「労働者死傷病報告」の意味

★★ 労働者死傷病報告の意味 ★★

「労働者死傷病報告」を書いて監督署に持っていき、労災課に出そうとし
た・・・そんな駆け出しの社労士だったことがありました。

「労災課」ではなく、「安全衛生課」に提出する書類なのです

死傷病報告は、労災が起きたときに書く書類ですが、労災の給付を受けるため
の書類ではなく、安全衛生法上求められている報告だからです。

■ 重要ポイント ────────────────────────

「労働者死傷病報告」は、労災事故が起き、労働者が死亡または休業したとき
に労働基準監督署に提出する書類。

発生時の状況を図示し、労災事故の状況や原因を間違いなく正確に報告するこ
とが求められています。

■ 根拠となる法律 ────────────────────────

労働者死傷病報告は、労働安全衛生規則で求められている報告書です。

休業が4日以上になったら報告しなければならないと思いがちですが、実は違
います。

労働安全衛生規則第97条

1. 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその
附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したと
きは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しな
ければならない。

2. 前項の場合において、休業の日数が4日に満たないときは、事業者は、
同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで
及び10月から12月までの期間における当該事実について、様式第24号による報
告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督
署長に提出しなければならない。

業務災害が起きて休業があったときは、様式23号により提出しなければならな
いが、4日に満たないときは様式24条により提出しなければならないというも
のです。

■「労働者死傷病報告」と「労災保険の書類」は別物 ────────────

労災事故が起きたときは医療機関に療養補償給付を受ける書類を出したり、休
業があれば休業補償を受けるための書類を書いたりしますが、このような労災
保険の手続きとは別に全て「労働者私傷病報告」を提出しなければなりません。

■ 提出が遅れると「遅延理由書」 ────────────────────

休業4日以上の場合の「労働者死傷病報告(様式23号)」は災害発生後「遅滞
なく」提出することと定められていますが、この「遅滞なく」とは、1週間か
ら2週間以内程度といわれています。災害発生から1か月以上報告が遅れると
「報告遅延理由書」を求められます。

■ 休業日数の数え方 ────────────────────────

休業4日とはどのように数えるのでしょう。傷病が所定労働時間内に発生し、
所定労働時間の一部について労働することができない場合は、その日が休業1
日目になります。災害発生時間が所定労働時間外である場合には、翌日が初日
となります。

■ 報告する内容 ────────────────────────

死傷病報告には以下について記載します。

・労働災害の発生日時

・被災労働者の氏名、生年月日、

・職種及びその経験年月

・休業の見込日数

・傷病の名称(骨折など)及び部位

・被災地の場所

・災害発生状況及び原因の説明と発生時の状況についての略図

どのような場所で どのような作業をしているときに
どのような物又は環境に どのような不安全又は有害な状況があって
どのような災害が発生したか

もれなく記載したうえで、事業者職氏名を書き押印して労働基準監督署長
あて提出します。

■ 報告にあたっての注意点 ────────────────────────

事業場の名称については、会社名ではなく工場や支店名まで書きます。

休業見込み期間は医師・被災者から確認の上、被災者が再び出勤可能となるま
での見込み期間を記入します。ケガや病気が治るまでの「全治」期間とは異な
ります。

災害発生状況については、被災者や被災の事実がわかる人の話をよく聞いて調
査し、誤りのないよう注意して記入します。

■ 派遣労働者の場合 ────────────────────────

派遣労働者が派遣先で休業があるけがをした場合はどうすればよいのでしょう。

派遣先事業者・派遣元事業者の両事業所に報告義務があります。

派遣先事業者は派遣先を管轄する労働基準監督署に死傷病報告を提出し、そ
の写しを派遣元事業場に送付します。

派遣元事業者は派遣先から送付のあった写しの内容を踏まえ、労働者死傷病
報告を作成し、派遣元も事業場を所轄する労働基準監督署に提出します。

■ 派遣元・派遣先それぞれの責任 ─────────────────────

派遣先では、労働災害の発生原因を調査し、再発防止策を講じる必要があります。

労働災害の発生原因や再発防止対策は、安全委員会等で調査・審議する事項です。

派遣元では、被災した労働者の労災保険給付を行うために必要な助力を行います。

■ 死傷病報告の様式の変更があった ─────────────────────

平成22年4月1日からの死傷病報告の様式第23号は、派遣労働者が被災した場合
の派遣先の事業所の名称、提出事業者は派遣先か派遣元か、派遣労働者が被災
した場合は、派遣先の事業場の郵便番号を記載するものになっています。

また、平成31年1月8日から被災労働者が外国人である場合、国籍・地域、在留
資格を記入する欄ができました。

外国人労働者の事故が増加することが見込まれ、適切な対応をしようというこ
とでしょう。

■ 死傷病報告は統計資料となる ───────────────────────

厚生労働省は毎月、労働災害の発生状況について統計数字を発表しています。
死亡事故と休業4日以上については死傷病報告をもとに業種別、災害の種類別
(墜落・転落、はさまれ・巻き込まれなど)に細かな数字を出しています。

原因を分析し、再発防止の対策に役立てられています。

労災事故は減る傾向が長らく続いていましたが、新潟県では平成29年度と30年
度の比較で死亡災害が増加しています。

統計に利用され労働安全行政にも反映される重要な報告である「労働者死傷病
報告」、遅滞なく慎重にまた正確に報告することが求められています。