従業員が増えると?

 「障害者の雇用をするよう、職安から指導を受けた。従業員が増えるとなかなか大変だ。」
従業員が増えるとしなければならないことが増えてきます。
障害者雇用、新潟、社会保険労務士

 重要ポイント

障害者を何人雇用しなければならないかなどは会社規模で判断される。56人に注意。
労働安全衛生法は事業場という単位で、安全のためのさまざまな資格者の選任と届出を求めている。50人に注意。

 パートタイマーを一人でも雇うと

ちょっと仕事を手伝ってほしいとパートタイマーを一人雇ったとします。
半日程度であろうと、期間を定めた短い期間であろうと、労災保険に加入しなければなりません。
労災保険は全額事業主が負担します。
業務中に怪我をしてしまっても、労災保険を使うと医療費の本人負担はありません。
労働者を一人でも雇っている事業主は労災保険の加入手続きをしなければなりません。

 パートでも勤務時間が増えると

週の労働時間が20時間以上、31日以上の雇用の見込みなら、労災保険に加えて雇用保険に加入しなければなりません。保険料は本人負担分と会社負担分があります。
雇用保険に入ると、労働者は退職したときに失業給付がもらえます。
労災保険と雇用保険をあわせて労働保険といいます。
毎年6月1日から7月10日までの間に、労働保険の申告・納付をします。

 5人以上の個人事業所なら社会保険に加入

すべての法人と常時5人以上の従業員がいる個人事業(一部のサービス業や農林漁業を除く)は、強制的に社会保険(健康保険・厚生年金)の適用を受けます。
時給のパートタイマーであっても、週の労働時間が30時間以上になると社会保険に加入しなければならなくなります。
また、このように労働時間が増えると、定期健康診断の実施義務があります。
本人負担と会社負担が重くのしかかる社会保険ですが、賃金額とは関係なく、労働時間や労働日数で常用的な雇用(4分の3以上)であれば、強制加入です。

 従業員が10人以上になると

常用の従業員が10人以上になると就業規則を作成し、届出る義務があります。
また、労働安全衛生法では、「10人以上50人未満」の事業場に「安全衛生推進者」または「衛生推進者」の選任を義務付けています。
従業員が10人以上になると、職場のルールをきちんと定め、職場環境の安全や衛生に気を配ることが必要になってきます。

 50人になると衛生管理者と産業医の選任

従業員の安全や衛生について配慮することが法律上厳格に求められてくる規模が”従業員数50人以上”です。
労働安全衛生法は、パートタイマーも含めて50人以上の製造業や建設業の事業場であれば、「安全管理者」「衛生管理者」の選任を求めています。
安全管理者は、会社の安全管理担当。安全管理者になるには、「理科系統の高校を卒業して、4年以上安全管理の実務を経験したもの」などの要件があります。
衛生管理者は、健康診断や職場の作業環境の担当。業種を問わず50人以上の場合に選任しなければなりません。衛生管理者になるには、国家試験に合格する必要があります。(かなり難しい試験です)
常時使用する労働者が50人以上になると、産業医(医師であって、労働者の健康管理を行うのに必要は医学知識を備えているもの)の選任義務もあります。
産業医は選任して、労働基準監督署長に報告しなければなりません。
また、50人になると、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署長に提出しなければなりません。

 50人では安全や衛生の委員会を設置

国家資格の衛生管理者がいて、産業医を選任しても、労働災害を防ぐには十分ではありません。事業者・労働者双方が継続的に安全や衛生を考えていくため、労働安全衛生法は、安全委員会、衛生委員会、あるいは安全衛生委員会の設置を求めています。
安全委員会は50人以上又は100人以上の労働者がいる場合(業種によって異なる)に、設置しなければなりません。
また、衛生委員会は業種にかかわらず、従業員が50名以上のすべての事業所で設置しなければならないものです。 同じ事業場で衛生委員会と安全委員会を設置しなければならないとき、両者の機能を併せ持つ安全衛生委員会を設置できます。
各委員会の開催については委員の構成や記録の作成について、細かな定めがあります。

 従業員数と事業場

就業規則の作成義務は常時10人以上の労働者を使用する事業主に課せられていますが、10人の従業員を雇っている会社でも、複数の事業場があって合わせて10人以上で、1箇所ではそれぞれ10人未満であれば、労基法上の作成義務はありません。
規模は場所的に独立した事業場(営業所や○○店など)という単位で考えます。
会社全体の従業員数ではなく、独立している事業場ごとに従業員数を考えます。
新潟本社に40人、長岡営業所に10人であれば、衛生管理者や産業医の選任義務はありません。

 会社規模が大きいと5割増の割増賃金

平成22年4月から月60時間を超える時間外労働の法定割増率が5割に上がっています。
中小事業主については、この5割増は猶予されています。この中小企業にあてはまるかどうかは、資本金と労働者数で判断されます。

 従業員が56人になると

一般の民間企業の法定の障害者雇用率は1.8%です。
55の1.8%は0.99ですが、56の1.8%は1.008で、1を上回ります。これは、従業員数が56人になると1人の障害者の雇用が義務となることを意味します。
この法定の障害者雇用率は、企業全体の常時雇用労働者の数で考えます。企業全体の労働者数で雇用すべき障害者数が決まり、事業場の規模は関係ありません。
法定の障害者雇用率は、少なくとも5年ごとに、労働者と失業者の総数に対する身体障害者又は知的障害者である労働者と失業者の総数の割合の推移を勘案して、政令で定めることになっています。
平成25年4月1日から2.0%に改定し施行される見込みです。

※ 規模の大きな会社から、週20時間以上働くパートにも社会保険の適用を、という動きもあります。

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 ト ピ ッ ク ス

民事上の労働相談件数 過去最高
平成24年5月29日発表労働紛争解決制度の状況

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