★★ 労使協定を考える ★★
長年雇用されて働いてきた人の中にも労使協定についてよく知らないという
人は多いのではないでしょうか。労使協定にもいろいろ種類があり、意味も異
なります。
■ 重要ポイント ────────────────────────
労使協定は労基法などの法令で作成が求められているが、届出が必要なもの
とそうでないものがある。罰則が免除される効力を有するものや私法的効力を
有するものがある。
■ 労使協定作成は法令で求められている ───────────────────
協定とは協議して決めることですから、協定にはいろいろあります。安全保
障協定、経済連携協定、災害時応援協定・・・
労使協定とは労働者と使用者の決めごとです。
労基法などで作成が求められている労使協定は、労基法その他の法令にかかれ
ている規制を免除してもらえる、あるいは罰則を免れる等機能があり、法令に
根拠がある場合に効力が認められます。
■ 代表的な労使協定=36協定 ────────────────────────
「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合
においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合にお
いては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、労働基準監督署
に届け出た場合においては、法定労働時間外又は法定休日に労働させることが
できる」労基法第36条
労使協定は労働者の過半数で組織する労働組合という組織があればその組織
と締結し、組合がない場合には労働者代表を選出してその代表と締結します。
労働組合という組織ではなく、労働者代表という個人と締結することがあるの
が労使協定です。
■ 36協定は届出をして効力が発生する ─────────────────────
36協定は協定を結んだだけでは効力が発生しません。管轄の労働基準監督署
に届出をして初めて効力が発生します。
4月1日からの労使協定であれば3月中に締結し届出を済ませておかなければ
なりません。36協定は法令により罰則で禁止されている行為を許容し、行為者
に罰が与えられなくなる「免罰効」があります。労使協定の効力は全事業場に
及びます。
■ 全労働者の過半数とは ────────────────────────
全労働者にはどのような人が含まれるのでしょう。
管理監督者など時間外・休日労働が問題とならない管理職も全労働者に含め
ます。そのほか、出向者、病欠者、長期出張者なども全労働者に含めなければ
なりません。
在宅ワーカーも「直近上位の事業場」の労働者数に参入しなければなりませ
ん。
派遣労働者は原則として派遣先の労働者には含まれません。
■ 過半数代表者 ────────────────────────
過半数代表者については、以下のことが求められています。
(1)労基法第41条第2項に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
(2)法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される
投票、挙手等の方法による手続により選出された者
(3)使用者の意向に基づき選出されたものでないこと
管理監督者は全労働者に含めますが、労働者代表にはなれません。
使用者は、過半数代表者について不利益な取り扱いをしてはなりません。
■ 私法的効力を有する計画年休協定 ─────────────────────
年次有給休暇については労使協定により5日を超える部分について協定で定
められた日を年休日とすることができます。
年次有給休暇は労働者の指定した時季に付与しなければならないのに、計画
年休の労使協定により、労働者の時季指定権は消滅します。
計画年休に関する労使協定には、私法上の権利義務関係を生じさせる効果が
備わっていると解されています。
(渡邊岳「改訂版 労使協定・労働協約完全実務ハンドブック」日本法令)
■ 私法上の効力のみを有する労使協定 ─────────────────────
育児介護休業法には育児休業等の除外者を定める労使協定があります。
「当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者」を育児休
業の対象者から除外する旨定めたときは、その者からの育児休業の申出を拒む
ことができます。
育児休業や介護休業については事業主が申出を拒んでも罰則はありません。
育児休業等の労使協定は免罰効をもちませんが、育児休業等の申出を拒むこと
ができるという私法上の効果を備えています。(前掲書)
■ 労使協定の周知 ────────────────────────
締結された労使協定は労働者に周知しなければなりません。
(1)常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
(2)書面を労働者に交付すること
(3)磁気テープ、磁気ディスクその他これに準ずる物に記録し、かつ、作業
場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
のいずれかの方法で周知します。
■ 労使協定のチェックを ────────────────────────
親睦会費などを給与から天引きしているのであれば、賃金控除の労使協定は
必須です。(届出不要)
年次有給休暇を時間単位で与えるときや年次有給休暇の計画的付与を行う時
の労使協定の内容は求められている事項についてもれなく記載されているでし
ょうか。届け出がいらないからといってキチンと結んでいないと大きなリスク
になります。
4月から育児介護休業法が改正されました。育児介護休業規程の変更と労使
協定の作成しなおしも求められています。