皆様の会社には退職金制度がありますか?どんな思いで作られた制度ですか?
まさか、かなり前に作って見直しをしていないということはありませんよね・・・
■ 重要ポイント
退職金は本来、恩恵的給付。
何のために支払うのか、目的を明確にして、無理のない退職金制度を作るべきです。
■ 大卒モデルで2,615万円!!
大卒の男性の定年モデル退職金は2,615万円であることが、中央労働委員会の「平成21年賃金事情等総合調査」で発表されました。(平成22年4月9日発表)
対象企業は、資本金5億円以上、従業員1,000人以上の大手企業です。
この「モデル退職金」金額は「学校を卒業後直ちに入社し、その後標準的に昇進した者で、退職年金制度を併用している企業においては、退職年金原価額が含まれている」数字です。
大手企業ならの水準、数字だなあ、と思わざるを得ません。
■ 退職金制度を創設したい
「わが社も創業10数年、退職金制度をつくり
たいのですが・・・」
大変嬉しい、ありがたいご相談ですが、退職金は数十年後に影響を及ぼすしくみ。簡単にハイ、このような立派な制度を早くつくりましょうよ、と推し進めるわけには行きません。退職金制度を作る意味を明らかにして、
後から「しまった!」ということの無いようにしなければなりません。
■ 退職金は何のため
そもそも退職金は「支給しなければならないもの」ではありません。あくまでも恩恵的に支給するものです。
けれども、いったん「退職金を支給します」と約束してしまったら、退職金は「賃金=支払わなければならないもの」になります。従業員が退職というときになって、「お金がないので払えません」では済みません。
退職金は、今は見えない、将来の大きな負債なのです。
■ コストパフォーマンスを考える
「従業員が長期に安心して働くため、退職の時にはそれなりの功労を退職金という形で伝えたい。退職金で退職後の生活の援助をしたい。」
たとえばこのように、退職金制度の目的を明確にするのがスタートです。
500万円の設備投資をすれば、見合った利益が将来見込めるでしょう。
500 万円の退職金制度を作っても、退職金を受けとり退職した従業員が、退職後、会社に貢献することはありません。
制度を作る前に、退職金のこんな側面を考えておく必要があります。
■ 貢献度を反映させるか?
次に在職中の貢献度を反映させるのか、考える必要があります。
同期に同じ年齢で入社したAさんとBさん。
Aさんは役員候補にも挙がる、課長部長昇進し、会社に貢献のあった人。Bさんはこつこつと現場のリーダーを長年勤めた人。
二人の退職金は同じであるべきでしょうか。Aさんの退職金がBさんより多くて当たり前でしょうか?
毎年の年収は当然Aさんが多いのですから、退職金くらい勤続年数だけで決定して差はつけないという考え方もあります。
■ 長期にわたる管理ができるか?
やはり「貢献度は反映させたい」とポイント制退職金制度が多くの企業で支持されているようです。
ポイント制退職金制度とは、「在職中の貢献度を、毎年評価ポイントで数値化し、退職時にその累計の付与ポイントに単価をかけて退職金支給額を決定する」というものです。
退職金制度は数十年の長きにわたる制度、制度がよくわかる人事部長が急に退職したなどの場合、管理できなくなったでは困ります。ポイント制導入には長期の管理がきちんとできるのかを考える必要があります。
■ リスクは会社?本人?
「会社は毎年退職金として一定額のお金を拠出しましょう、ただし、運用は各人でやってください」これが確定拠出年金(年金という名前の退職金制度)です。会社には将来、積み立て不足が生じてしまうリスクがありません。が、確定拠出年金制度は60歳到達前の給付というしくみが基本的にありません。これは大きなデメリットです。
一方、「退職時にお約束したお金を支払います。」これが確定給付退職金です。
従業員は退職時にあらかじめ決められたお金をもらえるので、安心感があります。会社は金利変動があったときにはリスクを負うことになります。
■ 支給額のイメージ
年 | 金利 | 給付額 |
---|---|---|
昭和61年 | 6.6% | 2.255万円 |
平成3年 | 5.5% | 1.703万円 |
平成8年 | 4.5% | 1.315万円 |
平成11年 | 3.0% | 919万円 |
平成14年~ | 1.0% | 591万円 |
「大企業の大卒男子モデルの2,600万円は雲の上の数字として、うちの会社はどの程度の水準にするのがよいのか?」
中小企業退職金共済制度の金利と給付額の数字が、参考になります。
金利がつかない時代、1,000万円以上の退職金を約束するリスクは大きいと考えます。
■ 退職事由と退職金
退職の事由によって甲乙2種類の退職金額を設定することは広く行われています。
同じ退職でも定年などの退職(甲とする)と、自己都合退職(乙とする)では退職金額を変えようという制度です。当然、自己都合は減額された退職金です。
気をつけたいのは就業規則の解雇事由がどちらに当てはまるかということが、明確になっているかどうかです。
解雇には、事業の縮小などやむを得ない業務の都合による会社に原因がある場合と、「会社が期待した能力や協調性に欠ける、指導しても改善の見込みがない」などの従業員本人に原因がある場合とがあります。
会社の業務都合による解雇は「甲」、本人に原因がある解雇は「乙」、と明確に区分しておくべきでしょう。
■【勤続年数+役職加算】の退職金がお勧め
ポイント管理が難しいという会社には、勤続年数による定額の退職金と、役職者加算がある退職金制度がお勧めです。係長1年でプラス2万円、課長1年でプラス3万円といった加算です。従業員に長期に働いてもらいたい会社なら、支払いに無理のない水準の、わかりやすい退職金制度が、やはり必要なのではないでしょうか。
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◎人事労務の素朴な疑問・・・ 労基法はいつできた?
業務日誌より
「6時間20分の育児短時間勤務をどうする?」
「6月30日から育児介護休業法が変わります、注意点は・・・」と話をしていたところ、
「短時間勤務とはどのくらいの短時間をいうのでしょう?6時間20分はダメ?」と質問を受けた。
法改正後、事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けることが義務付けられる。その内容は1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければならない。原則として6時間は5時間45分から6時間までを許容する趣旨で、6時間20分が認められるというものではないという取り扱いだ。
労働者が6時間20分の短時間勤務を受け入れ、相応の賃金をもらっていれば、まったく問題となる事柄ではないのではないだろうか。労働時間が短くなれば、賃金も少なくなる。育児短時間勤務については育児休業のような所得保障もない。短時間勤務などは、行政が細部まで定めなくとも、労使の取り決めで自由に決めることにしても何ら不都合はないのではないだろうか。