「年間休日を85日にして、1日の労働時間を7時間半としたいがどうだろう」
週休2日制が難しい会社では、年間の休日をあらかじめ決めて働いてもらう変形労働時間制が広く使われています。
1年単位の変形労働時間制は便利な制度ですが、上記のやり方は総労働時間で問題があります。
ではどうすれば?
重要ポイント
休日がなかなか取れない会社では、1日の所定の労働時間を8時間より短くすればよいが、法定労働時間の枠に収まっているかどうかを考える必要がある。
年間休日85なら、1日の所定労働時間は7時間20分にしよう。
週40時間で年間の労働時間の総枠は
1年365日には52.14週あります。
1年が52.14週なので、この数字に40を掛けると、1年間の労働時間の総枠の数字が出てきます。
2,085.6時間です。
1年変形という方法を使っても、年間の労働時間は2,085時間を超えることができません。
1年単位の変形労働時間を採用して、1日8時間が所定労働時間であれば、労働日数が260日(=休日105日)で年間総労働時間が2,080時間ですから総枠内に収まっています。
年間休日105日が確保できない場合
年間の所定休日が105日確保できないのであれば、1日の所定労働時間を減らすことで、休日日数を減らすことができます。
休憩を入れるなどして1日の所定労働時間を7時間50分にすれば、所定労働日266日(=休日99日)で総枠に収まります。
1日の労働時間の休日の関係
1日の所定労働時間と年間の休日数は次のような関係になります。
1日の所定労働時間 | 休日日数 | 労働日数 | ||
---|---|---|---|---|
8時間 | 105日 | 260日 | ||
7時間55分 | 112日 | 263日 | ||
7時間50分 | 99日 | 266日 | ||
7時間45分 | 96日 | 269日 | ||
7時間40分 | 93日 | 272日 | ||
7時間35分 | 90日 | 275日 | ||
7時間30分 | 87日 | 278日 |
所定労働時間を5分減らすと、年間の休日を3日ずつ減らしていくことができることがわかります。
1年変形では年間休日は85日必要
表を延長して、7時間25分にして84日としたとします。
総枠には収まっていますが、採用できません。
実は、1年の変形労働時間を採用する場合、年間の休日は最低でも85日という決まりがあるのです。
この85という数字は、隔週週休2日(52日+26日)及びその他の休日(7日)の合計からきているといわれています。
冒頭のご相談ですが、1日の労働時間を7時間30分とすれば、休日は85ではなく87日とるようにしなければなりません。85日以上確保できないというのであれば、1日の労働時間を7時間20分として、法律がクリアするしかありません。
この場合、7時間20分×(365-85)で、年間総労働時間は2053.3時間となります。85日の休日確保という制約のため、1年間の総労働時間では2,085を下回る2,053という労働時間になります。
月給者に残業代を払うときの時間単価は「1カ月の平均の所定労働時間」で割って出し
ますので、1年の総労働時間の数字が小さいと、連動して1カ月の所定労働時間が小さな数字となり、時間単価が少し高くなってしまいます。
1年85日も休めない場合は
年間の休日が85日も確保できない場合は、1カ月変形の労働時間制を考えましょう。
毎週日曜日と月2回の土曜日を所定休日とすると1カ月の所定休日は6日で、年間休日は72日です。これは1日の所定労働時間を7時間にすることで法をクリアできます。
31日の月の労働時間=7×(31-6)=175時間
(31日の月の上限時間177時間を下回っている)
30日の月の労働時間=7×(30-6)=168時間
(30日の月の上限時間171時間を下回っている)
28日の月の労働時間=7×(28-6)=154時間
(28日の月の上限時間160時間を下回っている)
1日8時間の場合の月の休日
月の労働時間の限度時間は40時間×月の暦日数÷7で計算されるので、1日の所定労働時間が8時間の場合、1カ月変形では31日の月も30の日も最低9日の休日が必要になります(8日で足りるのは28日の月だけです)。
31日の月の労働時間=8×(31-9)=176時間
30日の月の労働時間=8×(30-9)=168時間
28日の月の労働時間=8×(28-8)=160時間
1カ月9日の休日が年間11回、あと1回8日ですと1年では107日の休日となります。
1年変形を採用すれば年間休日105日ですみますが、1カ月変形では107日必要ということです。
1年変形は届け出が必要
1年単位の変形労働時間制を採用するには、所定の労使協定を結んで、毎年労働基準
監督署に届け出が必要です。
1カ月変形は就業規則などにその旨記載され、かつ、始・終業時刻並びに各日・各週の所定労働時間が特定されていれば、届出の必要はありません。
法が求めるピッタリを抑えること
《年次有給休暇の取得を促進する。》そのため、来年度から法改正も行われます。
会社が所定休日を多く設定することは働く人には望ましいことですが、すべての労働者には年次有給休暇を請求する権利があり、今後は請求する人が増えることが予想されます。所定休日を多くしても、年次有給休暇の請求を制限することはできません。
年次有給休暇の取得率を上げることは今後ますます求められます。休日について、どこまで法律が求めているのかをまずは正しく理解しておきましょう。
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