試用期間はありますか?

「契約社員(期間の定めのある契約の社員)と交わす労働条件通知書に試用期
間有として、試用期間中の時給を低くしています。何か問題がありますか?」

■ 重要ポイント────────────────────────

試用期間とは正社員採用した場合、本採用前の適格性を見極める期間。

試用期間を勝手に延長することはできない。

有期契約労働者に試用期間を設けると長期雇用を期待させることになりかねな
い。

■ 試用期間とは ────────────────────────

試用期間とは本採用する前の試験的な雇用期間といわれています。

試用期間は人物・能力を評価して本採用するかどうかを決定するための期間で
す。

■ 試用期間と労働基準法 ────────────────────────

「試みの使用期間中の者」は、解雇に当たって予告手当を支払わなくてもよい
としています。ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇
予告手当の支払いが必要であるとしています。(労働基準法第21条)

■ 試用期間でも解雇に規制はある ────────────────────

試用期間中は本採用されていない期間ですが、解雇が容易というわけではあり
ません。

試用期間中の解雇は本採用後の解雇と比べ認められやすい傾向があるという程
度です。

■ 試用期間の長さ ────────────────────────

試みの期間ですから3か月から6か月程度がよいとされています。

3か月がもっとも多くの企業で採用されている期間です。

1年以上の試用期間は長すぎるといわれています。

■ 試用期間の延長 ────────────────────────

試用期間の法的性質は「解約権留保付き」労働契約とされています。

試用期間中や試用期間満了時の解雇や本採用拒否は留保解約権を行使するっと
いうことになります。客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である場
合に限り行使できるものです。

試用期間を勝手に延長することは従業員を不安定な地位に長く置くこととなる
ため、就業規則上の根拠がなければ原則としてできません。

「試用期間中の者が、病気で欠勤が多く、適性を判断できない場合、試用期
間を延長することがある」のような一文は就業規則の試用期間の規定に挿入し
ておくべきでしょう。

試用期間は3カ月とすると定めていても、「採用決定時における評価および
試用期間中の業務遂行状況等により、試用期間を短縮又は設けないことができ
る」と本採用の時期を早める規定を設けることもできます。

■ 有期契約と試用期間 ────────────────────────

1年間とか6か月間とかの期間を定めた有期労働契約において試用期間を定める
ことはできるのでしょうか。

試用期間が長期雇用を前提としたものであることを考えると、有期契約の者に
試用期間を設けることはあまり適切ではないと思われます。

1年間の雇用を結ぶ前に例えば2か月間の雇用契約を結び、「能力が適正である
と判断された場合に契約更新する」として有期契約を繰り返す方法も考えられ
ます。

■ 職安のトライアル雇用は試用目的 ────────────────────

常用雇用(無期雇用)を希望する求職者(就職困難者)に対し、3か月の有期
契約で雇入れた事業主に、労働保険からトライアル雇用助成金が支給されます。

1カ月4万円で最長3か月の助成金ですが、3か月のトライアル雇用が終了して無
期雇用に移行できなくても、雇用期間満了の雇用終了となり解雇とはなりませ
ん。

雇用政策としてトライアル雇用(3か月の有期契約)が試用目的での労働契
約となっているのです。

■ 有期契約を経て正社員になる場合の試用期間 ───────────────

6か月以上の有期契約ののち正社員に転換して雇用した事業主に対し、助成
金が支給されます。(キャリアアップ助成金 正社員化コース)
2022年10月からの改正で「正社員」とは「賞与又は退職金の制度」か
つ「昇給」が適用されている者に限定されました。さらに試用期間については
「転換制度により正社員に転換された者については試用期間を設けない」を追
記しておくよう求められています。

有期契約の期間は実質的に試用期間であるから、正社員になってさらに試用
期間を設けることはこの助成金になじまないということでしょう。