監督署の長時間労働の調査

★★ 監督署の長時間労働の調査 ★★

厚生労働省から令和元年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監
督署が行った監督指導の結果が発表されています。(令和2年9月8日)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13350.html

■ 重要ポイント ───────────────────────

監督署は法令違反には「是正勧告書」、ガイドラインの不適合などのときは
「指導票」の交付により、是正を求めます。

■ 法違反の状況 ───────────────────────

監督指導の対象となったのは、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月
当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働
による過労死等に係る労災請求が行われた事業場です。

全国で32,981の事業場に監督署が調査に入ったところ、25,770(78.1%)の事
業場で労働基準関係法令の違反がありました。

■ 違法な時間外労働が47%の事業場で ─────────────────

法令違反の78.1%の内訳は、労働時間に関するものが15,593(47.3%)件でト
ップでした。具体的には

〇36協定なく時間外労働を行わせているもの

〇36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせているものなど違法な
時間外労働があったもの

〇時間外労働の上限規制の違反

に関する違反で労働基準法第32条、40条、36条6項の違反です。

労働者代表の選出が適切でないような場合、36協定を締結・届出をしていて
も「36協定なく時間外労働を行わせているもの」になります。

36協定の上限時間を超えた時間外労働の者が1人でもいれば、違法な時間外
労働があったことになります。

また、特別条項を付けていたとしても1か月の時間外労働の上限は100時間未
満でなければなりません。100時間を超えて働いていた者がいれば残業代を適
切に支払っていたとしても違法です。

■ 違法な時間外労働時間数 ───────────────────────

時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えていた
のは5,785事業場(37.1%)でした。

うち、月100時間を超える事業場:3,564(22.9%)
うち、月150時間を超える事業場:730(4.7%)
うち、月200時間を超える事業場:136(0.9%)

残念な長時間労働の実態が報告されています。

■ 健康障害防止措置の未実施も多い ────────────────────

2番目に多かった違反事項は、健康障害防止措置に関するもので、6,419(19.
5%)の事業場で違反がありました。労働安全衛生法(以下労安衛法)の違反
です。

内訳は

〇衛生委員会を設置していないもの(労安衛法18条違反)

〇健康診断を行っていないもの(66条違反)

〇1月当たり80時間以上の時間外・休日労働を行った労働者から、医師による
面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導をしていないもの(66条の
8違反)

〇面接指導を実施するため、客観的な方法その他の適切な方法により労働時間
の状況を把握していないもの(66条の8の3違反)

管理監督者であって労働基準法の割増賃金の支払いを要しない者であっても
労働時間を把握していなければ労安衛法違反となります。タイムカード、IC
カード、パソコンのアクセスログなどによる労働時間の把握が客観的な方法と
考えられます。

■ 賃金不払残業も ───────────────────────

違反の3番目は賃金不払残業で2,559(7.8%)の事業場で割増賃金の未払い
(労基法37条違反)があったと報告されています。

■ 法違反と是正勧告書・指導票 ─────────────────────

違法な時間外労働や法に定める健康障害防止措置の未実施、賃金不払は法令
違反なので「是正勧告書」が渡され改善を求められます。違反の内容が法条文
を示して具体的に指摘され、指定の期日までに是正して報告することが求めら
れます。

法令違反とまではいえないが改善が求められる場合には、「指導票」が渡さ
れます。

■健康防止に関する指導 ───────────────────────

過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導された事業場は
15,338(46.5%)に上ります。

指導事項の内容は

〇常時50人以上の労働者を使用する事業場の場合は衛生委員会で調査審議を行
うこと
常時50人未満の労働者を使用する事業場の場合には、安全又は衛生に関する
事項について関係労働者の意見を聴取すること

〇時間外・休日労働時間を1か月当たり45時間以内とするための具体的方策を
検討し、その結果、講ずることとした方法を実施すること

〇労働者が医師による面接指導を受けられるようにする仕組みを定めること

■ 労働時間の適正な把握に関する指導 ───────────────────

労働時間の適正把握ガイドラインに沿って、労働時間を適正に把握するように
指導を受けた事業場は6,095(18.5%)でした。

■ 令和2年度の監督行政は ───────────────────────

令和2年度における労働基準監督行政の最重点課題は「長時間労働の是正及び
健康障害防止の徹底」ですから昨年度同様の監督指導が今年度も行われている
と考えられます。