育児・介護休業法が改正されました。
公布日は平成21年7月1日でした。施行日は平成22年6月になりそうですが、いったい何をすればよいのでしょうか。
■ 重要ポイント
育児・介護休業法の改正の目的は少子化対策。「男女ともに、子育てや介護をしながら働き続けることができる雇用環境を整備しましょう」という改正です。今まで以上に大変でややこしい改正ですが、場合によっては20万円以下の過料もあるという改正、要点はおさえておきましょう。
■ 5項目の要点
大きく5項目あります。
(1)子育て中の短時間勤務と残業免除の義務化
3歳までの子を養育する労働者が希望すれば利用できる、短時間勤務制度を設けることと、労働者が請求すれば所定外労働を免除することが義務となります。
現行では、3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度・所定外労働免除制度などから1つ選択して制度を設けることが事業主の義務です。
(2)子の看護休暇制度の拡充
子の看護のための休暇の取得可能日数が、小学校就学前の子が1人であれば5日、2人以上であれば年10日になります。
現行は、小学校就学前の子がいれば、一律年5日の看護休暇です。
(3)父親の育児休業の取得推進(パパ・ママ育休プラス)
父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2か月(現行1歳)までの間に1年間育児休業をとれるようにしなければなりません。
配偶者の出産後8週間以内の期間内に父親が育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度、育児休業の取得ができるようにしなければなりません。
配偶者が専業主婦(夫)であれば、育児休業の取得ができないとする制度を廃止しなければなりません。
⇒ これらにあわせ、雇用保険の育児休業給付についても改正される予定です。
(4)介護休暇の新設
労働者が申出た場合、要介護状態の対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日、介護休暇を取得できるようにしなければなりません。
現行の介護休業(要介護状態にある対象家族1人につき、要介護状態ごとに1回、通算して93日まで取得可能)に加えての介護休暇の新設です。
現行はロングの介護休業で、あらたに設けられるのはショートの介護休暇です。
(5)実効性の確保
法律ができてもあるだけでは意味がありません。
◎苦情処理・紛争解決の援助および調停の仕組みが創設されました。
育児休業の取得などについてトラブルがあった場合には、都道府県労働局長が援助を行います。具体的には、取り扱いに不満を持った労働者が雇用均等室に申出ると、均等室の担当者が労使双方の間に入って問題解決のための助言などを行います。労働局長による援助は平成21年9月30日から施行されています。
また、調停とは調停委員(弁護士や学識経験者等の専門家)が援助する制度です。
雇用均等室に調停申出書を提出すると、調停委員が労使双方の言い分を聞いて調停案を作成し、双方に勧告、問題解決を図るというもので平成22年4月1日にスタートします。
◎ 勧告に従わない場合の公表制度や、報告 を求めた際に虚偽の報告をした者に対する過
料(20万円以下)が創設されました。
■ 第1子出産で離職する人は7割
女性の育児休業取得率は、平成8 年には49.1%でしたが、その後上がり続け、平成20年には90.6%になりました。
一方、女性の約7割が第1子出産を機に離職しています。
子どもが小さいときの短時間勤務、残業の免除などで、子育てと仕事を両立する環境を整えることがいままで以上に事業主に課されることになります。
■ 男性の約3割が育児休業をとりたいと考えている
女性の育児休業取得率は上がっても、男性はまだまだです。男性の育児休業取得率はなかなか上昇せず、1.23%です。
男性の3割が育児休業をとりたいと希望しているのに、実際は取れないという調査結果なのです。
また、男性が子育てや家事に費やす時間は先進国では最低です。男性が子育てや家事にかかわっていないので、女性に子育てや家事の負担がかかり、女性の継続就業を妨げ、少子化の原因にもなっていると報告されていま
す。
■ 施行時期・猶予措置
調停は22年4月1日から施行されますが、以下については22年6月30日施行予定です。
(1)3歳までの子を養育する労働者に対する短時間勤務制度の措置の義務化、所定外労働の免除の制度化
(2)子の看護休暇の拡充
(3) 男性の育児休業取得促進策
(4) 介護休暇の創設
(1)(4)について、従業員100人以下の企業は施行が猶予されます。平成24年6月30日施行の予定です。
■ 育児休業法の歴史
平成3年5月15日「育児休業等に関する法律」が公布され、翌年4月1日から施行されました。
育児休業については、当初、勤労者婦人福祉法で、女性だけを対象とした努力義務規定として定められていました。
その育児休業について、男女労働者を対象とし、義務化する等を目的として制定されたのが「育児休業等に関する法律」です。
その後、平成7年の改正で、介護休業が努力義務規定として盛り込まれました。
平成9年、介護休業が義務化され、現在の「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(覚えられない長さですね!)と改められました。
■ パートタイマー比率は高まっている
パートタイマーなどで働く人の割合は高まっています。雇用が不安定で、そもそも育児休業なんて申請できない
人が増えていることが心配されます。
雇用の安定のための施策とリンクしてこそ、この育児・介護休業法の改正も生かされる気がします。