「月60時間超の時間外労働には5割増の賃金になりますよね。60時間には法定休
日労働時間も入るのでしたっけ?」
こんな質問をいただきました。
大企業で適用されてからすでに13年。そのときはきちんと理解していたはずなのに。
中小企業に適用となる4月を前に今一度法改正を確認し就業規則を見直しましょう。
★★ 割増率アップに対応した就業規則ですか? ★★
■ 重要ポイント ────────────────────────
この4月から中小企業も月60時間超の時間外労働に50%以上の率の割増賃金を
支払わなければならなくなります。休日労働時間は60時間に含めません。
就業規則にも割増率について規定しておく必要があります。
■ 時間外労働が60時間を超えると ─────────────────────
2023年4月1日から時間外労働がひと月60時間を超えた場合、すべての企業で割
増賃金率を5割以上にしなければなりません。
大企業は2010年4月からすでに適用されています。
■ 何故割増率が上がるのか ────────────────────────
法律が施行されたのは2010年4月1日。当時のリーフレットには以下のように書
かれています。
「長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともに仕事と生活の調和が
とれた社会を実現する目的」
「週60時間以上労働する労働者の割合は全体で10.0%、特に30代の子育て世代
の男性のうち週60時間以上労働する労働者の割合は20.0%となっており、長時
間にわたり労働する労働者の割合が高い」
月60時間を超える時間外労働の割増率を50%以上にすることで、長すぎる時間
外労働を押さえようということです。
■ 中小企業には猶予措置 ────────────────────────
法定割増賃金率の引上げは、中小企業について当分の間、適用を猶予され、法
の施行後3年経過後に改めて検討することとされていました。
中小企業か否かは資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者数で判断
されますが、事業場単位ではなく、企業単位で規模が判断されます。
■ 時間外労働が60時間を超えるとは ─────────────────────
60時間のカウント対象は、法定時間外労働です。
法定休日労働は時間数に含めません。
法定休日労働を6時間、時間外労働を76時間した場合、法定休日労働の6時間に
は35%の割増、時間外労働76時間のうち60時間には25%の割増、16時間には50
%の割増賃金を支払わなければなりません。
■ 代替休暇で割増賃金を払わないことも可能 ─────────────────
代替休暇とは、50%以上の割増率のうち通常の割増率(25%以上)に上乗せ
された部分について、50%以上の割増賃金の支払いに代えて有給の休暇を付与
できるという制度です。
時間外労働が76時間だった場合
(76時間-60時間)×(0.5―0.25)= 4時間
4時間の代替休暇を付与することで賃金に代えることができます。
■ 代替休暇制度には労使協定が必要 ──────────────────────
休暇を与えて割増賃金が不要なら代替休暇制度をつくりたいという企業もある
と思いますが、従業員代表と会社で取り決め(労使協定の締結)ををしておか
なければなりません。
代替休暇制度導入に当たっては次の事項を労使協定で定めなければならないの
です。
(1)代替休暇の時間数の算定方法
(2)代替休暇の単位(1日または半日)
(3)代替休暇を付与できる期間(2か月以内)
労使協定を結ぶことによって代替休暇制度はできますが、個々の労働者が代
替休暇を取得するか否かは、労働者の意思により決定されます。
■ 就業規則の変更を ────────────────────────
1か月に60時間を超える法定時間外労働についての割増賃金の規定を就業規則
に追加する必要があります。
もし代替休暇の制度をもうけるのであれば、休暇は就業規則に記載しなければ
ならない事項ですので、代替休暇についても就業規則に追加しておきましょう。