★★ こども政策はどうなる? ★★
出生率の低下が止まらないことを受けて、政府は対策強化に向けて動き出し
ました。
「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の
実現に向けて~」(令和5年3月31日 こども政策担当大臣)を読んでみましょ
う。
筆者が重要と思われることを社会保険に関係することを中心にまとめました。
■ 重要ポイント ────────────────────────
こども政策の強化は30年来の課題です。
3月31日に次元の異なる少子化対策の実現に向けて試案が出されました。
■ 試案の内容────────────────────────
「こども・子育て政策の強化について」(試案)は、
(1)こども・子育て政策の現状と課題
(2)基本理念
(3)今後3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策
(4)こども・子育て政策が目指す将来像とPDCAの推進
からなっています。
■ 現状と課題 ────────────────────────
「少子化」が政策課題として認識されるようになったのは1990年、出生率が戦
後最低の1.57ショック以降のこと。
国は2022年度には約6.1兆円の予算(過去10年で倍増)を付け、待機児童対策
などでは一定の効果があったが、少子化には歯止めがかかっていない。
「子育てしやすい国か」の問いに、スウェーデン、フランス、ドイツは8割が
「そう思う」と回答しているのに対し、日本では6割が「そう思わない」と回
答。
全世帯の3分の2が共働き世帯となる中で多くの女性は出産後も仕事を続けるこ
とを望んでいるが、現状は女性特有の賃金の「L字カーブ」が存在し、子育て
の負担は日本では女性に集中している。
教育費が高い、居住費が高いなど、子育ての経済的・精神的負担感を訴える声
もある。
■ 基本理念は3つに分かれる ────────────────────────
まずは若い世代の所得を増やす。そのためには賃上げやL字カーブの解消を図
ること。
2番に挙げられているのは社会全体の構造・意識を変えること。
家庭内において育児負担が女性に集中している現状を変え、企業においても男
女ともに育児休業を使えるようにする。
第3として全ての子育て世代を切れ目なく支援すること。たとえば親が働いて
いなくても子育て支援を受けられるようにする。
■ 今後3年間の支援策 ────────────────────────
児童手当の所得制限を撤廃して支給期間を高校卒業まで延長する。
子育て世代に対し住宅支援を強化(公営住宅等に子育て世帯が優先的に入居で
きる取組の推進)する。
〇制度面の対応
男性の育休取得率の目標を以下のように引き上げる。
2025年 公務員85%(1週間以上の取得率)、民間50%
2030年 公務員85%(2週間以上の取得率)、民間85%
〇給付面の対応
出生後一定期間内の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から、8割程
度(手取りで10割相当)へ引き上げる。
育休取得社員がいる中小企業の職場に対し、助成措置を強化する。
こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択した場合の給付を創設する。
所定労働時間20時間未満の労働者についても失業手当や育児休業給付を受給
できるよう、雇用保険の適用拡大を進める。
国民年金の第1号被保険者についても育児期間に係る保険料免除措置の検討
を進める。
■ 試案から骨太の方針へ ──────────────────────
6月には骨太の方針が取りまとめられ、財源も明らかになる予定です。
■ 待ったなしの課題 ────────────────────────
試案に書かれているように「少子化の問題はこれ以上放置できない待ったな
しの課題」。
財源なくしては実行できないことばかりですが、今後の具体策を注視したいも
のです。
男性の育児休業の取得率目標も掛け声だけに終わらせてほしくありません。