時間単位年休を考えよう!

 『小学生の子どもを夏休みに児童館に預けてから出勤するので、始業時刻に間に合わないのですが・・・』
このような相談に対応できる制度に『時間単位年休』があります。

 

時間単位年休

 

 重要ポイント

かつではできなかった、時間単位の年休取得、今は可能です。
ただし、労使協定を結ぶ必要があります。

 もともと年休は1日単位

年次有給休暇は、労働による心身の疲労を回復することを目的としています。勤続年数が6か月以上で、8割以上の出勤率であれば、誰でも有給の休みを請求することができます。
年次有給休暇の利用目的は自由であり、労働者は年次有給休暇を指定した時期に取得することができます。
取得の単位は、始業から就業までの1労働日でした。

 半日単位での取得も可

本来年次有給休暇の単位は「1日」ですが、半日単位で付与することは認められていました。
午前中の半日休んで年休0.5、午後から半日休んで0.5としてカウントし年休消化とするのです。これについて労使協定はいりません。

 年次有給休暇の取得率

年次有給休暇の取得率は、平成23年度の数字で49.3%です。
付与日数18.3日に対し、取得日数9.0日で、ここ数年微増していますが、取得率は半分以下の状態です。(厚生労働省 「就労条件総合調査結果の概要」)
取得が進まない理由として、「仕事が忙しい」「みんなに迷惑がかかる」「職場にとりづらい雰囲気がある」があげられています。

 平成22年4月から時間単位年休が可能に

時間単位の年休が取得できるように改正された理由は、年次有給休暇の権利を行使ししやすいものとするためです。
年次有給休暇制度本来の目的に沿った利用を阻害することなく、年次有給休暇の取得を進めよう、そのため、労使で協定することにより、時間単位によるフレキシブルな休暇の取得ができるようにしようという法改正でした。

 日数は5日以内

年次有給休暇は、本来1日単位で取得し疲労回復することが目的です。
時間単位年休ばかり請求されては本来の年休の目的が薄れます。そこで取得できる日数は5日分を上限と決められています。この5日は前年度の繰越分を含めて5日です。

 時間単位年休1日の時間数

1日の所定労働時間が8時間であれば、8時間分の時間単位年休を取得すれば、1日分の年次有給休暇を取得したことになります。では7時間45分や7時間30分の所定労働時間のときはどうすればいいのでしょう。
1時間に満たない端数を切り捨ててしまうと、このような労働時間で働く労働者にとって不利益となるので、1日の所定労働時間数を下回ることはできず、1時間に満たない端数は時間単位に切り上げる必要があります。

 0.5時間の年休は認められない

子どもの送迎のために時間単位年休を利用したいのであれば「30分の時間単位年休を」という要望があるかもしれません。
取得時間単位は整数の時間数を単位とするものでなければならず、0.5時間など1時間に満たない端数が生じる単位で取得することはできません。(2時間、3時間のように1時間より大きな塊の単位で取得することは認められています)。

 労使協定の重要性

半日年休の取得については、労使協定はいりませんが、時間単位年休は労使協定なしには、法的な効果が生じません。 労使協定のない、あるいは協定の限度を超える時間単位年休の取得は、法的な年次有給休暇の取得としては扱われません(年次有給休暇をとったことにならない)ので、法定の年次有給休暇の日数の残数は変わらないことになります。(改正労働基準法にかかる質疑応答より)
時間単位年休の労使協定は監督署に届出る必要はありません。

 対象者をどうするか

時間単位の年休取得になじまない仕事をしている労働者を、労使協定で時間単位年休の対象から除くことはできます。たとえば、製造部門のラインで一斉作業に従事する者を適用除外者とすることです。
また、勤続1年未満の者や育児介護短時間勤務制度の適用を受けている者を除外することも考えられますが、対象者については労使自治(=労使協定の中身)に任されています。

 時季変更権の行使

年次有給休暇を請求した場合、使用者には「事業の正常な運営を妨げる場合」に、別の時季に変更することが認められています。
時間単位年休の場合も同様に、他の時間帯や日に取得時季を変更してもらうことができますが、単に忙しいからという主観的な理由では時季を変更してもらうことはできません。

 就業規則の変更

労使協定の締結によって時間単位年休を導入する場合には、「休暇に関する事項」ですから、就業規則にもその内容を載せておく必要があります。

 就業規則の規定例

就業規則の休暇の箇所にプラスして、以下のような条文を入れます。

(時間単位年休制度)
第○条  従業員は、時間単位の年次有給休暇について労働基準法第39条第4項に基づき、別に締結される過半数代表者との労使協定に従い、同休暇を取得することができる。
 前項のほか、時間単位年休に関しては、前項の労使協定の定めるところによる。

 

 時間単位年休を考える意味

ちょっと始業に間に合わない、少し早く退社したい・・育児や介護にかかわる労働者が多い職場では、時間単位年休の制度、積極的に考えてみてよいのではないでしょうか。

 

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