傷病手当金を知ろう

★★ 傷病手当金を知ろう ★★

「コロナ感染で1週間ほど会社を休む従業員がいます。傷病手当金の医師の
意見書はいりますか?」

一時的に医師の労務不能の意見書が不要な時期がありましたが、現在
は必要です。

傷病手当金の請求で、療養担当者の意見書はとても重要です。

■ 重要ポイント ────────────────────────

病気やけがでしばらく休まなければならなくなったときに、健康保険の傷病手
当金が受給できます。

休んでいる間も社会保険料の本人負担はありますが、大事な所得保障の制度で
す。

■ 傷病手当金を受給できるとき ─────────────────────

傷病手当金は4つの条件をすべて満たしたときに支給されます。

(1) 業務外の事由による病気やけがの療養のための休業であること

(2) 仕事に就くことができないこと

(3) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

(4) 休業期間について給与の支払いがないこと

■ (1)業務外の病気やけがの療養のための休業とは ────────────

業務または通勤を原因とする病気やけがについては労災保険の対象となるので、
傷病手当金は使えません。

自宅療養や、自費で診療を受けていても対象です。

■ (2)仕事に就くことができないこととは ─────────────────

仕事に就くことができない状態であることは、療養担当者の意見をもとに判断
されます。

従事する業務に就労できない状態であれば「仕事に就けない」になるとされて
います。

半日勤務できる場合は対象となりません。

■ (3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこととは ───────

連続する最初の3日間は待期として傷病手当金は支給されません。

3日間には公休日や祝祭日、年次有給休暇取得日が含まれていてもよく、3日
間は報酬を受けていてもかまいません。待期は、就業時間中に労務不能となっ
た場合はその日から、就業時間終了後に労務不能となったときはその翌日から
起算します。

■ (4)休業期間について給与の支払いがないこととは ────────────

傷病手当金は業務外の事由による病気やケガで休業している期間につい
て生活
保障を行う制度のため、給与が支払われている間は、支給されません。
給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支
給されます。

■ 新型コロナ対応の通知 ────────────────────────

令和4年8月9日~5年5月7日までの間、医療機関のひっ迫を回避するた
め、医師の意見書がなくても保険者の判断で支給するよう厚生労働省が通知を
出しました。

医師などの療養担当者が労務不能という書類を添付しなければいくら自分が
「働ける状態ではない」と申告をしても傷病手当金は受給できないという原則
からかけ離れた通知でした。

令和4年度の協会けんぽの傷病手当金の支給件数は31.1万件で、前年度の15.4
万件から倍増しました。新型コロナ対応の通知が大きく影響したとみられて
います。

■ 医師の診断書が必要なのではない ────────────────────

傷病手当金の支給申請書では療養担当者の意見を求めています。

労務不能と認められる期間とは、治療期間ではなく、療養のため就労できな
かったと認められる期間の始期と終期を記入します。

症状及び経過、治療内容、検査結果、療養指導など労務不能と認められた医
学的な所見を詳しく記入します。

「発病または負傷の原因」の記入欄に「仕事のストレス」など業務災害と疑
われる記載があると労働基準監督署に問い合わせるようにと書類が戻されるこ
とがあります。

■ 支給される期間 ────────────────────────

傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月で
す。
傷病手当金を受給していたが、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、
その分を延長して支給を受けられるようになりました。
(令和4年4月1日から)

■ 傷病手当金の額 ────────────────────────

30万円の標準報酬月額の人は30万円を30で割り1日当たりの金額を1万円、その
3分の2の6,667円が休業1日に対して支給されます。

ただ正確には2016年(平成28年)4月1日支給分より、1日につき、「傷病手当
金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報
酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額」となって
います。被扶養者の有無で額に変わりはありません。

■ 健康保険法の歴史 ────────────────────────

健康保険法は1922年(大正11年)にできた法律です。(なんと100年以上!)
公的医療保険制度の中核をなす法律で、1926年(昭和2年)7月1日に施行され
ました。

当時は労災保険法がなかったため、労災による休業も傷病手当金の支給範囲で、
その支給期間は最長180日でした。

■ 2023年1月から様式が変更に────────────────────────

傷病手当金をはじめ健康保険の申請書の様式が2023年(令和5年)1月から変更
になりました。

マス目化した記入欄が増え、記入方法も記述式が減り選択式が増えました。
事業主が記入する勤務状況と賃金の支払いのページもマス目が増え、スッキリ
しました。