65歳からの雇用あれこれ

 今月から社会保険の加入要件が短時間労働者にも拡大されます。(対象は501人以上の社会保険の被保険者がいる事業所)
 来年1月になると雇用保険も適用拡大が行われます。
 現在は雇用保険に加入できない65歳以上の労働者も雇用保険に加入することになります。その具体的な取り扱いが発表になりました。
 また、高齢者雇用についての助成金も拡充される見込みです。

重要ポイント

 65歳までは雇用されて働き65歳からは年金で生活するよう、65歳を境に違う社会保険の仕組みができています。その仕組みが雇用保険の制度から変わろうとしています。

65歳以上の労働者の雇用保険の加入

 現在、65歳以上の人が新たに就職しても雇用保険に入ることはできません。
 65歳前から引き続き働き続けている65歳超の人は、「高年齢継続被保険者」となっていて雇用保険に加入しています。
 平成29年1月1日以降、65歳以上の労働者は「高年齢被保険者」となり、雇用保険に加入することになります。
 新しく「高年齢被保険者」という区分ができるのです。

ケースその1

 平成29年1月1日以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合は、雇用保険の高年齢被保険者となりますから、会社は、雇用保険の加入手続きをとります。

ケースその2

 平成28年12月末までに65歳以上の労働者を雇用し平成29年1月1日以降も継続して雇用している場合、平成29年1月1日より高年齢被保険者となります。平成29年3月31日までに、資格取得の手続きをします。
 雇用保険の適用要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあることです。

ケースその3

 平成28年12月末日時点で高年齢継続被保険者(65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されている被保険者)については、自動的に高年齢被保険者となりますので、届け出は要りません。

雇用保険に加入するメリット

 会社は65歳以上の労働者を雇用保険に加入させても、雇用保険料は本人、会社とも当面免除となります。
 保険料の負担なしで、高年齢被保険者は、退職した場合、高年齢求職者給付金(一時金)が受給できます。
 就職する意思があるが、仕事が見つからない場合に、雇用保険加入期間が6カ月以上1年未満の場合、基本手当日額の30日分が支給されます。1年以上の加入期間がある場合は基本手当日額の50日分が支給されます。
 この高年齢求職者給付金の受給資格者は、就業促進手当、教育訓練給付金なども支給の対象となります。

具体的試算例

 仮に65歳過ぎて就職、雇用保険に加入し、月額15万円で6カ月働いて退職したとします。
 この場合、基本手当日額が3,910円となり、30日分では117,000円となります。
 1年以上働けば50日分ですから、195,500円です。これが保険料を負担しないでもらえる給付金です。(お得な感じがします)

保険料の免除

 65歳以上の人を雇用しても今までは雇用保険の資格取得、喪失の手続きは不要でしたが、これからは年齢にかかわらず必要となります。ただし、保険料の徴収は平成31年度まで免除となります。
 平成32年4月1日以降に満64歳以上で新たに雇用される人については、雇用保険料は免除されなくなります。

65歳超雇用を制度化して助成金

 10月に補正予算が成立した後に公布・施行予定の助成金が発表されました。
 65歳超雇用推進助成金が創設されることになっています。
 65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年年齢の引上げを行う企業に対する支援を拡充するための助成金です。 65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施した事業主に対して、以下の助成額を助成するというものです。
(1)65歳への定年引上げを実施した事業主・・・100万円
(2)66歳以上への定年引上げ又は定年の定めの廃止を実施した事業主・・・120万円
(3)希望者全員を66~69歳の年齢まで継続雇用する制度を導入した事業主・・・60万円
(4)希望者全員を70歳以上の年齢まで継続雇用する制度を導入した事業主・・・80万円

定年を65歳にすべきか

 多くの会社では60歳定年を定めて、希望者は1年ごとの更新制により65歳まで継続雇用することにしていると思います。
 雇用保険法の改正や、助成金が創設されても、65歳超の人を雇用しなければならないわけではありませんが、国の政策が65歳超の労働者雇用を推進しようと積極的に動いていることは間違いがありません。
 団塊の世代が65歳以上になっており、ハローワークでは高年齢者の求職者数が増加していますから、意欲ある65歳超のかたの採用については検討されてよいと思います。

老齢年金と生活費

 65歳でもらえる年金額について、夫婦二人で221,000円と公表されています。(基礎年金65,000が2人分と厚生年金91,000円)
 年金だけでは生活することは難しい金額です。定年退職後の生活が不安だ、働けるうちは働きたいと多くの65歳以上の人は考えています。

労働契約法と65歳

 平成25年4月1日から改正労働契約法により、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、期間の定めのない労働契約に転換できるルールができました。
 60歳定年後、1年更新の継続雇用となって65歳となったとき、特別措置法の適用を受けることにより、定年後の有期雇用労働者に無期転換申込権は発生しません。
 所定の様式(第二種計画認定申請書)に雇用管理に関する措置の内容を記入して申請、労働局長の認定を受けると、継続雇用の高齢者は、定年後引き続いて雇用されている期間について無期転換申込権を行使できなくなります。
 無期契約にならなくても、必要により65歳で1年更新の契約、66歳で1年更新の契約と有期労働契約を更新していくことは可能です。
 会社の規模に係わらず、60過ぎの継続雇用者がいらっしゃる会社では、平成30年3月までにこの特例を受けるための申請を出しておきましょう。

そ の 他 の 記 事

 ト ピ ッ ク ス  社会保険の適用拡大  大企業のパートに  平成28年10月1日から

 今月から被保険者数が501人以上の企業で働く週20時間以上勤務の短時間労働者が、社会保険に加入となります。これに伴い、厚生年金保険の標準報酬月額の下限が88千円となります。
 88千円の標準報酬月額で健康保険料(介護有)は5,002円、厚生年金は8,000円、計13,002円。
 同額を事業主も負担です。第3号被保険者であるパートには負担感が大きい改正です。
 今回は、パートタイマーの加入の基準が明確になります。
 今までは「1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常時雇用者のおおむね4分の3以上(この基準に該当しない場合であっても就業形態や勤務内容等から常用的使用関係にあると認められる場合は被保険者となる)」という昭和55年の内かんに根拠を置くものでした。
 新しく「1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上」と明確化されます。

 労務のことば     ~時間単位年休~ 

 時間単位の年休は、年5日の範囲内で、労使協定を結んで取得することができます。
 労使協定では以下について定めます。
①対象者の範囲
②時間単位年休として付与する年休日数
③1日分の年休に対応する時間数
④取得単位を1時間以外の時間とする場合はその時間数

 【スタッフからひとこと】  出産手当金賃金締日を待たずに申請できます!

 出産手当金申請は、傷病手当金申請と同様に賃金締日が来なければ申請できないと思われている方が多いのではないでしょうか。
 産後休業後に育休をとるのであれば、出産手当金は、事業主証明欄に「○日から○日まで育休をとるため賃金支払いありません。」
と記入すれば産後8週間たてば締日を待たずに申請できます。
 支給申請後お金が振り込まれるのは、約2週間後です。

 【 始末書をもらおう!】   業務日誌 9月○日

 「工場には喫煙場所を設けて、休憩時間に一斉に喫煙するルールだが、場所も時間も守らずに喫煙している従業員がいる」
 「安全靴を履いて作業する決まりなのに、うっかり履かないで作業をしたときに怪我をした者がいる」
 このような場合には、その場で、時間をおかずに始末書を書いてもらうことをお勧めしています。
 いつ、どこで、どのようなルール違反をしたのか。まずは事実を書いてもらいます。
 そのうえで、どうすれば良かったのか、何故守らなかったのか、会社に与えた影響、反省している気持を書いてもらい、2度と起こさないためにどうするかも具体的に書いてもらいます。
 よく、「何度注意しても行動を改めない」「喫煙場所の掲示、安全第一の掲示をしてあるのに・・・」とグチをお聞きしますが、始末書を書いてもらうことは改善に効果があると思います。
 上司がどのように改善指導したのかも記録しておくとよいでしょう。
 ルール違反や不安全な行動には厳しく反省を求める一方で、お客様からお礼を言われたような出来事はほかのスタッフの前で褒めたたえることも忘れないようにしたいものです。