転倒災害が起きたら

★★ 転倒災害が起きたら ★★

『仕事中にうっかり転倒してケガをした社員がいる。病院に行くことになった
が、本人は自分の不注意で起こしたケガなので、会社に迷惑をかけたくないと
言っている・・・』

■ 重要ポイント ────────────────────────

業務災害が起きたときは迅速で適切な事務処理と再発防止への取組が重要です。

災害の中でも転倒災害は多く、「再発防止のための自主点検報告書」の提出を
求められることがあります。

■ 業務中のケガに健康保険証は使えない ───────────────────

病気やケガで病院等を受診することになったとき、その原因が業務であれば、
業務災害となり、労災保険が適用されます。

健康保険証を提示して治療を受けることができるのは、業務外の事由により病
気やケガをしたときに限られます。業務が原因の病気やケガのとき、健康保険
証は使えないのです。

■ 本人の不注意によるケガでも ────────────────────────

被災者が安全な行動をとらずにうっかりケガをしてしまっても業務中に起きた
ことなので業務災害です。

どちらの保険を使うかは、原因によって決まっていて選ぶことはできません。

■ 労災保険はすべての労働者に適用 ───────────────────────

労災保険には被保険者という概念はありません。

正社員ばかりでなくアルバイト、パート、有期契約労働者等どのような雇用契
約の者であっても適用されます。

■ 業務災害で病院等を受診するとき ───────────────────────

業務災害で病院等を受診する者に会社は「療養補償給付たる療養の給付請求書
(様式第5号)」を書いて渡します。薬局にも行くときはもう1枚様式第5号を
書いて渡します。

労災指定病院でなかった場合や治療用装具を現金で購入したような場合は、
費用を払った後で、領収書を添えて監督署にその費用を請求します。

■ 4日以上の休業だった場合 ────────────────────────

4日以上の休業が見込まれる場合は、「労働者死傷病報告」を労働基準監督
署に事故後遅滞なく提出します。

その後、休業した期間について休業補償給付支給申請書(様式第8号)により、
休業補償給付を受けることができます。様式第8号には「労働者死傷病報告」
を提出した日付を記載することになっています。8号は診察担当者の療養の期
間の証明が必要な書類です。

■ 手厚い休業補償 ────────────────────────

休業補償給付支給申請書は休業特別支給金支給申請書を兼ねています。労災
保険では、労働基準法上の休業補償給付に加えて休業特別支給金も受給するこ
とができるのです。

休業補償給付は平均賃金の6割で休業特別支給金は平均賃金の2割ですから、
被災労働者は休業1日当たり平均賃金の8割のお金を受け取ることができます。
様式に被災労働者の預金口座番号を記載し、後日その口座にお金が振り込まれ
ます。

■ 休業後3日間は事業主が支払う ──────────────────────

労災保険の休業補償給付は休業4日目から休業日について支給されます。

最初の3日間は待期期間として労災保険からは支給されませんから事業主が休
業の最初の日から3日間については休業補償として平均賃金の100分の60以上を
支給しなければなりません。

■ 休業補償は退職後も ────────────────────────

休業補償は同一傷病について、休業日が継続、ないし断続して続く限り、休業
日について支給されます。転院しても支給されます。

被災労働者が退職しても退職した後も要件に該当していれば支給されます。

■ 転倒災害の再発防止 ────────────────────────

転倒による休業は1か月近くになってしまいました。

労働基準監督署の安全衛生課から
「転倒災害の再発防止のための自主点検等報告書」が送られてきました。

■ 転倒災害は増えている ────────────────────────

転倒災害は最も多い労働災害です。休業4日以上の労働災害は約12万件ありま
すが、転倒災害は約2.6万件と最も多く発生しています。特に高年齢者ほど転
倒災害のリスクが増加し、転倒災害による休業期間は約6割が1か月以上となっ
ています。

転倒災害は、床に水や油が飛散しているなどの滑りやすい状態の放置、床の凹
凸や段差などつまずきやすい状態があること、大きな荷物を抱えるなど足元が
見えない状態になることなどが主な原因です。

転倒防止対策としては整理整頓・清掃清潔を徹底すること、足元を見えにくく
しないことや時間に余裕を持って行動すること、作業に適した靴を着用するこ
と、危険個所には転倒危険!のステッカーを張ることなどが考えられます。

(以上厚労省 「STOP!転倒災害プロジェクト」 パンフレットより)

■ 再発防止への取組を ────────────────────────

報告を受けたときは本人がうっかり転倒したとだけ思っていた事故でした。

災害防止のためのチェックシートに従ってチェックしてみると、転倒を防ぐ対
策が見えてきました。

「休業するようなケガ人が出たのは初めてだった・・・」という会社でしたが、
これを機に転倒以外の災害防止にも取り組んでほしいものです。