同日得喪は可能

 社会保険には同日得喪という特別な手続きがあります。定年退職者にはお得な制度でした。
4月からの無年金世代に同日得喪は???

  総務担当者の方はぜひお読みください!

 重要ポイント

同日得喪の要件が改正され、平成25年4月1日以降も定年退職者に有利な社会保険の取り扱いは引き続き可能となります(改正の通達は1月25日に出された)。

 賃金が下がっても社会保険料は高いままが原則!

社会保険料は、少しくらい賃金が上がったり下がったりしても変動しません。源泉税は毎月金額の変動に応じて変わりますが、社会保険はそうではありません。
変動があった月から3カ月間の平均をとり、2等級以上の差があると、4カ月目から実際の賃金に相応した新しい社会保険料に変わります。随時改定といいます。
賃金が上がったときは、3カ月お得な感じですが、賃金が大きく下がったときは3カ月間、高い賃金のままの社会保険料の負担があるのですから、大きな痛手です。

 同日得喪とは60歳定年時の特別の計らい

60歳定年でそれ以降は賃金を下げる企業が多いので、社会保険料が高いままではかわいそう?だと、特別に社会保険料をいきなり賃金相応の低い金額にするという特例があります。
社会保険の資格を喪失して同じ日にまた取得するという手続きをとり、社会保険料が下がった賃金に見合う低い保険料額になるのです。
ある会社を退職してすぐに次の日、間をおかずに、別の会社に就職したと同じ取り扱いになり、保険料が変わるのです。
社会保険の喪失と取得を同じ日にするので、同日得喪と呼ばれています。
同日得喪には随時改定のような2等級以上の変動がなければならないという要件もありません。

 同日得喪は年金を受けることが要件だったが・・・

同日得喪の要件は以下のとおりでした。
(1)特別支給の老齢厚生年金の受給権者であること
(2)定年または定年以外の退職(有期労働契約の更新を含む)後再雇用されたこと
つまり、年金をもらえる権利のある人が、定年などでいったん雇用契約が切れ、再雇用されたり、定年以外の退職後継続雇用されるというときに、同日得喪が出来ました。
この手続きは、退職したことが分かる書類と新たな雇用契約書などを添付して行います。
同日得喪により保険料負担が少なくなると同時に、在職老齢年金の支給停止額が少なくなり、年金が増えるという仕組みでした。
平成25年1月25日通達(保保発0125第1号)で、(1)の要件、特別支給の老齢年金の受給権者であることが、単に、60歳以上の者に改正され、この取り扱いが平成25年4月1日から実施されることになりました。

 同日得喪が複数回の可能性

「定年は60歳に達した日とする。定年後の継続雇用を希望する者は、1年ごとの有期の雇用契約を結び、65歳まで雇用する」
このような会社が増え、今後ますます該当者が増えることが予想されます。
今まで、60歳になって労働条件を変更するときに、どのような変更内容とするかに、大きな関心がありました。
再雇用時の従業員の能力・担当する職務、勤務形態、賃金、労働時間など総合的に判断して雇用契約内容を決めることになりますが、その内容は1年間に限るもので、更新された61歳時、62歳時も同じ内容であるとは限りません。
契約内容に、更新時に同じ労働条件が約束されるかのような期待を持たせることを書かないようにすべきです。
同日得喪は、従来、「定年退職の場合に限る」とされていましたが、平成22年の改正により、要件が緩和されています。契約更新の再雇用に伴い賃金が下がる場合もそのつど同日得喪の対象になります。
再雇用された月から再雇用後の賃金に応じた標準報酬月額に決定できるのです。
同日得喪の回数に制限はありませんから、1年ごとの有期契約の見直しで複数回 同日得喪ということもありえます。

 継続雇用の現状

働く意思のある高齢者は急速に増えつつあります。
公的年金の受給額を見て、満足したという人を見たことがありません。(15年以上前だったらいたでしょうか?)
現在60歳以上の労働者が雇用者全体の2割近くに達しています。企業は平均すると2割が60歳以上という状況になるのです。

無年金時代の賃金の課題

従来、60歳以降の賃金については年金が出るから、雇用保険からも給付があるからということを前提に減額をしていた企業が多くありました。
統計では再雇用者がいる事業所のうち、定年退職時との賃金の比較で、
同程度・・・21.7%
8~9割程度・・・23.6%
6~7割程度・・・34.8%
4~5割程度・・・16.1%
3割程度・・・・・2.5%
となっていま(厚生労働省、高年齢者実態調査から)。
7割程度以下の数字を足すと50%を超えます。 在職老齢年金の支給を前提に「手取り額ではそこそこの金額になるから」とダウンした賃金で再雇用契約を結んでいた企業も多かったと思われます。
目前の新年度はとりあえず1年間無年金の世代ですが、いずれ65歳まで無年金の世代がくるのです。
長期的な視点でシニアの雇用をどうするか、取り組まなければならない難問です。

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