★★ 社会保険の適用拡大に注意 ★★
負担の大きい社会保険料ですが、適用対象者が増えます。
■ 重要ポイント ────────────────────────
10月から101人以上規模の会社で週20時間勤務等の方も、社会保険の被保険者
となります。2年後には51人以上規模に適用が拡大されます。
■ 社会保険に加入する人 ────────────────────────
社会保険に加入するか否かは所定労働時間で決まっています。
「1週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上」
である場合は社会保険に加入しなければなりません。
■ 特定適用事業所 ────────────────────────
現在、特定適用事業所とは,同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用
される厚生年金の被保険者の総数が12ヶ月のうち6ヶ月以上500人を超えること
が見込まれる場合を指します。
特定適用事業所は、3/4基準を満たさない以下の条件を満たす短時間労働者も
社会保険に加入しなければなりません。
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が88000円以上であること
・学生でないこと
■ 令和4年10月1日以降の取り扱い ─────────────────────
今年の10月1日から常時100人を超える企業規模に特定適用事業所の対象が引き
下げられます。
短時間労働者の要件のうち、雇用期間が1年以上見込まれることという要件は
外されます。
■ 1週間の所定労働時間が20時間以上 ───────────────────
所定労働時間とは就業規則・雇用契約書などにより通常の週に勤務すべき
時間のことです。通常の週とは祝祭日、年末年始、夏季休暇等の特別休日を含
まない主のことです。
■ 所定労働時間が週単位で決まっていない場合の20時間の考え方────────
1年間の月数を12、週数を52として週単位の労働時間に換算し週20時間を算定
します。
〇1ヶ月単位で定められている場合
1ヶ月の所定労働時間を5/12で除して算定します。
〇1年単位で定められている場合
1年間の所定労働時間を52で除して算定します。
〇1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合
平均により算定します。
■ 雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれること ─────────────────
2ヶ月以内の期間を定めて使用される人は所定の期間を超えて引き続き使用
されるようになった場合はその日から被保険者となります。
雇用期間が2ヶ月以内である場合であっても最初の期間を含めて当初から被
保険者の資格を取得したと取り扱われることがあります。
就業規則・雇用契約書などでその契約が更新される旨または更新される場合
がある旨が明示されているときや同一の事業所において同様の雇用契約に基づ
き雇用されているものが更新等により2ヶ月を超えて雇用された実績がある場
合です。
■ 賃金の月額が88,000円以上であること───────────────────
週給、日給、時間給を月額に換算したものに各諸手当等を含めた所定内賃金
の額が88,000円以上ということですが、以下は除かれます。
・臨時に支払われる賃金及び1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与など
・時間外労働、休日労働等の割増賃金
・最低賃金法で参入しないことを定める賃金
(精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
取得するか否かの要件の判断と報酬月額の算定は異なることに注意が必要で
す。
短時間労働者の資格取得時の報酬月額の算出方法は従来からの被保険者資格
取得時の報酬月額の算出方法と同じで支払総額(通期手当など含める)だから
です。
■ 学生でないこと ────────────────────────
大学、高等学校、専修学校、各種学校に在学する生徒又は学生は適用対象外
です。
■ 家族手当支給基準の確認を ───────────────────────
社会保険の適用拡大は関係ないという会社でも気をつけることがあります。
従業員の被扶養者が、適用拡大により扶養を外れる場合があります。
社会保険の被扶養者であることを要件に配偶者等の家族に手当を支給してい
るのであればその手当は支給されないということになります。配偶者が勤めて
いる企業規模により不公平になることが考えられます。配偶者手当、家族手当
の見直しが必要かもしれません。
■ 算定基礎で注意が必要 ────────────────────────
現在の算定基礎(4.5.6月の報酬の平均を求める)では正社員とフルタイム
パートは1か月の基礎日数が17日未満の月を除きます。
短時間就労者(4分の3要件は満たすが、正規社員より短時間の労働条件で勤務
する人。パート、アルバイト、契約社員等の名称を問わない)については、正
社員と異なる3種類の標準報酬月額の決定方法があります。
(1)4,5,6月の3か月のうち支払い基礎日数が17日以上の月が1か月以上ある
場合はその額により標準報酬月額を決定
(2)いずれも17日未満の場合で、15日、16日の月が1か月以上ある場合は、1
5日、16日の月の報酬総額の平均により算定された額により標準報酬月額を決
定します。
(3)いずれも15日未満の場合は、従前の標準報酬月額を当該年度の標準報酬
月額とします。
適用拡大で加入となった特定適用事業所に勤務する短時間労働者は、支払
い基礎日数が11日未満の月は対象から除外します。
社員の区分を明確にしていないと算定基礎等で間違いやすいので、十分な
注意が必要です。