夜勤か宿直か 

多くの医療機関や介護サービス事業所では24時間体制のサービスが提供されています。 夜の泊まり勤務には「夜勤」と「宿直」がありますが、ふたつは大きな違いがあります。

夜勤、宿直、新潟、社会保険労務士

重要ポイント

夜勤には深夜割増賃金を支払わなければなりません。
宿直には特別な許可が必要です。
夜の勤務の実態にあわせ、賃金の支払いで間違いのないように。

夜勤とは何でしょう

法定労働時間の中で夜間に勤務することを夜勤といいます。
法定労働時間とは原則1日8時間、1週40時間の労働時間のことです。その労働時間の枠の中で夜間に勤務することを夜勤といいます。
深夜の時間帯である午後10時から午前5時までの勤務については、深夜割増手当(2割5分増)を支払わなければなりません。

夜勤手当4,000円は適法?

1カ月の所定労働時間が160時間で、月給が280,000円であったとします。
1時間あたりの賃金は 280,000÷160で1,750円となります。
深夜勤務に7時間従事したとすれば、
1,750円×0.25(法定割増率)=438円
438円×7時間=3,066円
夜勤手当が深夜割増賃金として支払われているのであれば、4,000円以内に納まっているので、法的な問題はありません。
もし、月給380,000円の人にも同じく一律の4,000円が支払われているのであれば、
1時間あたりの賃金は 380,000÷160で2,375円となり、
2,375円×0.25(法定割増率)=594円
594円×7時間=4,158円
で、4,000円を上回っています。この場合は違法ということになってしまいます。

宿直とは何でしょう

高価な品物を販売やレンタルしている会社の、守衛の方をイメージしてください。
彼の仕事は夜の見回り。その後は、宿直室で熟睡することができ、通常勤務の人が朝出勤してくれば、役目は終わりです。緊急時には対応しなければならず、眠る場所は指定されてはいますが、熟睡している時間については通常の労働時間としなくてもいいという取り扱いがあります。
宿直に、労働基準法の労働時間、休憩、深夜の割増賃金の規定は適用されません。

宿直は許可がいる

労働基準法の例外的な取り扱いなのですから、宿直を行わせるには労働基準監督署長の許可が要ります。許可がなければ違法行為ということになります。
許可を受けなければ、宿直室で夜眠っている時間も労働時間となり、深夜割増の賃金まで支払わなければなりません。

宿直の許可条件

宿直勤務とは、所定労働時間外又は休日における勤務の一態様で、構内巡視、文書、電話の収受又は非常事態に備えて待機するもので、常態としてほとんど労働する必要のない勤務をいいます。
そのほか、
・ 相当の睡眠設備が設置されていること(会議室のソファーで寝るはダメ)
・ 宿直の頻度は1週間に1回程度であること
・ 宿直手当が支払われていること
が必要です。

宿直手当の額

深夜割増賃金を含む宿直手当の最低額は、その事業場において宿直に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金の1人1日平均額の3分の1を下回らないものである必要があります。

介護施設の宿直勤務許可は非常に困難

社会福祉施設の宿直勤務については、常態としてほとんど労働する必要のない勤務であることのほか、次の要件をすべて満たさなければならないという通達があります。

(1)通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること。

(2)少数の者に対して行う夜尿起こし、お むつ取替え、検温等の介助作業であって、軽度(おむつ取替え、夜尿起こしであっても、要介護者を抱きかかえる等身体に負担がかかる場合を含まないこと)かつ短時間(介護作業が一勤務中に1回ないし2回含まれていることを限度として、1回の所要時間が10分程度のものをいうこと)の作業に限ること。

(3)夜間に十分睡眠がとりうること。

  こうみてくると24時間サービスの介護施設が宿直勤務の許可を受けることは大変困難といえます。

宿直が許可されている理由

宿直勤務は通常の労働者と比べて労働密度が薄く、労働時間、休憩、休日の労基法の規定を適用しなくても、労働者保護に欠けることはないであろうと考えられています。
しかし勤務の状況はさまざまなので、勤務の実態を記載して労基法の適用除外の許可を労基署長から得て「宿直」として認められるというものです。
「宿直」は簡単ではないのです。

仮眠時間は労働時間

夜勤勤務の途中で休憩を与え、仮眠を取ってもらうというシフトを組んでいる医療機関や介護事業所は多いと思います。
仮眠時間の取り扱いもややこしいところがあります。
仮眠時間が労働時間であれば賃金を支払わなければなりませんが、休憩時間であれば、賃金の支払いの必要はありません。
仮眠時間が労働時間かどうかは実際の勤務の状況によります。一概には言えません。
実際に業務を行っていない仮眠時間であっても、業務が発生した場合にいつでも対応できるよう待機しているのであれば、労働時間として考えなければなりません。
深夜の時間帯の仮眠時間がもし労働時間なのであれば、通常の賃金に加え深夜割増賃金の支払いが生じますので、注意が必要です。
休憩時間(賃金の支払い不要)とは「労働から離れることを保障されている時間」です。現実に作業していなくても、いつ就労の要求があるかもしれない状態で待機しているいわゆる手待ち時間は、就労しないことが使用者から保障されていないので休憩時間ではありません。

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