賞与はどんなもの?

★★ 賞与はどんなもの? ★★

大手企業の夏のボーナスが高い水準だと報道されました。

夏と冬の賞与は公務員や多くの企業で当たり前のように支給されていますが、
賞与とはどのようなものなのでしょう。

■ 重要ポイント ────────────────────────

賞与は賃金です。

月の給与と違って、会社に利益が出なければ支払わなくても文句をいわれない
性質のものです。

■ 労働基準法と賃金 ────────────────────────

労働基準法では賞与は労働の対償で「賃金」であるとしています。

「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、
労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」労基法第11条
賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません(労基法
第24条第2項)が、賞与は毎月の支払いを求めていません。

その理由は賞与とは「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて
支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいう」か
らで、「定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何
にかかわらず、これを賞与とみなさないこと」としています。(昭和22.9.13
発基第17号)

支給額が確定している賞与は、賞与とみなされず、毎月払いをしなければなら
ないのです。

■ 健康保険法と賞与 ────────────────────────

健康保険法では賞与を「3月を超える期間ごとに受けるもの」としています。
賞与が年間4回以上支給されている場合は報酬となります。

「この法律において『報酬』とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いか
なる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの
をいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、
この限りでない。 (健康保険法第3条第5項)

「この法律において『賞与』とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いか
なる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの
うち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう。(健康保険法第3条第6項)

■ 賞与と社会保険料 ────────────────────────

賞与は賞与額の1,000円未満を切り捨てた額(「標準賞与額」)に健康保険料
率を掛けて賞与の健康保険料を算出します。但し年度の賞与額の累計額は573
万円(毎年4月1日から翌年3月31日まで)が上限です。

厚生年金保険料も同様の取扱いですが、標準賞与額の上限は1カ月当たり150万
円です。

■ 退職後の賞与と雇用保険料・社会保険料 ───────────────

退職後に賞与が支払われることがあります。退職後でも雇用保険料の徴収は必
要です。雇用保険料は就業期間の労働に支払われた賃金に対して発生するから
です。

社会保険料は被保険者の資格を喪失した月の前月までに支払われた賞与が、保
険料徴収の対象とされます。

8月10日に賞与を支給、8月21日に資格喪失の場合は、賞与支給月が資格喪失月
なので賞与の社会保険料はかかりません。8月31日に退職し、9月1日に資格喪
失であれば、8月支給の賞与に社会保険料の負担が生じます。

■ アルバイトの賞与 ────────────────────────

多くの正社員には賞与が支給され、短時間労働者や期間の定めのあるアルバイ
トには賞与が支給されないことが多いですが、正社員ではないので賞与を支払
わなくてよいということではありません。

アルバイト職員がボーナス支給を求めた裁判(大阪医科薬科大学事件最高裁令
和2年10月13日判決)で、最高裁判決はボーナス支給を不要とする判断を示し
ましたが、以下のような要件を満たす場合だったからでした。

1 賞与を支給する目的が「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やそ
の定着」にあったこと。

2 アルバイト職員の職務内容が「相当に軽易」であったこと。

3 正職員には人事異動があり、アルバイト職員は配置転換がなかったこと。

4 アルバイト職員を正職員に登用する制度があったこと。

5 継続勤務の実績が2~3年であったこと。

正社員と全く同じ業務を同様の責任で行い、人事異動の制度も同様であるよう
なアルバイト職員であれば、賞与の支給がないことが不合理と判断されること
になります。

■ 賞与の規定 ────────────────────────

賞与は算定期間を明記して支給日を規定するのがよいと思います。

算定期間に在籍していても賞与支給日には退職している社員に賞与を支払わ
ないことは認められていますから、支給対象者を賞与支給日において在籍する
者と規定しておきましょう。

賞与をいくら支給するかについては経営者に大きな裁量があります。
賞与を、社員のモチベーションを高めるように役立てたいものです。