そこそこ働いたら年次有給休暇がもらえる、皆さんご存知のことです。 有給の付与を、毎年4月にしている会社では、直前の3月に入社したばかりの人にも有給を付与しなければならないのでしょうか。
育児休業を取得したときの有給はどうなるのでしょう。意外と知らない年次有給休暇について考えて見ましょう。
重要ポイント
年次有給休暇は労働者の大事な権利。産休・育児休業は出勤日扱いとなる。一斉付与は会社に不利となりやすいので、注意が必要。
年次有給休暇とは
年次有給休暇とは働いている人全て(労働者)に与えられる、所定休日のほかの一定日数の有給の休暇のことです。心身の疲労の回復、ゆとりある生活ができるようにという趣旨の休暇です。 昭和22年の労働基準法制定当時、年次有給休暇は、1年以上継続勤務した場合で6日でした。法改正を経て、現在は、6カ月間継続勤務した場合に、10日の有給休暇を付与することが使用者に義務付けられています。
年次有給休暇は労働者の権利!?
年次有給休暇は、1年間(初年度は6カ月)継続勤務し、所定労働日の8割以上の勤務をした場合、法律上当然に所定日数の年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負うというもので、労働者の請求を待たずに、生じる権利だとされています。 「事業の正常な運営を妨げる場合」には、その時季を変更することができますが、使用者にはできる限り労働者が指定した時季に休暇を与えるよう配慮することが求められています。
原則は1日単位だが
年次有給休暇の単位は原則1日です。ただし、半日単位の付与も認められています。 さらに、平成20年改正の労基法(平成22年4月1日施行)では、労使協定を結べば、時間単位での年次有給休暇の付与が認められるようになっています。
早退で1時間しか勤務しない日は年休の発生要件の出勤か
年次有給休暇の要件として、8割以上の勤務がありますが、1時間しか働かないような日を年休発生の労働日に含めなければならないのでしょうか。 労働日については暦日単位で取り扱われるものとされています。遅刻や早退でほとんど仕事をしなかったような日も、出勤した日として取り扱うことになります。
育児休業は出勤扱い
産前産後休業、育児介護休業は出勤日とみなされます。8割以上の計算にあたっては、労働日にも出勤日にも含まれます。業務上の災害による休業も出勤日とみなされます。 年次有給休暇取得日も出勤したものとして取り扱います。
通勤災害で休業のとき
業務災害による休業は出勤日とみなさなければなりませんが、通勤災害について法律は言及していません。業務上災害の場合は、事業主に被災労働者に対する補償が求められているのに対し、通勤途上の災害については求められていません。(労災保険は通勤災害にも適用されます)同様に、通勤災害の休業について年次有給休暇の出勤率の算定に際し、出勤日から除外しても構いません。
入社時3日、入社6ヵ月後に7日の付与はできる?
入社したばかりの社員に有給の休暇がないのはかわいそうだし、付与される半年後にその分減らして付与すれば、労使双方にとって都合がよいのではないか・・・ 入社のときに3日の年次有給休暇を付与し、半年後に7日付与するという規定の就業規則を見たことがあります。 この規定自体は問題ありません。しかし、半年たってからの1年間に10日付与しなければならないのですから、これを上回る規定でなければなりません。入社時の付与から1年後には、6カ月繰り上げて11日の年休を付与する必要があります。
4月に一斉付与のときは?
社員一人ずつ年休の更新時期が違うのは面倒なので・・・という理由で、年次有給休暇の基準日を4月1日としている会社は少なくないようです。 この場合、法律の付与数を上回らなければなりませんので、十分注意が必要です。
【 規定例 】
年次有給休暇は、4月1日を基準日とし、計算期間の1年単位は当年4月1日より翌年3月31日まででとして、各従業員の入社時期に応じ、以下とする。
(1)4月1日以降9月30日までに入社した従業員
社後最初に到来する10月1日を勤続6カ月、翌年4月1日に勤続1年6カ月 とみなし、以下のように付与する。
6カ月(最初の10月1日) ・・・付与日数10
1年6カ月(翌年4月1日) ・・・付与日数11
2年6カ月(翌々年4月1日)・・付与日数12
(以下省略)
(2)10月1日以降3月31日までに入社した従業員
入社後最初に到来する4月1日に勤続6カ月とみなし、以降勤続年数に応 じて付与する。
6カ月(最初の4月1日) ・・・付与日数10
1年6カ月(翌年4月1日)・・・付与日数11
2年6カ月(翌々年4月1日)・・付与日数12
(以下省略)
一斉付与の問題点
長期に勤続する従業員ばかりの会社には4月1日一斉付与は管理しやすいという利点がありますが、数年で退社する従業員の多い会社では、入社したばかりで10日という数の有給の休暇が付与されてしまう問題があり、お勧めできません。 9月30日入社の場合を考えて見ましょう。翌日に6カ月働いていたものとみなされて10日付与され、入社して6カ月と1日の4月1日にはまた11日の付与です。入社半年ちょっとで合計21日も年休が付与されてしまいます。(年次有給休暇は翌年度に限り繰越を認めなければなりません) 退職のときになって有給休暇を請求され、先付けの退職願を出されることも少なくないことを考えると、一斉付与は勤続年数の短い従業員の多い会社には不利であることを知っておくべきでしょう。
その他の記事
ト ピ ッ ク ス 死働災害 20人から30人に増加
平成25年、新潟労働局発表
新潟労働局は、平成25年の新潟県内の労働災害発生状況を発表した。
それによると、死亡災害は前年の20人から10人増加の30人で、平成20年以降最悪の数字となった。
業種別では建設業13人、製造業9人、第3次産業6人、運輸交通業2人。 労働災害防止対策を重点課題として以下のように取り組むという。(1)建設業においては、足場からの墜落防止措置の徹底、車両系建設機械にかかる災害防止対策の推進。
(2)製造業においては「はさまれ・巻き込まれ」災害防止対策、クレーン作業による荷の「飛来・落下」等機械災害の防止対策の推進。
(3)貨物運送業の、交通事故防止、荷役作業の災害防止対策の推進。
(4)小売業、福祉施設、飲食店の転倒防止、腰痛対策、交通事故防止対策の推進。
シリーズ労働法の言葉 ~ 産前産後休業 ~
6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性が休業を請求した場合には、その者を就業させてはならない。
産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経た女性が請求した場合には、医師が支障がないと、認めた業務に就業させてもよい。 労基法第65条
= 強制休業は産後6週間だけです。=
【スタッフからひとこと】 産休・育休の制度が変わりました!
4月から産前産後休業期間中の社会保険料免除が始まりました。この申し出は、産前産後休業をしている期間に行います。
また、4月から育児休業給付が休業開始後6カ月間は、休業開始前の賃金に対して、67%(これまでは50%)に引き上げられます。6カ月限定の意味は、男性の育児休業取得推進という目的があるようです。
【 新入社員に研修をしました 】 4月□日
高校を卒業して入社したばかりの新入社員を含めた若い社員に、会社のルールについて話しをしてほしいとのご依頼を受けました。
「働き始めた君たちへ~働くことと法律、守るべきこと」というタイトルにして、以下のような内容の話をしました。
「会社に勤めて働くと、給料日には給料がもらえるが、それは、毎月一定の日に給料を支払わなければならないという法律に基づいている。来月まとめて払うからといわれることはなく、生活が安定する。業務中にケガをすることがあれば、労災保険で保護される。一方会社には服務規律があり、一人ひとりが守らないと、組織が動かない。給料からは社会保険料、税金が引かれるが、扶養される側から、経済的に独立して、社会を支える側になったということ。社会に価値を与える側になったことを自覚し、誇りを持って働こう。」
素直で、元気いっぱいの新入社員が、大きく成長していくことを期待したい。