労働契約法の改正

 労働契約法、改正です。
有期労働契約が一定の条件の下で期間の定めのない労働契約に転換されます。

労働契約法、新潟、社労士
1年とか、6か月などの契約期間を定めた従業員がいる会社の方は注意していただきたい内容です。

重要ポイント

契約期間を決めた契約を繰り返すときには、慎重な対応が求められるようになります。

そもそも労働契約法って

労働契約法は、労働契約に関する基本的なルールを規定した19条からなる法律です。
平成20年3月1日に施行されています。

今回の改正の目的

有期労働契約とは、1年契約とか6か月契約とか、一定の期間を定めた契約のことをいいます。
有期の契約で働いている人は、正社員とは区別され、契約社員、臨時社員、アルバイ社員、嘱託などと呼ばれていることが多いようです。
有期労働契約で働いている人が、契約を打ち切られる不安から解消され、安心して働き続けることができるようにするための改正です。

労働契約法改正の3つのルール

一つめは有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換です。
二つめは【雇い止め法理】の法定化です。
三つめは期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止です。
雇い止め法理の法定化は平成24年8月10日の公布日に施行され、一つめと三つめは平成25年4月1日が施行日と決まりました。
順番に詳しく見ていきましょう。

無期労働契約への転換

有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換させるというルールができました。
ただし、「5年たったら期間の定めのない労働契約に変えなければならない」という今回の改正は、「正規従業員に変えなければならない」のではありません。
「更新されて契約期間が通算5年を超える労働者が、期間の定めのない労働契約を申込んだときは、使用者はその申込みを承諾したものとみなす」という改正内容で、この申込みを受けたとき、使用者はダメということができなくなります。
今現在5年を超えた有期労働契約を繰り返している労働者がいても心配は要りません。
5年のカウントは、この法律の施行日以後に開始する有期労働契約が対象です。施行日前に既に開始している有期労働契約は5年に含めません。
平成25年4月1日以後に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間に、無期転換の申込みをすることができます。申込みをするかどうかは労働者の自由ですが、申込みは労働者の権利であり、申込みにより、無期労働契約が成立します。

無期転換の具体例

平成25年4月1日に1年の契約が締結され、更新されて満5年が終わったとします。次の契約を1年更新した場合、5年を超えた日である平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に期間の定めのない契約の申込みをすると、平成31年4月1日からの契約は期間の定めのない契約になります。
その場合、無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は原則、直前の有期労働契約と同一となります。
有期契約の従業員と無期契約の正規従業員がいる職場では、今後有期から無期に転換した従業員が出た場合の労働条件をどうするか、検討しておく必要が出てきます。
無期契約に転換となった従業員について、賞与や退職金などをどうするか考えておかなければならないでしょう。法は同じ労働条件で、期間の定めのない労働条件への転換を求めていて、それ以上のことは労使に任せています。

【雇い止め法理】の法定化

「雇い止め」とは1年とか6か月とかの期間を定めた契約が終わることで、労働契約が終了することです。期間がきたのだから契約終了で、雇い止めをしても契約上の問題はなんらありません。
ただ、何度も何度も有期労働契約が繰り返されていれば、実質として期間の定めのない、雇用の継続が期待されます。そうなると、契約期間がきたからという理由での雇い止めは無効とされます。
また、有期労働契約の契約期間の満了時に、契約の更新が期待されることについて合理的な理由が認められる場合には、その雇い止めも無効となります。
過去の裁判で確立したこのルールが、労働契約法に条文化されました。

不合理な労働条件の禁止

同一の使用者と労働契約を結んでいる、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に労働条件を相違させることを禁止するルールです。
有期契約労働者について、雇い止めの不安があることによって合理的な労働条件の決定が行われにくいことや、処遇に対する不満が多く指摘されていることを踏まえ、ルール化されました。

労働基準法と労働契約法

労働基準法は使用者に遵守を求める法律、労働条件の最低の基準を定めている法律です。守らない使用者には罰則があります。罰則や監督指導を前提に、使用者に対して義務の履行を強制しています。労働関係の取締法規です。労働刑法といわれることもあります。
それに比べて労働契約法は、民法の特別法、労働民法といわれます。
民法は私人間の権利義務を規定する一般法ですが、労働契約に関する民法の特別法が労働契約法です。
民法は契約の両当事者が対等な私人であることを想定しています。
労働契約も同じように契約自由の原則で、当事者の自主的な決定で締結されるべきものですが、労働者と使用者とでは情報量、経済力、交渉力など実質的に差があります。そこでさまざまな労働関係の法律は労働者保護の観点から民法の私的自治の原則や契約自由の原則に修正を加えてきました。
労働契約に特有の基本的なルールが法制化されているのが労働契約法なのです。
今回の労働契約法改正については、厚生労働省から通達、解説のパンフレットが出ていますが、労働契約法は、罰則を伴うものではなく、監督指導の対象ではありません。国が遵守を強制する手法にはなじまないもので、労働基準法とは性質を異にするものです。

 

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