労災事故が起きたら?

 「調理中に油がはねてやけどをした」
 家の台所でもこのようなことは、起こりますが、レストランの厨房で調理師がやけどを負うと、【業務上】の事故で【労災】となります。
  労災事故が起きたとき、会社はどのように対応すればよいのでしょう。
 労災とそうでないときと何が違うのでしょう。

重要ポイント

 業務上のけがや病気について労働者は、労災保険の給付を受けることができる。
 治療費、薬代の負担はなく、コルセット代金や診断書料も立替えて払うと戻ってくる。
 4日以上の休業の業務上災害の場合、会社は、「労働者死傷病報告」を遅滞なく労基署に出す必要がある。

まずは現場の上司に報告を

 業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡のことをいいます。
 業務上の災害について、労働者は労災保険の適用を受け、健康保険の給付より手厚い給付を受けることができます。
 業務上と認められるためには、業務と傷病との間に一定の因果関係があること(業務起因性)と雇われていることが原因となって起きた災害であること(業務遂行性)の両方が認められる必要があります。
 調理師の業務中のやけどは間違いなく業務上です。
 小さなけがでもまずは現場の上司に報告することを会社のルールとしておくことをお勧めします。
 病院に行くほどでもないからと報告もせず、数日たってからよくならないので病院を受診ということもあります。日にちがたつと本当に業務上?ということにもなりかねません。
 業務上災害の請求を出す場合、災害発生の事実を確認した者の名前を書く必要もあります。

労災で病院に行くとき

 業務上と判断され、病院に行くことになった場合、会社は「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式第5号)に災害の原因や発生状況を記載し、会社の名前や事業所の住所を書いて押印し、被災した労働者に渡します。
 労働者はこの5号用紙を、治療を受ける病院に提出することで、タダで治療を受けたり、投薬を受けたりすることができます。
 病院は労災保険に請求するという仕組みです。
 健康保険被保険者証は使いません。

労災指定病院でない病院に行くとき

 労災指定病院でない場合は、治療費を現金で支払い、労基署に「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式7号)を提出します。あとで本人指定の口座にお金が振り込まれます。
 コルセットを医師の指示で購入した場合の費用も請求できます。医師の診断書と領収書を添付して請求します。
 労基署から医師の診断書の提出を求められることがありますが、有料の診断書料も領収書を添えて請求できます。
 様式7号は5種類あります。病院で治療を受けたとき、薬局から薬剤の支給を受けたとき、柔道整復師の治療を受けたとき、あん摩マッサージ指圧師等から施術を受けたとき、訪問介護を受けたときで異なる様式になっています。

転院するとき

 病状がよくなってきて自宅近くの病院に移るとき、届出をすれば、同じように労災扱いになります。
 「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」(様式6号)を新たに受診する病院に提出します。

通院のタクシー代

 業務で骨折をして通院が必要だがバスに乗ることができない、近くに適切な医療機関がないなどのときには、タクシーの領収書を添えて請求することで、タクシー代が戻ってくることがあります。

労働者死傷病報告の提出を忘れずに

 業務上のけがで、4日以上会社を休まなければならない場合、会社は監督署に「労働者死傷病報告」(様式第23号)を提出しなければなりません。
 これは労働安全衛生法で提出が義務づけられているもので、災害発生後「遅滞なく」提出するよう定められています。災害発生から「労働者死傷病報告」の提出まで1カ月以上経過している場合は、提出が遅れた理由について「報告遅延理由書」が求められます。
 「労働者死傷病報告」には、被災労働者の経験年数を書き、災害発生時の状況を図示することになっています。
 死傷病報告を提出した後、内容に安全衛生法違反が疑われるようなときには、労基署の立入調査が行われることがあります。

休業があるとき

 労災事故で、休業(仕事を休んだ)した場合、「休業補償給付支給申請書」(様式第8号)を労基署に提出することで、労働者は、休業の所得が補てんされます。
 休業3日までは事業主が直接補償し、4日目から労災保険の休業補償給付が支給されます。
 休業補償は、平均賃金を元に給付基礎日額が算定され、その60%が休業の1日につき支給されます。休業給付には、さらに20%の特別支給金が支払われるので、給付基礎日額の80%が支給されます。この休業でもらえるお金は非課税です。

休業補償給付は退職してももらえる

 同じ傷病で休業が継続していれば休業日について期間の制限なく、【治癒】するまで休業給付金は支給されます。軽快して一旦就業し、後日また休業するようなときも休業日について支給されます。
 療養が長期化し、1年6カ月以上になり、かつ傷病等級に該当する障害の場合は、傷病補償年金が支給されることになり、休業補償給付は支給されません。
 休業補償給付は、給付を受けている労働者が退職した場合でも、要件に該当していれば引き続き支給されます。療養補償給付もうけられます。
 労基法第83条で、「補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。」と労働者を保護しているからです。

労働者の不注意、会社に過失がなくても

 会社がいくら安全対策をとっていても、労働者の不注意で業務上の事故は起こります。
 労災保険の給付は労働者本人の過失が原因であっても受けられます。
 労働災害では、会社に過失があるかどうかに関係なく、当然に責任を負うという、無過失責任主義という考え方がとられています。

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