シフト制の人はいますか

★★ シフト制の人はいますか ★★

■ 重要ポイント ────────────────────────

シフト制で働いてもらう労働者にも労働基準法の順守が求められます。
あらかじめ勤務日が確定していない働き方なので、留意すべきことがあります。

■ シフト制とは ────────────────────────

「シフト制」とは、あらかじめ具体的な労働日、労働時間を決めず、シフト
表等により柔軟に労働日・労働時間が決まる勤務形態です。

柔軟に労働日・労働時間が決められるメリットがある一方、労働者は働きた
い時間に働けなかったり、急にシフトを減らされたり、過剰な勤務日や労働時
間を設定されたりするというトラブルが生じやすいデメリットもあります。

■ 労働者保護の考え方 ────────────────────────

始業・終業時刻、休憩時間、労働時間、労働日を決めることで、労働者保護
のしくみはできています。

所定労働日が決まっていなければ年次有給休暇はとりにくいでしょう。

休憩時間が決まっていなければ、休憩もなく働かせられるかもしれません。

使用者の責めに帰すべき事由で労働者が就労できないときの賃金保障も受けら
れないでしょう。

■ シフト制の労働者の雇用契約終了はどうなるか ───────────────

シフト制の労働者の雇用契約の終了時期や賃金について争われた事件があり
ました。

★ リバーサイド事件(東京高判令和4.7.7)

事件の概要は————

Xは、Y社と期間の定めのないアルバイト契約を締結し、Y社の経営する寿
司店でホール等作業に従事していました。

勤務日及び勤務時間は「シフト表により定める」とされていて、シフトは、
各自があらかじめ希望日を提示し、店長がこれに基づいて決定していました。
Xは、平成30年12月までは遅番を中心に週6日程度勤務していましたが、平
成31年1月以降、勤務希望日が激減し、3月13日以降のシフトを提出しなかった
ので、YはXに4月下旬、社会保険等の資格喪失手続きを開始する旨通知し、7
月に3月31日付退職処理した旨通知しました。

Xは退職の意思表示をしていないにもかかわらず退職扱いとされたとして、
Y社に対し雇用契約上の地位確認及び労務の受領拒否後の賃金の支払いを請求
しました。

1審判決は雇用契約上の地位確認のみ容認、2審判決は、地位確認とともに、
Xの未払い賃金請求を一部認めるという判決が出ました。

■ シフト制の雇用契約終了が争われた事件のポイント────────────

(1)シフトの希望を提出しない場合に雇用契約が終了するのでしょうか。

Xが退職の意思表示をしたことについて書面がないこと、Y社によるXの退
職の意思の確認が明確には行われていないこと、Xの退職時期が判然としない
ことから確定的な退職の意思表示をしたと認めることは困難であるとされました。

退職願などにより具体的にいつ退職するかの意思を確認することは重要だと
いうことになります。シフト表未提出だけでは退職の意思表示とはならないと
いうことです。

(2)解雇は認められるのでしょうか。

Y社は無断欠勤、手続・届出義務違反、業務命令違反等の解雇事由を主張し
ましたが、そもそもシフト勤務では労働日・労働時間が定められていなかった
ので、労働者が就労しなかったことは無断欠勤や業務命令違反などの解雇事由
には当たらないとされました。解雇は無効となったのです。

(3)賃金請求権

雇用契約が終了しておらず、Y社はXの復職の意思があることを認識していた
にもかかわらず、新たにアルバイト従業員2名を雇用していたことなどから、
判決ではXがY社の責めに帰すべき事由により就労することができなかったもの
として、令和2年4月以降の各月の賃金請求を一部認めました。

■ 労働条件の書面明示を確実に────────────────────────

シフト制労働者も労働者。労働契約を締結するときは、以下の事項については
必ず明示しなければなりません。

(1)契約期間
(2)期間の定めがある契約を更新する場合の基準
(3)就業場所、従事する業務
(4)始業・終業時刻、休憩、休日など
(5)賃金の決定方法、支払い時期など
(6)退職(解雇の事由を含む)
(7)昇給

トラブルを避けるために、特に始業・終業時刻は、労働契約の締結時点で、
既に始業と終業の時刻が確定している日については、「シフトによる」と記載
するだけでなく、労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・
終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト
表等を併せて労働者に交付する必要があります。

休日についても、曜日等が確定していない場合でも、休日の設定についての
基本的な考え方などを明記する必要があります。

■ 極端な労働時間の変動は避けるべき───────────────────

シフト作成や変更に当たっては、時期や手続きを明らかにしておくことに加え、
以下の内容についてあらかじめ合意しておくことが望ましいと考えられます。

(1)一定の期間中に労働日が設定される最大の日数、時間数、時間帯
(2)一定の期間中の目安となる労働日数、労働時間数
(3)一定の期間において最低限労働する日数、時間数

■ その他労基法違反とならないために────────────────────

シフト制労働者も労働関係法令で保護される労働者です。

違反がないように気をつけましょう。

※ 厚生労働省の「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な
雇用管理を行うための留意事項」(令和4・1・7)、リーフレット「『シフト
制』労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項」を参考にしました。