確定拠出年金に加入しますか?

 2017年1月1日からほとんどすべての人が確定拠出年金に加入できるようになりました。
  どのような制度なのでしょうか。

重要ポイント

 個人型確定拠出年金の加入範囲が公務員や主婦にも広がったが、まずは制度のメリット・デメリットをしっかり押さえたいものだ。

確定拠出年金の制度概要

 iDeCo個人型確定拠出年金のホームページをみると「これまでの公的年金や確定給付年金は、国や企業などの責任においてその資金を運用してきましたが、確定拠出年金は自分の持分(年金資産)が明確で自己の責任において運用商品を選び運用する年金制度です。個人型確定拠出年金は、国民年金基金や既存の企業年金に加え、新たな選択肢として公的年金に上乗せされる制度です。老後の所得保障の一層の充実が可能になります。」と書かれています。
 国は積極的に個人型確定拠出年金の加入を促そうとしています。

確定拠出年金は老後資金の積立制度

 確定拠出年金は2001年10月に開始された制度です。アメリカの401kという制度を参考に作られたため、当時は「日本版401k」といわれました。
 これまでは、(1)自営業者などの国民年金の第1号被保険者、(2)企業型確定拠出年金がある会社の社員、(3)企業型確定拠出年金もほかの企業年金もない会社、の社員が個人型確定拠出年金の対象者でした。
 今回の改正で、(1)公務員、(2)会社員・公務員の配偶者を持つ国民年金の第3号被保険者(=主に主婦)、(3)企業型確定拠出年金が導入されていないがほかの企業年金はある会社の社員も新たに個人型確定拠出年金に加入できるようになりました。
 確定拠出年金には個人型と企業型があります。
 個人型は掛け金の全額を個人が負担します。企業型は原則会社が掛け金を負担しますが、社員個人が掛け金を上乗せすることもできます。(マッチング拠出という)
 個人型は自分で運営管理機関を選びその商品から運用します。企業型は企業が契約した運営管理機関の商品から社員が運用します。

確定拠出と確定給付

 企業年金には確定給付企業年金と確定拠出企業年金があります。
 確定給付企業年金は企業が給付額をあらかじめ定めているもので、掛け金(会社が負担)の運用実績にかかわらず、給付額が保証されています。年金と名前がついていますが、一時金で受け取ることも可能です。運用のリスクは企業が負います。
 確定拠出企業年金は掛け金(会社あるいは会社と社員が負担)を決めて、運用はひとりひとりに任せます。運用次第で同じ掛け金でも個人ごとに退職金の金額が変わるのが、特徴です。

確定拠出年金でできる節税

 確定拠出年金の最大のメリットは積み立てるお金(掛け金)に税金がかからないことです。
 個人型確定拠出年金に加入して自分で積み立てるお金を出す場合や、企業型確定拠出年金で自分の給与から積み立てるお金を上乗せするマッチング拠出を利用した場合は、積み立てた金額が「所得控除」となります。課税所得が少なくなるので、所得税や住民税が安くなります。
 第2のメリットは、運用中の利益にかかる税金も「非課税」になることです。運用期間中は運用益に課税されずに、複利で資産運用ができる仕組みです。

転職したら資産を持ち運ぶことができる

 確定給付企業年金などは、退職するとその企業年金から脱退しなければならなくなり、年金資産を考える上では不利です。確定拠出年金では転職した場合でも、自分の積立金を全額持ち運ぶことができます。
 60歳より前に転職・離職をした場合は、資産を持ち運ぶことができます。このポータビリティーがあることも確定拠出年金のメリットです。

積立金が把握できる

 確定給付年金の制度があっても、JAL(日本航空)が破たんした時は、給付額の減額がありました。厚生年金基金も、運用の失敗で、年金支給額が減額されたケースもありました。その点確定拠出年金は個人の年金資産額がはっきりしていて、企業の都合等に年金額が影響を受けません。
 確定拠出年金では、自分の年金資産の運用状況をリアルタイムで1円単位で把握することができます。

個人型確定拠出年金の加入者が転職した場合

 個人型確定拠出年金の加入者が企業型確定拠出年金制度のある企業に転職した場合は、個人型確定拠出年金で積み立てた資産を企業型確定拠出年金へ移す手続きをします。

企業型確定拠出年金の加入者が転職した場合

 企業型確定拠出年金の加入者の転職先が企業型確定拠出年金を実施していれば、転職先の制度へ、実施していない場合は個人型確定拠出年金へ資産を移す手続きが必要です。

退職後自営になったなどの場合

 企業型確定拠出年金の加入者が退職して自営業(国民年金第1号被保険者)になった場合は、個人型の確定拠出年金に資産を移し、引き続き加入者として拠出を続けることができます。

導入企業のメリット

 個人型の確定拠出年金の場合は、掛け金の分だけ課税所得が圧縮されて、所得税・住民税などの負担を軽くすることができますが、企業が確定拠出年金を導入すると、支払う社会保険料を計算する根拠になる報酬額を減額することができます。社会保険料が安くなります。

個人型確定拠出年金加入の注意点

 個人型確定拠出年金の掛け金は任意に設定できます(上限あり)が、公的年金に上乗せされる年金であり、国民年金に加入している人しか掛けられません。自営業者は年金の納付を忘れないようにしなければなりません。個人型確定拠出年金は、中途解約して払い戻しを受けることはできません。解約返戻金のような制度はありません。
 老齢給付は原則60歳からです。60歳以降に請求し受給します。
 また、各種の事務手数料がかかります。
 加入にあたっては口座を開設しなければなりませんが、金融機関等に口座開設手数料、口座管理手数料、投資信託の信託報酬、そのほか、国民年金基金連合会にも事務手数料がかかります。金融機関に支払う手数料は金融機関によって異なりますし、信託報酬も運用商品ごとに異なりますので、手数料を調べるサイトなどを利用して慎重に選ぶ必要があるようです。
 これからも法改正が予定されています。

そ の 他 の 記 事

 ト ピ ッ ク ス  違法時間外労働45%  平成29年1月25日 新潟労働局発表

 長時間労働のことが最近、毎日のようにニュースに取り上げられています。
 新潟労働局が、平成28年4月から9月までに長時間労働が疑われる216の事業所に対して実施した、監督指導の実施結果を公表しました。
 216のうち150の事業場(全体の69.4%)で労働基準法などの法令違反ありました。
 違法な時間外・休日労働があったもの 99事業場(45.8%)
 うち時間外・休日労働の実績が最も長い労働者:1カ月200時間を超えるもの19事業場(8.8%)
 賃金不払い残業があったのは19事業場
 うち時間外労働の最も長い労働者:1カ月80時間を超えるもの11事業場(57.9%)
などとなっています。
 法令違反となるのは、36協定無く時間外労働を行わせているもの、36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせているもの、賃金未払い残業、健康障害防止対策未実施の場合です。

 労務のことば ~年次有給休暇管理台帳~

 年次有給休暇は、労働者が請求した場合に付与するもので、請求がなければ付与する義務は使用者にありません。
 監督行政は、年次有給休暇の取得を推進しており、労働条件の調査があった場合には、「年次有給休暇管理台帳等を作成し労働者各人の有給休暇の取得状況を管理するとともに、残日数を労働者へ周知してください。」と指導されます。

 【スタッフからひとこと】  出産手当金と傷病手当金

 出産手当金と傷病手当金の両方が受給できる場合、両方受給できるのでしょうか?
 出産手当金と傷病手当金の目的は、生活費の保障です。なので、両方は受給できません。健康保険法では、出産手当金を優先的に支払うことに決めています。もし、傷病手当金が先に給付された場合は、その期間については出産手当金が給付されたとみなされ、出産手当金の額が調整されます。

【 呼吸器の病気で障害年金はもらえますか・・・ 】 業務日誌 1月○日

 「配偶者が呼吸器の疾患で入院している。良くなる見込みはないと医師に言われた。障害年金の請求はできるでしょうか。」
 呼吸器疾患の場合は、X線写真の状況、肺活量などの換気機能、動脈血ガス分析の数値など、客観的なデータが、障害年金の判定で重要になります。数値を見ると、障害年金2級に該当しそうな状態でした。
 医師の診断書(障害年金請求用の所定の書式がある)はすぐに書いてもらえたのですが、初診日の証明をとるのに時間がかかってしまいました。初診日が5年以上前だったこと、初診のときの医師が、障害年金の初診日についてよく知らなかったことが原因でした。
 病気のため仕事も辞め、医療費も高額で負担だが、一時期は余命宣告もされた状態を奇跡的に乗り越えて、現在入院治療を続けているといいます。まだ小学生の女児もいる方です。このような方にこそ必要とされている障害年金だと思い、手続きを急ぎました。
 年金請求書を出したところ、3か月程度審査に時間がかかる事、年金が決定されても、支払いにはさらに50日かかるということでした。一日も早く受給できるといいのですが。