最低賃金に注意!

★★最低賃金に注意★★

サービス業では入社後の研修時間を最低賃金としていることがあります。

また、「扶養の範囲で働きたい」というパートタイマーの要望を考慮して、最低
賃金を意識して時給額を決定している会社もあります。

最低賃金が急上昇するなか、最低賃金って何なのか考えてみたいと思います。

重要ポイント

この方法が定着し、毎年数%引き上げるようになったのは比較的最近のこと。

最低賃金に満たない賃金を定めた労働契約は無効となり、最低賃金額まで引き
上げられてしまいます。

最低賃金法は昭和34年から

最低賃金制度とは、国が労働契約の賃金の最低額を定めて、使用者にその順守
を強制する制度です。

最低賃金は最低賃金法に根拠を持ちます。

1947(昭和22)年に労働基準法ができましたが、最低賃金法の成立は1959(昭
和34)年です。

労働基準法では、「行政官庁が最低賃金審議会の調査及び意見に基づき一定の
事業または職業について最低賃金を定めることができる」と規定していました。
けれども最低賃金法の制定まで、最低賃金を定めることはありませんでした。

現在、労働基準法は「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところ
による」(第28条)と改正されています。

最低賃金の目的

最低賃金法第1条は、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障す
ることにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力
の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な
発展に寄与すること」が目的であるとしています。

2007(平成19)年の法改正で生活保護に係る施策との整合性に配慮することが
織り込まれました。

最低賃金が生活保護よりも低いということが問題視されるようになったのです。

平成20年代で最低賃金は大幅アップに

法改正を受けて、それまで昨年と同額とかアップしても数円だった最低賃金の
改定が、10円以上の単位で上がるようになりました。

2007(平成19)年度の地域別最低賃金は全国加重平均額で687円でしたが、
2017(平成29)年度では848円になっています。

最低賃金の決め方の変遷

制定当時の最低賃金の決め方には、業者間協定方式と審議会方式がありました。

1968(昭和43)年、業者間協定方式は廃止され、審議会方式で最低賃金が決定
されることに変更されました。

審議会方式によって地域別最低賃金と特定最低賃金が決まります。

地域別最低賃金は1976(昭和51)年に47都道府県のすべてに適用されるように
なりました。最低賃金の中心となっているのは地域別最低賃金です。

特定最低賃金は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使
が基幹的労働者を対象に、「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金
を定めることが必要と認める産業について設定されていて、全国で233件の最
低賃金が定められています。

最低賃金は日額で設定されていたこともある

「最低賃金額は、時間によって定める」(法第3条)ですが、2007(平成19)
改正前は「時間、日、週または月によって定める」と規定されていました。
パートタイマーの増加などの労働市場の変化を受けて時間ごとに定めるだけに
なりました。

審議会の構成

最低賃金法は厚生労働省に中央最低賃金審議会を、都道府県労働局に地方最低
賃金審議会を置くことを定めています。

最低賃金審議会は、労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を
代表する委員各同数をもって組織されます。

中央最低賃金審議会の委員会の報告は厚労省のホームページから閲覧できます。
今年の7月25日の報告によると、「生活保護水準と最低賃金との比較では、前
年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された」となっています。

4ランク

毎年夏に中央最低賃金審査会が、最低賃金引き上げの目安額を提示します。

全国の都道府県は賃金実勢や生計費格差などから4ランクに分けられ、中央審
査会がランクごとに引き上げの目安額を提示します。その後各地方最低賃金審
議会が目安額を参考にしつつ、都道府県労働局長に最低賃金額を答申して、最
低賃金が決定されます。

新潟県の場合、4ランクABCDのBで、今年の目安額は25円でしたが、26円の引き
上げ額となりました。

派遣労働者の最低賃金

派遣労働者の最低賃金は、派遣元ではなく派遣先の事業場に適用される最低賃
金が適用されます

最低賃金の効力

本来賃金額をどう決めるかは労使の自由な合意に委ねられています。
けれども最低賃金額に達しない賃金を定めた雇用契約はその部分について
無効となり、無効となった部分は最低賃金額まで引き上げられます。合意があ
ってもダメです。

最低賃金に達しない額で合意していても無効となるという、強い効力が最
低賃金法にはあります。

違反したときの罰金

地域別最低賃金については、違反した場合50万円以下の罰金が課せられます。

労働基準法と同様に最低賃金法の監督機関は労働基準監督署です。

労働者は違反があったときは監督機関に申告をすることができます。申告した
ことに対して使用者が解雇その他の不利益取り扱いをしてはならないことも法条
文に明記されています。(第34条)

最低賃金の課題

最低賃金法が罰則を伴う強行的な法律ということを考えると、家族を養う立場
の労働者と、配偶者の扶養の範囲で働きたい労働者に同一の最低賃金というの
は適切でしょうか。労働者の生活の安定(使えるお金を増やす)には、社会保
険料等の免除という方法もあります。

2007(平成19)年では最高額の東京が739円、最低額の沖縄等は618円と121円
の違いでしたが、2017(平成29)年度は東京958円、沖縄737円と221円の差に
なっています。都市圏とそうでない地域の差も広がっています。

今月から上がる最低賃金のチェックをお忘れなく!