今年の10月になると各家庭に「番号通知カード」が届きます。日本国内に住民票があれば、赤ちゃんから年配の方まで、全住民に個人番号が付けられます。今までになかった新しい制度がはじまるのです。
マイナちゃんというキャラクターもでき、テレビや新聞でも広報がはじまりました。
具体的に何がどう変わるのでしょう。会社は何をしなければならないのでしょう。
重要ポイント
マイナンバーの取得、利用、保管、提供、削除・廃棄など組織としての対応が求められます。
マイナンバー制度が始まる前に、関連する業務を洗い出し、マイナンバーを取り扱うにあたっての社内ルールの整備を急ぎましょう。
マイナンバー法って?
マイナンバー法の正式な名称は「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」です。
2016年1月から、社会保障、税及び災害対策の行政手続をするときに、個人番号(マイナンバー)の利用が順次開始されます。
マイナンバーの利用はこの3分野の行政手続きのみに限られていて、それ以外の目的のために使うことは禁止されています。
マイナンバー法は個人情報保護法の特別法という位置づけです。
マイナンバー法違反には罰則
マイナンバー法は法人・個人すべての事業者が対象です。
法人には13ケタの番号が、個人には12ケタの番号が付けられます。
個人情報保護法では情報の廃棄についての規定はありませんが、マイナンバー法では保存期限が経過した場合、確実に廃棄・削除することが求められます。
実務ではこの廃棄・削除がこれまでにない困難な業務となります。
マイナンバー法違反(個人番号関係事務又は個人番号利用事務に従事する者又は従事していた者が、正当な理由なく、特定個人情報ファイルを提供した場合)には、4年以下の懲役または200万円以下の罰金又は併科という厳しい罰則があります。
会社の事務とマイナンバー
個人で年金の請求をするとき、児童手当などの給付を受けるときにマイナンバーを使うことになります。
会社は従業員が入社した時の雇用保険の手続きにはじまり、健康保険や厚生年金の手続き、労災保険の請求などの手続きにマイナンバーを記載しなければならなくなります。
給与の源泉徴収票にも従業員本人及び扶養家族のマイナンバーを書かなければならなくなります。
市区町村に提出する給与支払い報告書は2016 年分(2017年1月31日提出分)から、マイナンバーを記載します。
社会保険関係は1年遅れで2017年1月1日提出分より健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届などが、マイナンバーを記載する書式に変わります。
マイナンバーの通知カードと個人番号カード
10月になると送付される個人番号の通知カードは、12桁の個人番号と氏名、住所、生年月日、性別が記載された紙のカードですが、これだけでは本人確認ができません。本人ではない人が持っている可能性があるからです。
通知カードでなく個人番号カードはICチップ・顔写真入りのプラスチックのカードで、表面に氏名、住所、生年月日、性別と顔写真があり、裏面にマイナンバーが記載されたもので、公的身分証明書として利用することができ、本人確認ができるものです。
個人番号カードを持ちたいという希望者は、2017年1月から自治体に申請して受け取ることができるようになります。
個人番号の提供はいつどのように行うか
2016年1月1日以降は入社のときにマイナンバーの提供を受け、税や社会保険の行政事務に使うことになります。
従業員から番号を申告してもらうだけではなく、同時に「本人確認」を行わなければなりません。本人確認は以下のような方法で行います。
(1)通知カードとその他の身分証明書
(免許証またはパスポート)の提示
(2)個人番号カードの提示・・・通知カードだけでは
なりすましが起こりううるので、
本人確認のために免許証などを求めなければなりません。
※個人番号カードは写真入りなので、容易に本人確認ができます。
アルバイトからもマイナンバーの提供?
ほんの数日働いて退職したパートタイマー、授業のない日だけ働いてもらう学生アルバイトにもマイナンバーの提供を受けなければならないのでしょうか。
給与や社会保険等の業務は会社が行いますので、パートタイマーやアルバイトにもマイナンバーを提示してもらうことになります。
入社提出書類が変わる
入社に当たっては、入社誓約書や身元保証書、扶養家族の申告書を求めていることと思います。来年からはそれに加えて従業員のマイナンバーがわかる証明書等のコピー、扶養家族がいる場合には、扶養家族のマイナンバーを記載した給与所得者の扶養控除等申告書を提出してもらうことになります。
マイナンバーの提供を依頼する文書には、「マイナンバーは源泉徴収票作成事務、健康保険・厚生年金・雇用保険・労働保険の諸手続きに利用する」とその利用目的を明示しましょう。
在籍従業員からのマイナンバーの提示
2016年1月以降、税や社会保障などの公的な手続きに、順次、マイナンバーの記載が必要となることを従業員に通知しておきましょう。
そのうえで、年内中には在籍従業員からマイナンバーを取得しておくのがよいでしょう。毎年年末に従業員から提出してもらう、扶養控除等申告書の平成28年分は、従業員本人と扶養親族についてマイナンバー記載欄のある書式に変わります。
マイナンバーの連絡担当者が不在の時に、マイナンバーが見える状態で机の上に置いておくなどということのないよう、注意が必要です。また、コピーを預かった場合は、マイナンバーの確認後は廃棄して、他の目的に利用することがないことも伝えましょう。
就業規則の変更も
マイナンバー制度がはじまる前に、関連する業務を分析し、対応策を検討することが急がれます。新しいこの制度で何をしなければならないのか、従業員や関係する人事・総務への研修が必要です。会社として、特定個人情報の取り扱い方針や取扱規程を定めたり、また、特定個人情報に接する従業員には新たに誓約書を求めたり、入社提出書類や服務規律の見直しなど就業規則の変更も必要になります
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「来月1日に入社6か月となる社員が、今月年次有給休暇を前借でとりたいという…」年休の日数を労基法が定めている日数分以上与えていたら、その上乗せの日数分だけ前借が可能です。しかし、法定日数分しか与えていないなら、前借りは、出来ないのです・・・。
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