介護休業法が変わります

 育児休業をとる人は多くなっていても、介護休業はまだまだ取得実績が少ないのではないかと思います。
 介護のために離職する人は年間10万人以上
と伝えられています。
 8月から介護休業をしたときの給付率が上がり、来年1月から介護休業をとりやすくなるような法改正が行われます。

重要ポイント

 平成29年1月1日から介護休業法が改正され、休業が今までよりとりやすくなります。
 介護の対象家族は高齢者とは限りません。
 常時介護が続くことも介護休業の要件です。
 介護休業法改正を前に、介護休業について誤解のないようにしておくことが重要です。

介護休業制度の意味

 介護休業制度があるということは、介護休業が労働者の権利として保障されていることを意味します。
 法に定められた要件を満たした労働者は、法で定めた手続きにより、休みの意思表示をすれば介護休業をとることができます。事業主はこの申し出を拒むことはできません。介護休業をとりたいといったことを理由に、解
雇その他の不利益な取り扱いをすることはできません。
 労働者は、介護休業の間、就労義務が免除されます。
 法の大きな目的は家族の介護を行う労働者の雇用の継続です。

介護休業の要件

 権利として就労が免除されるのですから、法は対象となる家族の範囲や、対象家族の健康状態について細かく定めています。
 介護が必要な家族がいること、介護休業の申出には、その状態が一定期間継続するものでなければなりません。労働者がその家族を自ら実際に介護し、そのために休業をするということでなければなりません。
 法定の要件を満たした労働者が、休業を申し出ることにより、雇用関係を継続したまま介護休業をとることが出来ます。

介護休業が求める要介護状態とは

 要介護状態とは負傷、疾病又は身体もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態をいいます。短期の傷病等の介護は対象としていません。常時介護を必要とする状態については、
歩行・排泄・食事等の日常生活の動作にどの程度の介助が必要なのか、徘徊や火の扱いなどの行動はどうかという観点から常時介護の必要性を判断する基準が通達で客観的に示されています。
 労働者が休業を申し出ても、対象家族が常時介護の状態にあり、状態が2週間以上続くかどうか、事業主は確認する必要があります。

対象家族の範囲

 介護対象者は以下で、高齢者に限りません。

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 配偶者の父母
  4. 同居し、かつ、扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫

 1~4は同居が要件になっていません。
 法律が求める対象者は、上記ですが、会社が範囲を広げることはもちろんできます。
 「その他会社が認めた者」を上記に加えている会社が多いようです。
 なお、対象家族の範囲の見直しが予定されています。

休業申出

 介護休業の申出は、原則として休業開始予定日の2週間前までに、休業開始予定日および休業終了予定日、対象家族が要介護状態であることを明記して書面で(ファックス等可)申し出ます。事業主は、対象家族が要介護状態であることなどを証明する書類の提出を求めることが出来ます。

介護休業の分割取得

 現在介護休業は介護を必要とする家族1人につき、通算93日まで原則1回限り取得可能ですが、改正後、対象家族1人につき通算93日まで、3回を限度として、介護休業を分割してとることができるようになります。

介護休暇の取得単位の柔軟化

 平成22年の改正で、介護休暇制度ができました。休業に比べて取得が容易ですが、年5日までです。介護休業とは別に、介護が必要な状態にある家族の介護その他の世話を行う労働者は、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、介護その他の世話を行うための休暇が取得できます。改正後は半日(所定労動時間の2分の1)単位での取得が可能となります。介護休暇も利用しやすくなりそうです。

介護のための所定労働時間の短縮措置等

 介護のための所定労働時間の短縮措置について、現在は介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能ですが、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となります。

介護のための所定外労働の制限

 対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまで、残業の免除が受けられる制度が新設されます。

2歳の子の病気の1カ月休業は育児か介護か

 育児休業は、原則として1歳未満の子を養育(同居し監護すること)するための休業です。育児休業の場合、子の健康状態についての制約はありません。
 2歳の子の病気やけがのために1カ月休業したいのなら、介護休業となります。
 小学校就学の始期までは、年間の介護休暇を5日、子の看護休暇を5日、合計で10日を利用することもできます。

介護休業給付金が67%に大幅アップ

 介護休業を取得した場合、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
 休業開始前賃金の給付割合は40%ですが、平成28年8月1日以降に開始する介護休業から介護休業給付金の支給率が67%に上がります。
 介護休業給付金は支給単位期間(介護休業開始日から1カ月ごとの期間)中に就労していると認められる日が10日以下の場合に支給対象となります。
 なお、同一の対象家族について介護休業給付金を受けたことがある場合であっても、要介護状態が異なることにより再び取得した介護休業についても介護休業給付金の対象となります。

そ の 他 の 記 事

 ト ピ ッ ク ス  2割を超える企業で月80時間超残業の実態

企業アンケート調査

 厚生労働省は、「過労死等実態把握のための調査研究報告」を発表しました。
 正規雇用従業員の1カ月の時間外労働時間が、「80時間超100時間以下」で10.8%、「100時間超」で11.9%、合計22.7%であることがわかりました。従業員規模が1000人以上の企業においては、半数を超える56.9%の企業で80時間超の残業を行う労働者がいました。時間外労働の大きな理由は、顧客からの不規則な要望に対応する必要があるため、業務量が多いため、仕事の繁閑の差が大きいためがあげられています。
 脳・心臓疾患による休職者が入る企業の割合は9.7%、メンタルへルス不調による休職者がいる企業の割合は26.6%でした。
 長時間労働、強いストレス、メンタル不調・・・まだまだ過労死防止への道のりは遠いようです。

 労務のことば     ~退職時の年休~ 

 年次有給休暇を買い上げることを理由に、請求された年次有給休暇を与えないことは違法となります。
 退職日を先に延ばして年次有給休暇を請求し、退職日まで出勤しないという退職予定者には、買取ることも検討すべ きでしょう。

 【スタッフからひとこと】   住所は一つですか?

 平成28年9月から社会保険の資格取得時に基礎年金番号と住民票コードを結び付けて本人確認が行われるようになります。住所欄に記載されている住所で住民票コードが確認できない場合は、事業主宛に住民票上の住所等の照会がされます。
 資格取得時には、郵便物が届く住所と住民票上の住所が異なることがないか確認し、異なる場合は、備考欄に住民票上の住所を記載しましょう。

 【 正しく理解したい、36協定 】 研修講師を務めました  業務日誌 7月○日

 「労働関係の基本的なことをわかりやすく話してくれないか」
 人事や総務関係の担当者の集まりで、講師を依頼されたので、それでは労働関係の基本、36協定の話をしましょうということになりました。
 なぜ36協定を結ばなければならないのか、労働基準法の基本的な考えかたから説明しました。
 36協定は結んでいても監督署に届け出をしていなければダメで、届け出をすることが時間外労働・休日労働が認められる要件であることなどは、意外と知られていませんでした。就業規則は周知が重要で、届け出していなくても有効ということとの混同でしょうか。
 労働者代表の選出も重要なことで、民主的な手続きを踏まないで、真に労働者の過半数を代表する者でなかった者を労働者代表にしていた36協定が無効とされた判例を紹介しました。 また、協定を締結し届け出をしただけではダメ、事業場の見やすい場所に掲示・備え付ける等をして周知を図り、守ってこそ意味があるのですとも。
 毎年同じものを内容をよく確認しないで届出してはいませんか?