「65歳になった人を雇用しましたが、雇用保険料はどうするんでしたっけ?」
65歳を過ぎた人を新たに雇用しても雇用保険に加入することはできません。雇用保険料の負担もありませんが、給付も受けられません。失業しても手当を受けることができません。
この制度、来年度改正が確実になってきました。
重要ポイント
雇用状況の変化を受けて、65歳過ぎの人の雇用保険加入が可能となる見込みである。
雇用保険制度の役割
労働者が失業したとき、生活に困ることがないよう必要な給付をすることが雇用保険法の大きな目的です。
憲法27条第1項は、年齢による差をもうけることなく、すべての国民に勤労権を保障しています。国は労働者が労働の機会を得られるように労働市場の体制を整え、労働の機会を得られない労働者に対しては生活を保障する義務を負います。
雇用保険法は「労働の機会を得られない労働者に対し生活保障する」という目的があります
雇用保険に加入する人
保険制度ですから加入するには要件があり、保険料を負担して、給付を受けることができます。
一時的にお金がほしくて働く人や昼間の学生に雇用保険制度は関係がありません。
加入要件には、所定労働時間の長さや継続して雇用される見込みはどうかという基準があり、数回適用の基準が改正されました。
現在は
(1)所定労働時間が週20時間以上
(2)雇用期間が31日以上(見込み)
の場合、雇用保険に加入します。
雇用保険の失業給付
失業給付(雇用保険法では、求職者給付の基本手当といいます)は1年以上雇用保険に加入していて失業すると受けられます。
働いていた時の賃金日額の5割から8割のお金(基本手当)が、90日から150日間(自己都合の場合)もらうことができます。
65歳過ぎると
この加入要件や給付日数は65歳を過ぎて新たに雇用された人には当てはまりません。
65歳前から同じ会社で引き続き働き続ける場合は雇用保険の被保険者(高年齢継続被保険者)となり続けます。
また64歳を超えた人の雇用保険料は労使ともに免除されています。
65歳前から働いていて、65歳を過ぎて失業した場合、失業給付は65歳前とは全く異なり、基本手当の30日分か50日分の一時金(高年齢求職者給付金)となります。
その後再就職をしても雇用保険に加入することはできません。
65歳で特別扱いの理由
現在の雇用保険の制度は昭和59年の改正によるものです。
65歳以上を特別な扱いとした理由は以下です。
(1)65歳以上の者については、労働生活から引退する者が大半である。
(2)65歳以上の者については、就業を希望する場合でも短時間就労等が多い。
(3)65歳以降新たにフルタイムの仕事に就きその後離職してフルタイム就労を希望する者はきわめて少ない。
また、基本手当の支給は、受給資格者が雇用保険の被保険者となる雇用を希望するという前提になっていて、公共職業案安定所で4週間に1回ずつ認定を受け職業紹介を受けるというシステムになっていますが、65歳以上の離職者にはこのシステムが合理的でないとされたのです。
昭和59年と現在の状況
昭和59年当時と現在を比べてみると、65歳以上の雇用者数は71万人だったの対し、320万人4.5倍になっています。65歳以上の新規求職者数は84千件だったのに対し、431千件と5倍以上になっています。
平均寿命の延び、年金受給年齢の引き上げ、不十分な年金額など雇用環境は激変しています。労働力不足の面からも65歳以上の方への期待が高まっています。
予定されている改正の内容
雇用保険の改正案では、65歳以上の高齢者が新規で雇用保険に加入できるようになります。
加入すると失業した場合、一時金として基本手当の50日分(最大)が支給されます。
65歳以上の者については数年間、労使が負担する保険料が免除される予定です。64歳を超えた人の雇用保険料が免除されていますが、同様の扱いとされます。
一時金(高年齢求職者給付金)をもらっても受給している年金が減額されることはありません。
あくまでも求職の意思がある人に支給される給付金なので、求職活動については内容や活動日等を申告してもらい、確認を厳格にして不正受給を防止する対策がとられるといいます。
雇用保険の保険料
雇用保険の保険料は従業員(被保険者)が千分の5を負担し、事業主が千分の8.5を負担します。(建設の事業、農林水産・清酒製造の事業では料率が違います)
賞与を支払ったときにも雇用保険料はかかってきますが、基本手当の金額を算出するときには賞与分は考慮されません。
失業等の給付に関しては千分の5ずつの保険料が使われ、雇用保険二事業(雇用安定事業および能力開発事業)に事業主のみが負担している千分の3.5の保険料が充てられています。
雇用保険の財政
労使が折半で負担している失業等の給付の財政の積立金の残高は過去最高の6兆2,856億円(平成26年度末)となっています。
平成13年には失業保険の受給者が111万人で14年の積立残高は4億円まで減りましたが、昨年度は失業保険の受給者が47万人にまで下がったことが残高増の原因です。
各種の助成金の財源ともなっている雇用保険二事業の財政も8.3億円の残高と安定した状況になっています。
参考: 2015年11月25日第108回 労働政策審議会 雇用保険部会資料
ト ピ ッ ク ス マイナンバーQ&A 内閣官房HP 11月25日
マイナンバーの通知カードの配達が遅れていると報道されています。内閣官房のホームページではよくある質問を整理し回答しています。いくつか抜粋します。
Q 個人番号カードが身分証明書として利用されると、裏面のマイナンバーが見えてしまうおそれがありますが問題はないのでしょうか?
A ご指摘のような懸念に配慮し、個人番号カードは裏面のマイナンバーなどを隠すビニールケースに入れて交付されます。
Q マイナンバーの提供を拒否された場合、どうすればいいですか?
A 社会保障や税の決められた書類にマイナンバーを記載することは法令で定められた義務であることを周知し、提供を求めてください。
税の調書について国税庁は提供を受けられない場合、提供を求めた経緯等を記録、保存するなどすれば、マイナンバーの記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないことはありません。
シリーズ 労働関係の言葉 ~ 内 定 ~
在学中に、「卒業したら労働契約を結ぶ」約束することを「内定」という。【始期付 解約権留保付労働契約】ともいわれる。
新卒一括採用という雇用慣行の中で、内定取り消しは解雇と考えられている。
【スタッフからひとこと】 産前産後の手続きはややこしい
出産手当金は、産前産後期間で出産のため会社を休み、給与の支払いを受けない期間に支給されます。
産前産後の社会保険料免除は、産前の年休処理などで給与の支払いがあっても労務に従事していなければ免除期間になります。
【 労働基準監督署の調査 】 業務日誌 11月□日
「労働法令が順守されているかどうか、確認させていただきたい」
労働基準監督官は労働関係法令順守のための警察官のような役割をしています。調査では、労働者名簿、労働条件通知書、時間外・休日労働協定届、就業規則、出勤簿・タイムカード(時間外労働の記録)、賃金台帳などの提示が求められます。
学生アルバイトがいる会社では、学生に過重労働をさせていないかチェックされるようになっています。ブラックバイトが社会問題になっていることが背景にあるようです。
タイムカードや賃金台帳は従来3カ月分の提示でしたが、最近では6カ月分が求められます。これは過重労働がないかの調査のためということでした。特別条項付の時間外・休日労働届を出している場合、3カ月のタイムカードでは時間外労働時間の実態が把握しずらいためです。
年次有給休暇の管理簿の提示を求められるようになっていることも、最近の特徴です。定期健康診断も実施するだけでなく、異常の所見のある労働者には医師の意見聴取を行うようにとの是正指導もなされます。
サービス業従事者が増える中、監督署の調査も安全から健康、過重労働防止に変化しているようです。