★★ 年金法改正と社会保険の実務対応 ★★
年金制度改正の内容が明らかになりました。
実務に影響の大きい、社会保険の適用拡大や在職老齢年金のしくみの改正があります。
■ 重要ポイント ────────────────────────
年金制度改正は実務に影響が多きいものがたくさんあります。
■ 社会保険の106万円の壁の廃止───────────────────────
現在の短時間労働者の社会保険の加入要件は以下です。
週の所定労働時間が20時間以上
所定内賃金が月額8.8万円以上
2か月を超える雇用の見込みがある
学生ではない
この要件のうち所定内賃金が月額8.8万円(年額換算で106万円)以上といういわゆる年
収の壁がなくなります。
背景には最低賃金が上がってきているということがあります。
1年は52.14週ありますから、週20時間で働ける年間の労働時間は1042.8時間です。
106万円を1042.8時間で割ると1016円。つまり最低賃金が1016円以上だと月額賃金要件の
意味がなくなるのです。
現在、最低賃金の最も低いのは秋田県の951円です。
■ 社会保険加入の企業規模要件の撤廃────────────────────────
2024年10月から企業規模(常勤の従業員数)が51人以上になると短時間労働者も社会保
険に加入しなければならなくなっています。
今後10年をかけて段階的に縮小・撤廃され、短時間労働者が週20時間以上働くと、企業
規模にかかわらず社会保険に加入になります
。
35人超・・・2027年10月
20人超・・・2029年10月
10人超・・・2032年10月
10人以下・・2035年10月
■ 社会保険加入の個人事業所の適用拡大────────────────────────
現在は、常時5人以上の者を使用する事業所のうち、法律で定める17業種について社会
保険の適用事業所となっています。
2029年10月から適用対象外である17業種以外もすべて対象となります。
新しく加入になる業種は、農業、林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業などです。
5人未満の個人事業所は現行通り対象外です。
■ 在職老齢年金の基準額が62万円に────────────────────────
働きながら年金を受給する場合、賃金が一定額を超えると年金が減額されます。
年収の12分の1の金額と厚生年金の合計額が50万円を超えると50万柄尾を超えた金額の半
額が減額される仕組みです。
この基準が50万円から62万円に引き上げられます。
ボーナスを含む年収の12分の1の賃金が45万円とします。その方が厚生年金を10万円受給
できる場合、合計額が55万円となります。5万円超えた額の半額の25,000円が年金から減
らされてしまいます。
法改正後は合計額が55万円となっても62万円に行かないので年金は満額支給されるように
なります。
■ 厚生年金保険の標準報酬月額の引上げ ──────────────────────
厚生年金の標準報酬月額の上限額は現在65万円ですが、65万円から75万円に3年間かけて
段階的に引き上げます。
2027年9月 68万円
2028年9月 71万円
2029年9月 75万円
新たな上限に該当する人や企業の保険料は増えますが、将来の年金額も増える(65万円
を超える給与などを受け取っている方は、実際の給与などに対する保険料の割合が低く、
収入に応じた年金を受け取ることができない状態となっている)と報じられています。
■ 大学生アルバイトの扶養の年収基準の見直し ───────────────────
社会保険の被扶養者になれる年収は130万円です。
大学生アルバイト(19歳から23歳まで)については、この基準が150万円となります。