平均賃金って何?

急に受注が減り、従業員に辞めてもらわなければならない。
確か1か月分の給料を支払わなければならないようだったけれど・・・

ハイ、【平均賃金】の30日分を支払わなければなりません
◎平均賃金って何でしょう。
◎辞めてもらうとき以外にも平均賃金を支払わなければならない場合があります。それはどんなときでしょう。

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「平均賃金」はフツウに働けないさまざまな場合の最低補償を考えるときに欠かせない概念です。

◆ 平均賃金とは

算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいいます。
賃金締切日がある場合「3か月」の起算日は直前の賃金締切日となりますが、勤続期間が3ヶ月未満の場合など、特殊な場合の算定方法は別に細かく定められています。(労基法第12条)。

◆ 解雇と平均賃金

「解雇」とは使用者の一方的な意思表示による労働契約の解消です。

1 労働者を解雇しようとする場合、使用者は少なくとも30日前に予告をしなければならない。
2 30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金に相当する「解雇予告手当」を支払わなければならない。(
※ 平均賃金を何日分か支払った場合には、支払った日数分だけ予告期間が短縮されます。
このため、例えば4月30日に解雇をするためには、次の三つの方法があることになります。
① 3月31日に解雇の予告をしておく(予告の日と解雇の効力発生の日との間に中30日間の期間をおく)。
② 4月30日(解雇当日)に平均賃金の30日分(解雇予告手当)を支払う。
たとえば4月10日に解雇の予告をし、予告が足りない10日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う。
※ 解雇予告手当は、解雇の申渡しと同時に支払わなければなりません

◆ 予告手当の性質

 予告手当は平均賃金を元に計算しますが、それ自体は賃金ではありませんので離職票を書くときは御注意ください。

◆ 解雇予告ナシに即時解雇できる場合

① 日日雇い入れられる者 を解雇する場合
② 2か月以内の期間を定めて使用される者  〃 〃
③ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者 〃 〃
④ 試みの使用期間中の者 〃 〃
⑤ 解雇理由として、労働者に保護に値しない非行がある場合。

 ただし、①に該当する者が1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合、及び②又は③で労働者が約束の期間を超えて使用されるようになった場合には原則どおり解雇予告または予告手当の支払いが必要になります。
④について、就業規則等で「試用期間」を定めていない場合には、採用後14日以内であっても労働基準法による解雇予告制度の適用があります。
また「試用期間中ならいつでも解雇が自由にできる」わけではなく、採用後14日を超えてしまうと、会社が定める試用期間中であっても解雇予告が必要となります(この「14日」も出勤日数ではなく暦の日数ですので、ご注意ください)。
⑤については、事前に労働基準監督署長の認定を受けておかないと、当該解雇の当否とは別に、労働基準法の罰則が適用される可能性があります。

◎ 会社の都合による休業と平均賃金

 賃金の支払いはノーワークノーペイが原則ですが、会社都合による休業の場合、会社には労働者を休業させた責任があるので、平均賃金の100分の60以上(平均賃金が1万円の人には6,000円以上)の手当を支払わなければなりません。(労基法第26条)
一日の1部を休業させた場合は、その日働いた分の賃金とあわせて全体として平均賃金の6割以上を支払う必要があります(その日「働いた分の賃金」+「休業分の6割」を要求しているわけではありません)。

◆ 平均賃金と日給

 平均賃金は所定休日を含む暦の日数で割って計算するので、休日出勤が世間並みであれば、平均賃金は日給(1日の労働日する賃金)よりかなり低い金額になります。

◆ 年次有給休暇と平均賃金

 年次有給休暇を与えた日は「通常の賃金」を支払っている会社が多いと思いますが、労基法は、「就業規則等の定めるところにより」平均賃金の支払いでもよいとしています。

◆ 災害補償と平均賃金

 業務上又は通勤による怪我や病気に対しては、労災保険から平均賃金の6割の休業補償が行われます(労災保険はさらに平均賃金の2割の特別支給金)。
※「労災」を使わない場合や使っても支給がない「最初の3日間」は、会社の都合による休業として補償が必要です

◆ 制裁と平均賃金

 就業規則で減給の制裁(賃金カット)を定める場合、金額は1回が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはなりません。(労基法第91条)
※ この制限は就業規則の規定とは係わりなく事実上行った賃金カットにも適用されます。

 「平均賃金」は解雇予告手当・休業手当の算出や年次有給休暇取得時の賃金支払い方法の一つとして、また災害補償の金額決定や賃金カットの適否判定のときなどに使われる重要な概念です。

その他の情報
(詳しくはPDFをご覧ください)

■ ト ピ ッ ク ス
◆ 内定取り消し 331人
平成20年11月28日 厚労省調査

来春の新卒予定者の内定取り消しが大学生と高校生で331人に上ることが厚労省の調査で明らかとなった。内定とは何なのでしょう。舛添大臣は、「これは違法」と述べたと報道されている。 新規学卒者を在学中に採用し、卒業後入社させるという採用方法が採用内定といわれる。企業が学校卒業予定者等からの求人応募者を選考し、採用を決定したが、まだ在学中の者を内定という。 採用内定者は採用予定者と採用決定者に分けることができる。 採用予定者は【労働契約が成立しておらず、その会社の従業員としての地位を取得していない、特別の契約者⇒その取消は解雇にならない】 採用決定者は【労働契約が成立し、その会社の従業員としての地位を取得した者。ただし、卒業という条件や入社日の到来という始期がついていれば、効力の発生はそれからとなる。⇒その取消は民法上の解雇になる】(『採用から退職までの法律知識==安西愈著』) 実務的には解雇にはならないのではないか。少し前には予測できなかったことが現実となる中、内定が早すぎるという見方もできよう。まだ4月までには4か月ある。 p>

■ シリーズ 年 金
◆ カ ラ 期 間

カラ期間とは国民年金に任意加入できるサラリーマンの配偶者が、国民年金に加入しなかった期間  Q「私は厚生年金に10年加入したが、それ以外は年金をかけていない。年金はもらえないのだろうか。妻はずっと厚生年金に加入していた。」            (62歳男性)A 昭和61年4月まではサラリーマンの配偶者は国民年金に任意加入でした。昭和61年、あなたは40歳ですからそれまでの間の婚姻期間と妻の厚生年金の加入歴によっては、カラ期間を使って年金が受給できる可能性があります。加入期間が不足のときは今から国民年金の任意加入もできます。

■ 労務の単語マメ辞典
◆ パートタイマーの差別取扱禁止

「通常労働者と比べ以下の点が同じ短時間労働者は、差別的取り扱いが禁止されます。 ① 職務(業務の内容および責任)が同じ ② 期間の定めのない労働契約を締結 ③ 全雇用期間を通じて、職務内容および 配置の変更範囲が同じ  賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生の利用その他の処遇について、差別的取り扱いをしてはなりません。       (パータイム労働法第8条)

■ 質問に答えて
◆ 子の看護休暇と不利益な取り扱いとは?◆

「年次有給休暇を使ってしまった従業員が看護休暇をとる。【不利益取り扱い禁止】というので有給にしなければならないのでは?」こんな質問を頂きました。 確かに育児介護休業法では、子の看護休暇は年次有給休暇とは別に、週3日以上働く労働者に与えなければならなりません。また、子の看護休暇を取得したことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならないと規定されています。 不利益な取り扱いとは===解雇すること、期間雇用の場合に契約更新をしないこと、正社員を非正社員にすること===などです。働かなかった日について賃金を支払えとはいっていません。  産前産後や育児休業の場合は、無給でも健康保険や雇用保険からの給付があります。が、   子の看護休暇取得は所得保障がありません。年次有給休暇を振替えてあてているという   のが多くの場合の実態でしょうけれど、無給とするで差し支えありません。