年金を捨てていませんか?

「役員報酬をもらっているので」年金はもらっていないという社長さんは多くいらっしゃいます。
年金の仕組みを理解した上でなら良いのです。が、意外と多いのが、どうせもらえないなどという年金についての思い込み。
コストパフォーマンスはどうかという目で、年金を考えてみると・・・。

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■ ひたすら高い厚生年金をかけてきたA社長
今年65歳のA社長。20歳くらいから厚生年金をかけ続けてきました。
やがて役員になり、60歳になって年金をもらう手続きはしたものの、役員報酬が60万近くあり、もちろん年金は支給停止。1円ももらったことはありません。

先日65歳となり、後継者の息子も力をつけてきたので、年金の受給を考えるようになり、調べてみました。
昭和18年生まれの社長です。年金の通知書には、老齢厚生年金がおよそ202万円、老齢基礎年金は80万円とありました。

■ 60から65までの年金

60歳で退職していたとするとどのくらい年金がもらえたのでしょうか。
A社長の場合、およそ次のようになります。

60歳 61歳 62歳 63歳 64歳
報酬比例の年金 180万円 180万円 180万円 180万円 180万円
定額部分の年金 0 0 80万円 80万円 80万円

 

「報酬比例」で捨てた年金: 180万の5年分900万円。「定額」部分は80万の3年分で240万。合わせて1,140万円を捨てていたことになります。
他方この間に掛けていた保険料は、役員報酬月62万の掛け金は厚生年金の限度額上限月額約45,000円で、5年分合計で270万円、会社負担分合わせるとなんと540万円もの保険料をかけていたわけです。

■ 65歳で年金はどのくらい増えるのか

それだけの保険料を払ったのだから、65歳で受け取る年金は増えるだろう・・・ハイ確かに、増えますがその額は年間約22万円です。支払ったのは540万ですから、これを22万で割ると25年。90歳以上生きれば、元がとれます。

■ 年金が減らされる仕組み その1

60歳から64歳までの年金の減らされる仕組みは次のとおりです。

  1. 役員報酬と年金の月額が28万円以下⇒全額支給
  2. 役員報酬と年金の月額の合計が28万円超⇒超過分の2分の1がカット
  3. 役員報酬が48万円を超える⇒超過分は全額カット

A社長の場合、60歳のとき報酬を12万円に下げていれば、年金は全額もらえたことになります。(62歳になると年金が増えるため、同じ12万円では、年金は減らされてしまいますが。)
60歳で満額もらうには新入社員以下の報酬に甘んじなければならないわけですが・・・、かけ捨ててしまう年金を思い「報酬減額分は社員に」という考え方もあるでしょう。

 

■ 年金が減らされる仕組み その2

この仕組みが65歳から大きく変わります。

  • 老齢基礎年金は役員報酬にかかわらず全額支給
  • 役員報酬と厚生年金の月額の合計が48万円以下⇒全額支給
  • 役員報酬と厚生年金の月額の合計が48万万円超⇒超過分の2分の1がカット

これなら誰だって、報酬を下げても年金は満額もらうでしょう?。

 

■ 応用問題: A社長はどうすれば?

◎ 役員報酬62万円のまま何もしない
減らされる仕組みその2の(3)により減らされる年金は15.4万円となり、受け取る年金は基礎年金(80万円)とあわせて年額100万円を切り、月額では8万円程度になります。
他方毎月の保険料は46,000円ですから、会社負担と合わせると、受け取る年金を大きく上回ることになります。

◎ 報酬を62万円⇒30万円に下げる

 この場合、202万円の年金の月額は16.8万円で報酬との合計が「48万円」に届かないので、202万円の厚生年金と80万円の基礎年金、あわせて282万円の年金はそのまま受給でき、45年もかけた厚生年金を満額手にすることがでる上に、毎月負担する保険料も4,6000円⇒23,000円に下がります。(※詳しい計算はPDFでご覧ください)

■ 役員報酬に付きまとう厚生年金保険料の負担

65歳になって年金をもらっても、厚生年金保険料を支払わなければなりません(「もらっているのに負担もある」この仕組みは70歳まで続きます)。
70歳になると保険料負担はなくなりますが、60歳代後半と同じ条件で年金の支給停止は続きます。だから、今のまま62万の報酬であれば、毎年年金を捨て続けることになります。

■ 報酬を下げても年金はすぐにもらえない
役員報酬を変更するには、取締役会等で報酬の変更をする手続きを踏まなければなりませんが、それを経て仮に4月から役員報酬を変更したとしても、社会保険の改定は3ヵ月後の7月からとなりますので、7月になって初めて社会保険の報酬が変更でき、「適正な」年金の受給は7月分からになります。 次に、年金は偶数月の15日に前2ヶ月分が支給されますので、「7月分」の年金は8月15日に受け取ることになります。

◎順調に手続きをしても、下がった報酬に対応した下がった保険料になるのは4ヵ月後、年金を手にできるのは5ヵ月後です。 早めに対策を打ちましょう。
(※ この説明は、「賞与の支給はない」ことを前提に書いています。)

その他の情報

出産育児一時金が38万円にアップ

平成21年1月1日から、出産したときにもらえるお金=出産育児一時金が今年の出産から38万円に上がりました。
今回の引き上げは、分娩機関が「産科医療補償責任保険」の掛金を支払うため、掛金相当額の3万円をアップさせたというもの。支払が多くなった分増額しただけで・・・
知っておきたいのは、出産育児一時金は事前申請できるということです。
かつては〔 出産する⇒退院のときに医療機関に支払をする⇒あとから出産育児一時金が振り込まれる 〕でした。これを事前申請すると、出産育児一時金が直接医療機関に支払われます。 そこで、医療機関への支払額が38万円以上である場合、出産育児一時金の全額が医療機関に支払われ、不足分を窓口で支払いますが、38万円未満のときは請求額が医療機関に支払われ、差額が本人口座に振り込まれます。
出産予定日まで1か月以内に申請します。期限に要注意。

~育児休業中の社会保険料の免除~

“保険料の免除は育児休業の開始月から。”この「育児休業の開始月」は、出産の翌日から56日たった日の翌日の属する月です。

  1. 10月4日出産のA子さんの産後56日経過の日は11月29日。11月30日から育児休業なので11月が育児休業の開始月になり、保険料が免除となります。
  2. 10月5日出産(1日遅れ)のB子さんは12月1日から育児休業に入るので12月分から(1月遅れ)免除となります。

『育児休業等取得者申出書』を社会保険事務所に提出すると免除されます。

研修時間は労働時間?

参加が義務づけられる研修は労働時間。
参加が任意であれば労働時間ではない。
明確な指揮命令があったり、参加しないと労働者が不利益を受けるなど、参加が義務付けられている場合は、使用者の指揮命令の下に労働力を提供していると考えられ労働時間となりますが、参加が任意であれば労働時間になりません。
◎労働安全衛生法で義務付けられている安全衛生教育の時間は労働時間です。

出版記念パーティー  業務日誌より

ある会でご一緒した税理士の方が本を出版され、出版記念の講演会とパーティーをするというので、これも何かのご縁だと参加した。
心に深く残ったのは、顧問先企業の様子を写したスライド映像だ。
順調に売り上げを伸ばしてきたある会社が、倒産の危機に・・・信頼してくれる社員とともに業績回復した様子が映し出された。
サラリーマンから起業した社長と家族の物語もあった。なかなか事業が軌道に乗らず、子どもにおもちゃも我慢させる状況が続く・・・夫を信じて支えてきた奥様、そのときは友達が持っているゲーム機をもてない暮らしをつらく思った子どもが、今は父の働く姿から多くを学んだと回想するメッセージが映像に織り込まれ、目頭が熱くなった。
上映後、物語の主人公の皆様が登壇され、大きな拍手が巻き起こった。感動は身近にある。