労基法違反とはどんなこと?

★★ 労基法違反とはどんなこと? ★★

労働基準監督署の調査で法令違反が指摘されることがあります。

いったいどんなことが法違反になるのでしょう。どんなことに気をつけて労
務管理しておけばよいのでしょう。

■ 重要ポイント ────────────────────────

労働基準監督署の調査で求められる書類、指摘されることが多い項目は決まっ
ています。

違反のない状態にしておきましょう。

■ いきなり監督官の訪問を受けることも ─────────────────────

労働基準監督署の調査には労働基準監督官が事業所に来て調査を受ける場合と、
監督署に事業主が帳簿を持参して出向いて調査を受ける場合(集合監督)があ
ります。

労働者からの申告があったり、労災事故があったりして調査が入る場合もあり
ますが、特にそのようなことがなくても調査依頼は来ます。

■ 監督署の調査で求められる書類 ────────────────────────

監督署の調査で求められる書類はつぎのようなものです。

(1)労働者名簿

(2)労働条件通知書

(3)就業規則(賃金規定等の別規程を含む)

(4)タイムカード等労働時間が確認できる書類

(5)賃金台帳、労働時間の管理簿

(6)時間外労働・休日労働に関する協定届(控)

(7)変形労働時間制を採用している場合その関係書類(労使協定、勤務割表等)

(8)年次有給休暇の管理簿・申請様式

(9)賃金控除に関する労使協定

(10)健康診断個人票

■ 労働者名簿 ────────────────────────

労働者名簿には次のことを記載しなければなりません。

(1)労働者の氏名、(2)生年月日 (3)履歴  (4)性別

(5)住所  (6)従事する業務の種 (7)雇入れの年月日

(8)退職・死亡の年月日及びその事由

■ 労働条件通知書 ────────────────────────

採用時には賃金、労働時間その他労働条件を書面で明示しなければなりません。

必ず明示しなければならない事項は、

(1)労働契約の期間

(2)有期労働契約の場合・・・更新する基準

(3)就業の場所・従事する業務の内容

(4)始業及び終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇

(5)賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切・支払いの時期に関する事項

(6)退職に関する事項

原則は書面による明示ですが、ファクシミリや電子メールも認められています。

■ 就業規則 ────────────────────────

常時労働者10人以上の事業所では就業規則の作成、届け出の義務があります。

支店や営業所で10人以上に該当すれば、本社で届出がしてあっても事業所ご
とに管轄の労基署に届出をしなければなりません。

■ タイムカード等 ────────────────────────

労働基準法に始業・終業時刻の記録を求めるような規定はありません。求めて
いるのは労働時間を適切に把握している資料です。

タイムカードでなくてもよいのですが、「タイムカードによる記録等の客観
的な方法その他の適切な方法で労働者の労働時間の状況を把握」していないと
安全衛生法第66条の8の3(安規第52条の7の3)の違反を指摘されてしまいます。

■ 賃金台帳の記載事項 ────────────────────────

賃金台帳には次のことを書いておかなければなりません。

(1)賃金計算の基礎となる事項 (2)賃金の額 (3)氏名 (4)性別 (5)賃金計算期間

(6)労働日数 (7)労働時間数 (8)時間外労働、休日労働及び深夜労働の労働時間数

(9)基本給、手当その他の賃金の種類ごとにその金額

(10)労使協定により賃金の一部を控除した場合はその金額

■ 時間外労働・休日労働に関する協定届 ────────────────────

時間外労働・休日労働に関する協定届は、法定労働時間を超える労働がある場
合に、事前に協定を締結し監督署に届け出が求められている重要な書類です。

協定を結んだ場合はその時間を超えて時間外労働をさせることはできないので、
一人でも労使協定の協定時間を超えて労働した者がいれば、「時間外労働に関
する協定で定める延長時間を超えて労働させていた。(労基法32条違反)」と
されてしまいます。

■ 健康診断個人票 ────────────────────────

労働安全衛生法は、使用者に対して、自ら雇用する労働者に健康診断を実施し
なければならないと規定しています(同法66条)。

定期健康診断の結果「異常の所見があると診断された労働者について、当
該労働者の健康を保持するために必要な措置について医師の意見を聴取しなけ
ればならない。」(安衛法66条の4)のですが、小規模の事業所の多くはこの
ことについて知らず、指摘されることが多い事項です。

■ 監督署の調査の意味 ────────────────────────

労働基準監督官は、「使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は
出頭を命ずることができる」立場です。

報告や出頭をしないと、30万円以下の罰金に処せられます。

■ 労働基準監督官の権限 ────────────────────────

労働基準監督官については、

「事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、
または使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。」
と労基法でその権限が定められています。

監督官の権限は労基法等の違反を是正ないし改善させることで、違反にはその
条文と違反事項、是正期日を書いた是正勧告書が渡されます。

法違反ではないが改善が求められる事項については、指導書が渡されます。

■ どのような法違反があるのか ────────────────────────

「定期監督等実施状況・法違反状況」は毎年発表されています。違反が確認
された法条の順位は毎年ほとんど変わりません。

違反で多いのは、労働時間(32・40条)、割増賃金(37条)、就業規則(89
条)、労働条件の明示(15条)、賃金台帳(108条)などです。