今年は必ず支給しなければならない?
毎年賞与はそれなりに払ってきたという社長さんも、「今年は・・・」
賞与は去年並みに払わなければいけないお金なのでしょうか?
■ 重要ポイント
賞与を支払うかどうかは、基本的に会社が決めてよいことです。
会社業績や本人の貢献度によりアップダウンがあると明確に規定しておくことが重要です。
■ 賞与の性格 賞与の定義は明文上にはありません。
一般的に、従業員の勤務成績に応じて支給されるもので、支給額が確定されていないものを賞与といいます。定期的に支給されていて支給額が確定していれば賞与ではありません。
賞与とはボーナス、決算手当、期末手当、報奨金などとも呼ばれる一時金のことです。
■ 基本給の○ヵ月としない
基本給をベースとして賞与は年間○ヵ月という言い方をよくします。
が、今の時代、賞与は必ずもらえるものであると誤解されないようにしておく必要があります。
求人をするときにも、前年実績として基本給の○ヵ月という表現はいいですが、あくまで会社業績と本人の貢献度により支給するものであるとすべきです。
■ 賞与の支給回数 もともと賞与は正月の餅代、お盆前の一時金という形で支払われてきた伝統があり、7月(8月)と12月の2回の支払いをする会社が多いようです。
決算後に業績をみて年1回の支払いとしている会社もあります。
夏冬と決算後の年間3回賞与を支給している会社もあります。
もちろん4回以上支給してもよいのですが、社会保険料の徴収では、年4回以上の賞与は標準報酬月額の対象となりますから注意が必要です。
■ 賞与支給日に在籍していなければ賞与を支払わなくてもよいか?
賞与は過去の貢献度をみて、がんばった人にはそれなりに報いたいという思いを伝えるものであるとともに、これからに期待しているよというメッセージでもあります。
就業規則で「賞与は賞与支給日に在籍している者に支給する」と明確に規定していれば、退職者にまで賞与を支払う必要はありません。
■ 退職の月と社会保険料
12月15日に賞与を支給、その後12月20日に退職して、21日に社会保険の資格を喪失した場合、賞与に社会保険料はかかりません。
資格喪失の月なので12月に支払われる給与も賞与も社会保険料の負担がないのです。
保険料は被保険者でなくなった月の前月(11月)まで徴収されるのです。
喪失月に健康保険料と厚生年金保険料で12%にもなる社会保険料の負担がないことは退職者にも会社にもメリット。事務手続きを間違えないようにしましょう。
■ 有給休暇取得者の賞与を減額してよいか?
年次有給休暇については「とる人はとるけれどとらない人はとらない」とよくお聞きします。年次有給休暇を買い取ることはよろしくないとは周知のこととなっています。
では会社に全面的な裁量がある賞与額で年次有給休暇の取得を反映させることはできるでしょうか。
年次有給休暇の取得があったからと賞与を減額することは、認められません。
有給休暇を取得した者に対し、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないと定められているからです。
裁判例では「年次有給休暇を取得して休んだ日があることを理由に、皆勤手当を支給しなかったこと」や「年次有給休暇の取得日を不就労時間に含めて稼働率の計算をし、当該稼 働 率 が 80% 以 下 の 者 に は 昇 給 さ せ ない・・・という規定」について、不利益取り扱いとして、公序良俗違反により無効としています。
ですから賞与についてもマイナス要素としての反映は避けるべきことなのです。
■ 最近の賞与支払い事情
国税庁が毎年行っている民間給与実態統計調査によれば、平成12年以降、給与所得者の平均の年収(平均給与)は平成19年にわずかな伸び率であった以外、下がり続けています。
平均給与額が最高だったのは平成12年の4,610千円ですが、そのとき賞与額は807千円で21.2%を占めていました。
平成20年、平均給与は4,296千円、賞与は646千円で17.7%でした。
10年間に賞与は金額でも下がり、年収に占める割合でも下がっています。
また、新潟県の勤労統計調査によれば、平成21年の夏季賞与(従業員30人以上の事業所)の平均は319 千円で前年の341 千円を6.4%下回っています。
■ 賞与 規定例
賞与は会社の業績と従業員の貢献度に基づいて、7月および12月に支給する。
ただし、会社の業績が悪化した場合、今後悪化が見込まれる場合は、支給時期を延期し、または支給しないことがある。
賞与の査定期間は次のとおりとし、支給日当日に在籍していることを要件とする。
7月賞与 :前年12月1日~当年5月31日
12月賞与 :当年6月1日~11月30日
■ 賞与支払いのポイント
毎月の給与は、仮に成果が出なくても、時間外労働があれば時間に応じた残業代を支払わなければならないという法律の規制があります。それに対して賞与は、会社側に全面的に裁量があるもので、極端に言えばゼロから青天井も可能なものです。
賞与はアップダウンがあるものなのです。
ほどほどの緊張感や良識の範囲での不安定感の中で、従業員の創意工夫、積極性、会社業績への貢献をキチンとみて賞与に反映させたいものです。
※ 59歳の人に支払う賞与は60歳の在職老齢年金を減らしてしまいます。具体的なことは小野本事務所にお問い合わせください。