フリーランスに仕事を頼むとき

★★ フリーランスに仕事を頼むとき ★★

テレワークが増えています。

テレワークは出社をしない自由な働き方のように思われがちですが、業務を自
宅で行うだけなので、労働時間を管理された労働者です。

では労働時間に縛られずに自由に仕事をやってもらった方がお互いによいの
では・・・

今回はフリーランスに仕事を依頼するとき何に気をつければよいか考えます。

■ 重要ポイント ────────────────────────

フリーランスは労働法で保護されない働き方です。

フリーランスに仕事を依頼するときは「雇用」でない契約内容とするとともに、
著作権や知的財産権についても明記しておくことが重要です。もし実態が契約
内容と異り雇用になっていると労働関係法令(使用者には罰則の適用がある)
が適用されます。

■ フリーランスのガイドライン────────────────────────

令和3年3月26日、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するための
ガイドライン」が公表されました。

内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で出されたガイド
ラインです。労働関係以外の法律もフリーランスが安心して働ける環境整備に
は欠かせないということです。

■ フリーランスの定義 ────────────────────────

ガイドラインにおいて「フリーランス」とは、「実店舗がなく、雇人もいない
自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得
る者」と定義されています。

■ 適用される法律 ────────────────────────

フリーランスとの取引には、独占禁止法や下請法が広く適用されます。

ただし、フリーランスとして業務を行っていても、現行法上「雇用」に該当す
る場合には、労働関係法令が適用され、独占禁止法や下請法上の問題としない
ことになります。

■ 労働基準法の「労働者」は労働の実態で判断 ───────────────

フリーランスとして働いてもらうときは、請負契約や業務委任契約など労働契
約ではない契約書を交わし、働き方の実態も「労働者」に該当しないようにす
ることが重要です。

■ 労働者とは(1)使用従属性 ───────────────────

労働者かどうかの重要な判断基準は「使用従属性」の有無です。

① 「指揮監督下の労働」であること

a 仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無

フリーランスとして独立して仕事をしていれば、仕事を選ぶことができる
はずです。フリーランスには仕事を断る自由があります。

b 業務遂行上の指揮監督の有無

フリーランスとして仕事をしていれば、発注者等から仕事の細かなやり方
に指示を受けないでしょう。

c 拘束性の有無

フリーランスであれば、原則的には勤務場所と勤務時間に縛られていな
いはずです。

d 代替性の有無

発注者等から受けた仕事を、代役を立て、その代役の人にやってもらう
ことや、他の人に手伝ってもらうことが自らの判断で行うことができれば、発
注者と指揮監督関係になく、労働者性はないということになります。

② 「報酬の労務対償性」があること

労働者であれば労務を提供した時間に報酬が支払われます。時間給や日
給など時間を単位として報酬が支払われていれば、労働者となります。

フリーランスは時間ではなく「仕事の出来」で報酬をもらう契約です。

■ 労働者とは(2)「労働者性」 ──────────────────────

さらに労働者であれば次のような要素も考慮されます。

① 事業者性の有無
フリーランスであれば原則として仕事に必要な機械、器具等は自らが負担
します。

② 専属性の程度
フリーランスであれば特定の発注者に偏らず、複数の発注者等とかかわり
をもって仕事をしているでしょう。

このほか、「採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほ
とんど同様であること」「源泉徴収を行っていること」などは「労働者性」を
高めることになります。

フリーランスには消費税を上乗せして報酬を支払います。

■ 契約書は必ず締結する ────────────────────────

フリーランスには業務の発注時に取引条件(取引の対象となる役務等の具体
的内容や品質に係る評価の基準、納期、報酬額、支払い期日、支払い方法等)
を明確に記載した書面を交付します。

■ 「優越的地位の濫用」規制 ────────────────────────

発注者は、取引上フリーランスに優越しています。その地位を利用して正常な
商慣習に照らして不当に不利益を与えることは公正な競争を阻害する恐れがあ
るとして独占禁止法によって規制されています。

■ 独占禁止法・下請法上行ってはいけない行為 ─────────────────

以下の行為は問題となる行為です。

(1)報酬の支払い遅延(支払期日に報酬を支払わない、支払い日を遅らせる)

(2)報酬の減額(正当な理由なく契約で定めた額を減額する)

(3)著しく低い報酬の一方的な決定

(4)やり直しの要請

(5)一方的な発注取消し

(6)役務の成果物に係る一方的な取扱い(成果物に係る権利の取扱いを一方的に決定する)

(7)役務の成果物の受領拒否

(8)役務の成果物の返品

(9)不要な承認または役務の購入・利用強制

(10)不当な経済上の利益の提供要請

(11)合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定

(12)その他取引条件の一方的な設定・変更・実施

■優越的地位の濫用があると ────────────────────────

優越的地位の濫用に対しては、行政上の制裁として公正取引委員会による排除
措置命令(独禁法20条)がなされる場合等があります。

■優越的地位の濫用規制を考えた契約書 ───────────────────

フリーランスに業務を依頼する契約書には著作権に関する記載も必要でしょう。
知的財産権が発注内容に含まれ、これを譲渡し又は許諾する場合には、譲渡す
る権利の範囲、許諾する範囲を記載する必要があります。

※「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
令和3年3月26日を参考に書きました。