★★ 休職に入る社員がいたら ★★
「2か月の療養が必要という医師の診断書を持ってきた従業員、どうすれ
ば?」
体調が悪く休むことが多くなっていた従業員が、診断書を郵送してきました。
どのように対応すればよいのでしょうか。
■ 重要ポイント ────────────────────────
休職に入る社員にはその間の社会保険料の負担、休職期間中に行うこと、休職
終了日等、あらかじめきちんと書面で通知しておくことが重要です。
■ 私傷病で休むことは雇用契約が守られないこと ─────────────
雇用契約は労務の提供を受けて賃金を払うという契約です。病気になって長期
に出勤できないときは、就業規則の休職規定により休職に入ってもらうことに
なります。
休職制度は、一定期間休むことを認め、職場復帰を待つ制度です。
休職については法律上の定めはありません。いつから休職に入るか、有給か無
給か、休職期間、復職のことなど会社が独自に定めるものです。
また、勤続1年未満の従業員や有期契約労働者について「休職制度は定めな
い」としている会社もあります。
■ 医師の診断書の意味 ────────────────────────
「そううつ状態のため2か月の療養を要する」という医師の診断書を従業員が
提出してきたからといって、会社はその通りに休ませなければならないわけで
はありません。
「休職願」により、書面で希望する休職開始日、終了予定日を書いてもらい、
参考資料として医師の診断書を添付してもらいましょう。
「休職願」には休職の理由(病名の他に体の状態なども)や休職中の連絡先を
書いてもらいましょう。休職中に本人と連絡が取れないことも考えられますか
ら、その時の緊急連絡先も書いてもらうのがよいと思います。
■ 休職に入るときに確認すべきこと ────────────────────
休職期間中は在籍していても無給となり、社会保険料の負担は続くことになり
ます。
社会保険料は会社の指定口座に指定日までに振り込んでもらう約束を交わしま
しょう。住民税についても普通徴収に切り替えて、会社経由では納付しないよ
うにする方がよいと思います。
傷病手当金が受けられるので、その説明(手続きや金額、振込の時期)もして
おくのがよいでしょう。
これらのことは「休職に関する確認書」等で書面に記載し、通知しておきまし
ょう。
■ 休職中の従業員との連絡 ────────────────────────
休職中の従業員には1カ月に1回程度連絡をもらい、療養の状況や職場復帰の見
込みを報告してもらうようにしましょう。
病気休職は療養に関する医師の指示に従い、健康回復のため療養に専念する期
間であることを伝えておきましょう。
■ 年次有給休暇と休職期間 ────────────────────────
2か月の療養のため休職したいという従業員の休職願いを受けた会社は、給与
の締日までの数日間を年次有給休暇とし、締日後から休職になることを通知し
ました。
就業規則で「入社5年未満の者の休職期間は2か月」と規定があり、それに該当
する方でした。休職期間が終了する日も通知しました。
休職期間は労働義務が免除されている期間になりますから、その期間中に年次
有給休暇の請求はできないことになります。
■ 1か月経過したら ────────────────────────
今回の方の場合は休職期間が2か月ですので、1か月経過したら本人から療養の
状況や健康状態をヒアリングし、職場復帰について意思を確認するのがよいで
しょう。
■ 休職期間満了までに復帰できない場合 ──────────────────
休職期間満了日までに健康が回復せず、従前の業務に復帰できない場合は、休
職期間満了日をもって退職となります。
「休職期間満了による退職」は雇用保険の失業給付を受給するときに給付制限
がありません。
傷病手当金は被保険者期間が継続して1年以上あれば、退職後も期間満了(支
給開始日から1年6か月)まで受けられます。
■ 復職の希望があるとき ────────────────────────
復職の希望があるのであれば、休職期間満了日の前までに、医師の診断書を添
えて「復職願」を提出してもらいます。
主治医が「復職可能」との診断書を書いてきたからといって、その通りに復職
を認めなければならないわけではありません。
主治医は休職者の心身の状況についての診断書は出せますが、会社の業務を
理解しているわけではありません。
会社の業務内容を知っている、産業医の面談が受けられればよいのですが、
産業医がいない会社であれば、会社の業務内容に理解のある会社指定の医師の
診断を受けてもらうという方法もあります。
会社指定の医師も復職可能と判断しているか等を考慮し、慎重な判断が求めら
れます。復職を判断するのは会社です。
■ 治療と職業生活の両立支援 ────────────────────────
厚生労働省は平成28年2月、治療と仕事が両立できるようにするため、職場
における取組などをまとめた「事業場における治療と職業生活の両立支援のた
めのガイドライン」を公表しました。
病気を抱えながら働く労働者は、高齢化の進行や医療技術の進歩により増えて
います。
働く人の3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いています。
ガイドラインは、治療と仕事の両立支援のために企業がどう環境整備をした
らよいか示しています。
■ ガイドラインに医療情報提供の様式例 ──────────────────
医師の診断書には病名と「療養を要する」との記載だけのものもあります。
会社はその診断書を見ても、どのようなことに配慮すればよいのか、判断に迷
うことが少なくありません。
ガイドラインでは、
・ 勤務情報を主治医に提供する際の様式
・ 治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式
(診断書と兼用)
・ 職場復帰の可否等について主治医の意見を求める際の様式
・ 両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成例
など実務に役に立つ書式が提示されています。