払いですべきこと ────────────────────────

デジタル払いを希望する従業員がすぐにデジタル払いをしてもらえるわけでは
ありません。事前に労使協定を締結する必要があります。従業員の過半数代表
者と「口座振込み等の対象となる従業員の範囲」などの事項について労使協定
を締結します。

(労働者及び使用者の双方が希望する場合にデジタル払いが可能となるもので、
デジタル払いを希望しない労働者及び使用者に強制するものではありませ
ん。)

そのうえで給与のデジタル払いを希望する従業員に対し、給与のデジタル払
いに関する留意事項を説明したうえで、個別に従業員の同意を得る必要があり
ます。

■ 説明する事項 ────────────────────────

(1)指定資金移動業者口座は、「預金」をするためではなく、支払いや送金
に用いるためのものであることを理解の上、支払いなどに使う見込みの額を受
け取るようにすること

(2)口座の上限額は100万円以下に設定されてるので、上限額を超えた場合
は、あらかじめ労働者が指定した銀行口座などに自動的に出勤されること

(3)ATMや銀行口座などへの出金により、口座残高を現金化することができ、
月1回は口座からの払い出し手数料がかからないこと

その他資金移動業者が破綻した場合の保証、資金移動業者口座の資金が不正に出
金等された場合の補償などもデジタル払いに関する留意事項です。

■ 希望しない人は今まで通りでよい ───────────────────

賃金のデジタル払いを会社が導入しても、希望しない労働者はこれまで通り銀
行口座などで賃金を受け取ることができます。希望しない労働者に賃金のデジ
タル払いを強制してはいけません。

デジタル払いを希望する労働者は、賃金の一部を指定資金移動業者口座で受け
取り、その他は銀行口座などで受け取ることも可能です。

賃金は確実に本人に渡すべきものですから、デジタル払いを導入するにはテ
マヒマがかかるといえそうです。