年次有給休暇の一斉付与

★★ 年次有給休暇の一斉付与 ★★
「年次有給休暇は4月1日に一斉に更新して付与しています。
就業規則は入社日ごとに付与するものになっていて、取扱いと合っていません。
どうしたらよいでしょうか。」

このような相談を受けました。

■ 重要ポイント ────────────────────────

年次有給休暇を一斉に付与する場合は、法律の要件を下回らないようにしなけ
ればなりません。また、短縮して取扱われた期間については「出勤したもの」
として取り扱わなければなりません。

■ 年次有給休暇の付与 ────────────────────────

「使用者は、その雇い入れの日から起算して6か月継続勤務し全労働日の8割
以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を
与えなければならない」

労働基準法39条第1項は上記のように定めています。
■ 年次有給休暇は労働者の大事な権利 ─────────────────────

「使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利
益な取り扱いをしないようにしなければならない」労基法136条

年次有給休暇を取得した労働者に不利益な取扱いをすることはできません。

■ 使用者に時季変更権はある ────────────────────────

「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に
おいては、他の時季にこれを与えることができる」労基法39条但し書き

ですから年次有給休暇の規定には時季変更権も定めておく必要があります。

■一斉付与の時は法律を上回らなければならない ──────────────────

入社日ごとに年次有給休暇の付与日が違うと管理が難しいので、4月1日や1
月1日などの日を決めて従業員全員の休暇を更新する場合、法律を上回るよう
な制度にしなければなりません。

■ 4月1日一斉付与の規定例 ────────────────────────

4月1日を基準日として付与する場合は入社日を4月1日以降9月30日までに
入社した者と、10月1日から3月31日までに入社した者の2種類に分ける
ことになります。

(1) 4月1日から9月30日までに入社した者
入社後最初に到来する10月1日に勤続6か月とみなし、翌年4月1日に勤続
1年6か月とみなし、勤続年数に応じて次のように付与する。
以下表略

(2)10月1日から3月31日までの間に入社した者
入社後最初に到来する4月1日に勤続6か月とみなし、以降勤続年数に応じて
下表のとおりとする。
以下表略
■ 12区分管理の方法も ────────────────────────

入社日によって年次有給休暇の付与日が異なると管理が大変だが、基準日を統
一すると入社間もない人の間で不公平感がある、また、入退社が多い会社では
法律を上回って付与することに抵抗があるということがあるかもしれません。

その場合は入社日にかかわらず入社した日の属する月の1日に入社したとみな
して年次有給休暇を管理するようにする方法があります。社員は入社日により
12に区分され、有給休暇が更新されることになります。

■ 一斉付与日と8割出勤要件 ────────────────────────

一斉付与のために短縮された期間は出勤率の算定上、全期間出勤したものとみ
なさなければなりません。労働者にはかなり有利な取扱いとすることになりま
す。

■ 年次有給休暇の5日の付与義務 ───────────────────────

2019年4月からすべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与さ
れる労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日
については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

年休を前倒しして10日付与する場合、使用者はその日から1年以内に5日の年
休を取得させなければなりません。

6カ月経過していなくても4月1日に10日付与したのであれば、4月1日から翌年
の3月31日までに年5日の年休を取得させなければなりません。

年次有給休暇のことでトラブルにならないようにしたいものです。