パートタイマーの雇用にはいろいろ注意することがあります。
「夫の扶養の範囲で働きたい」というパートにも労働法は適用されます。パート雇用、そのポイントを抑えておきましょう。
■重要ポイント
パートタイマーも労働者としての権利があります。社会保険の加入要件の取り扱いもふまえ、パートタイマーと雇用トラブルのないようにしましょう。
■パートタイマーとは
パートタイム労働法と呼ばれている法律があります。正しくは、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律です。
この法律で対象としているのは「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者に比し短い労働者」です。
平成18年、この対象であるパートタイマーは1,205万人でした。
平成20年1,407万人に増加し、働く人の4分の1を占め、その7割が女性です。
■パートと呼ばれているからパート!?
「時給で給料が支払われている人をわが社ではパートと呼んでいる」
もちろん、けっこうです。
実は国の統計でも何をもってパートとするか、基準はいろいろです。
総務省調査の統計(「就業構造基本調査」など)では、「事業所においてパートと呼ばれている労働者」(呼称パート)と定義しています。
厚生労働省の統計(「毎月勤労統計調査」など)では、「1日の所定労働時間が一般労働者より短い者あるいは1日の所定労働時間が同じであっても1週の所定労働日数が一般労働者より少ない者」です。
また、総務省の調査では「週の就業時間が35時間未満の者」をパートとしています。
■パートタイマーと法律
「労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で賃金を支払われる者をいう」 労働基準法は労働者をこのように規定しています。
パートをどのように定義しようとも、労働者であることには間違いありません。パートタイマーにも労働基準法、安全衛生法、最低賃金法などが適用されます。
■パートと労働条件の明示
入社した社員に、「契約期間」「仕事をする場所と仕事の内容」「始業・終業の時刻や残業の有無、休日・休暇」「賃金」などについて書面を交付するよう労働基準法は定めています。
パートタイム労働法では<FONTCOLOR=”RED”>これらに加えて「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」
の明示が義務化されています。
■パートと時間外労働
1週40時間、1日8時間を超えた時間外労働には割増賃金の支払いが必要です。
1日5時間のパートタイマーが8時間まで3時間残業したとしても「法内残業」なので25%の割増賃金を払う必要はありません。
■パートと休憩時間
休憩は、労働時間が6時間を超える場合に少なくとも45分、8時間を超える場合に少なくとも1時間の休憩を途中に与えなければなりません。
5時間半の勤務であれば休憩を与えなくてもかまいませんが、1時間の残業を命じると実労働時間が6時間半になりますから、途中休憩を与えなければ法違反となってしまいます。注意が必要です。
■パートと年次有給休暇
入社して6カ月たつと年次有給休暇の権利が生じます。
週5日以上又は週所定労働時間が30時間以上であれば、一般の従業員と同じ日数の有給休暇が付与されます。週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満のパートタイマーには、労働日数に応じた年次有給休暇が付与されます。(週4日の所定労働日数であれば、半年で7日、1年半で8日の年休が付与されます) また、60歳定年後継続雇用され、パートタイマーとして新たな契約を結んだ場合、定年前の年次有給休暇の権利はなくならず、継続します。
■パートと就業規則
10人以上の労働者がいれば就業規則を作成しなければなりませんが、この「労働者」にパートタイマーは含まれます。
試用期間の有無、慶弔休暇の有無、休職期間の有無(あるいは長さの違い)、懲戒、退職金の有無などパートタイマーを正社員と同じように処遇することができないことは多くあります。
パートタイマー用の就業規則を正社員用の規則とは別に作成しておくべきです。
■パートと育児休業・介護休業
パートタイマーからの申し出も断ることはできません(入社して1年たっていない場合で、労使協定を結んで除外することをうたってあるなどの特別な場合を除いては)。
1年契約などの場合でも、更新を重ねていれば申し出を受けなければならないとお考えください。
■パートと社会保険
女性パートタイマーの55%が年収100万未満、90%が年収200万円未満です。 サラリーマンか公務員の夫がいて、年収130万円未満であれば、健康保険の夫の被扶養者となり、国民年金の第3号被保険者となることができます。女性パートタイマーのうち47%が第3号被保険者です。
パートタイマーが社会保険に加入する基準は、
- 勤務時間が一般社員のおおむね4分の3以上、
- 勤務日数が一般社員のおおむね4分の3以上
あるかどうかだけです(それぞれで上回れば、年収と関係なく加入となります)。
社会保険加入を希望するかどうかは、パートを採用するときにしっかりと確認すべき事項です。
時給850円、週30時間、1カ月120時間勤務だと月収102千円で社会保険加入しなければなりません。社会保険料は約14千円かかります。(本人も会社も同額負担) 時給930円、週27.5時間(5.5時間で5日)1カ月110時間働くとほぼ同じ102千円で社会保険は加入せず、夫の被扶養者となります。(本人も会社も社会保険の負担なし。)
■パートと雇用保険
雇用保険は
- 31日以上の雇用の見込みがあり、
- 週の所定労働時間が20時間以上
あれば加入です(平成22年4月からそれまでの6カ月以上雇用の見込みから31日以上と要件が変わっています。加入漏れはありませんか)。
その他の記事(中身はPDFでご覧くだい)
◎ ト ピ ッ ク ス
労働審判、4年で4倍の増加、 昨年3468件、過去最高に 7月29日 日本経済新聞
◎ シリーズ 年 金
~ 戦前の厚生年金 ~
昔勤務していた場所の年金事務所に問い合わせ、記録が確認されると再計算され、場合によっては増額された年金が支給されます。
◎ 人事労務の素朴な疑問
中学生を雇っていい?
学年齢が15歳以下の者の就労は原則として禁止されていますが、修学等の妨げとならない軽易な労働については、行政官庁の許可を得て従事させることができます。(労基法56条2項)
◆改正 育児介護休業規程 説明会◆ 業務日誌 7月○日
「改正した育児介護休業規程について従業員に話をしてもらえませんか?」
引き受けたものの、チョット困ってしまった。改正法(6月30日から)はそれほど面白い内容ではないし、育児や介護とのことにまったく興味のない従業員もいるはず・・・。
説明会に当たって、育児介護休業法の歴史を調べてみた。昭和47年の勤労婦人福祉法というのが今の法律の元になっているらしいことがわかった。勤労婦人、福祉なるほどねえ。男女雇用機会均等法ができ、勤労婦人という言葉も時代を感じる言葉であるけれど、はじめはそういう位置づけだったのだ。
「女性だけが、6時間の育児短時間勤務のときに30分ずつ2回の育児時間も請求できるとはどういうこと?」「週に4日勤務のような介護のための勤務の申出はできるのか?」
など質問が多く出て、私自身も勉強となった。普段風通しのよい職場なので質問も多く出るのだ。