「男女雇用機会均等法及びパートタイム労働
法に基づく報告を徴収したい」・「育児・介護休業法に基づいて報告を徴収したい」 といった書面が労働局長名で会社に届くことがあります。
都道府県の労働局長の印が押されて届く書面ですが、担当部署は労働局の雇用均等室です。
均等室の調査にはどのように対応すればよいのでしょう。
重要ポイント
均等法は努力義務だったことが義務となるなど改正されてきました。
パート法や育介法も社会的な要請を受けて改正されています。それに伴い均等室の報告徴収も増えています。
雇用均等室とは
雇用均等室は各都道府県ごとにある労働局の機関で、均等法などに係る行政を取り扱っています。
労働省(厚生労働省ではありませんでした)発足当時、婦人問題と年少労働者の問題を扱う組織として本省に婦人少年局ができ、下部機関として都道府県労働局に婦人少年室 が置かれました。その後婦人少年室は女性少年室と名称を変え、さらに現在の雇用均等室となっています。
均等室の扱う法律
雇用均等室の取り扱う主な法律は男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法です。
雇用均等室の業務
雇用均等室の業務は以下が主であるとされています。
・均等法等上記の3つの法律の周知徹底
・法律についての事業主への指導
・労働者や事業主からの法律、助成金制度、トラブル等に関する相談受付
・説明会、セミナー等の開催
・労働者と事業主との間の紛争解決援助
均等室の職員
都道府県労働局の雇用均等室の職員には常勤と非常勤がいます。
常勤職員としては雇用均等室室長、地方機会均等指導官、地方女性労働者福祉専門官などで、そのほかに、労働局長により任用(嘱託)された、任期1年の非常勤の国家公務員である雇用均等指導員などが配置されています。社会保険労務士の資格を持つ指導員もいます。
均等法の報告徴収
均等法29条第1項は「厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる」と定めており、これが報告徴収を求めるときの根拠となっています。会社の対応を依頼する文書には、この条文番号が書かれています。
パートタイム労働法の報告徴収
パート法18条1項は「短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるとき」に報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができると定めています。
育児・介護休業法の報告徴収
育介法56条は均等法の29条と同様に、法律の施行に関し必要があると認めるとき、報告を求め、助言、指導若しくは勧告をすることができると定めています。報告徴収にあたっては、ヒアリング票があらかじめ示され、その内容に沿って調査が行われます。
均等法が求めていること
男女雇用機会均等法は、
・性別を理由とする、採用や定年や解雇の禁止
・間接差別(性別以外の要件であっても、実質的に性差別となるおそれがある措置)の禁止
・職場におけるセクシャルハラスメント防止措置義務
などを定めています。
パートタイム労働法が求めていること
パートタイム労働法は、通常の労働者との待遇が均衡のとれたものであることを求めています。
労働時間が短い労働者であっても、通常の労働者と同様の教育訓練の実施を求めています。(努力義務)
パートタイム労働者の雇い入れ時には、労基法の求める労働条件の明示の条項に加えて、
「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」を明示する義務が課せられています。
育児・介護休業法が求めていること
育介法は、育児休業・介護休業の付与義務のほか、子の看護休暇・介護休暇の付与義務を定めています。該当者から請求があった場合には、時間外労働の制限や深夜労働の制限を課しています。また、短時間勤務措置も義務です。
報告徴収があった場合には、会社の育児・介護休業規程が調査員にチェックされます。
均等室が来るのはどんなとき
「なぜうちの会社に?」よく受けるご質問です。
行政指導が入るきっかけは「労働者からの申し立て、第三者からの情報」に基づく場合と、均等室の「権限」として行われる場合があります。
違反があると・・・
報告徴収を受けて違反や望ましくない状況があると、「助言」、改善されないと「指導」を受けることになり、さらに改善がないと「勧告」が行われます。
勧告を受けても従わなかった場合には、企業名公表の対象となるとしています。
報告の求めに応じなかったり、虚偽の報告を行った事業主に対してはそれぞれ20万円以下の過料が科されると定められています。(パート法は20万円でなく10万円)
なお、過料とは、行政上の秩序に障害を与える危険がある義務違反に対して科される金銭的制裁(秩序罰)です。
初めての企業名公表事案
平成27年9月、均等法の違反があった事業所名が公表されました。均等法違反の企業名公表は初めてのことでした。
妊娠を理由に女性労働者を解雇し、解雇を撤回しなかった茨城県の医療法人の名前が公表されました。3月に茨城県労働局長による助言、指導にも是正報告がなく、5月の勧告も是正がされなかったため7月に厚生労働大臣による勧告書が交付されました。それでも是正報告がなかったという経緯での公表でした。
違反条項は、均等法第9条3項でした。
妊娠・出産を理由とする解雇その他不利益取り扱いは禁止されています。
均等室による行政指導の実施状況は、厚労省のHPで確認することができます。
ト ピ ッ ク ス 雇用保険の届出にマイナンバ-を記載 厚労省
平成28年1月から雇用保険の届出でマイナンバーの記載が求められます。
①事業主が個人番号関係事務実施者として提出するもの(事業主が本人確認を行えばよいもの)
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届
②事業主が従業員の代理人として提出するもの(ハローワークにおいて本人確認を行うもの)
・高年齢雇用継続給付受給資格確認票、初回の高年齢雇用継続給付支給申請書
・育児休業給付受給資格確認票、初回の育児休業給付金支給申請書介護休業給付金支給申請書
②の業務は請求人が従業員本人であるため、事業主は代理人となり、ハローワークでは本人確認をするということになるのです。詳細は厚労省HPでご確認ください。
労働関係の言葉 ~ 正しい法律の名前 ~
法律にはカタカナが使われることが少ない。
パートタイム労働法といわれる法律は正式には「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、均等法は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」、育介法は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」・・・名前が長すぎて正確に覚えられない。
【スタッフからひとこと】 育児休業を1年以上とる手続
育児休業給付金を子が1歳過ぎても受給したいときは、保育園に入れないという、行政が出した「保育園入園不承諾書」が必要です。入園不承諾書は、保育利用の開始希望日の前の月の1日から25日の間に育園のある区役所などの児童福祉係に申請します。
申請後1週間後ぐらいで郵送で「入園不承諾書」が届きます。
生後11カ月くらいになったら、保育園に入れるかどうか本人に確認を取ってもらいましょう。
【 60歳を過ぎてもらう高年齢雇用継続給付金について 】 業務日誌
「60歳になる従業員がいるので、職安からもらえるお金や、年金について話をしてほしい」
このようなご依頼を受けて、従業員本人や会社の担当者の方に制度の説明をすることがよくあります。
60歳のときの賃金(賞与は除く)の75%未満に月額賃金が下がるともらうことができ、61%に低下した時に一番有利にもらえるのが雇用保険の高年齢雇用継続給付金です。
たとえば60歳の時に40万円で60%の24万円に低下すると下がった24万円の15%の36,000円の給付金を5年間もらうことが可能です。もし60歳時に20万円であれば60%が12万円、その15%の18,000円です。
61%以下に低下の場合の給付金は下がった金額に対し一律15%なので、60歳のときの賃金が高いと、5年間にわたり大変有利に給付金をもらうことができます。20万円の人の賃金を15万円に下げてもこの給付金は75%の低下なので”零”です。24万円の給与の人に36,000円支給し、15万円の人に支給しないのです。
雇用保険の基本手当(失業給付)は失業前の賃金が高ければ基本手当の割合を低めとし、低ければ高めに計算する方法がとられて、失業時の生活を保障する仕組みとなっています。
60歳から年金がもらえなくなる今、賃金の低い人に配慮を欠くこの給付金の計算方法に疑問を感じます。