賞与を59歳の人に払う?

59歳の人に賞与を払うと、60歳からの在職老齢年金が減ってしまいます。
1カ月に減らされる金額は数万円ですが、減額はほぼ1年間続き、結果として賞与の半額に当たる年金がもらえなくなります。
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■ 重要ポイント

60歳以降、在職しながら受け取る年金は、59歳の賞与が多いと大幅な減額となってしまいます。
59歳の賞与支払いには要注意です。

■ 59歳の賞与、1年たってみれば手元に残るのは3割

賞与には社会保険料がかかります。
平成15年3月までは賞与に保険料はほとんどかからなかったのですが、昔話になりました。
賞与を支払うためには、社会保険料を考えて14%増しのお金を用意しなければなりません。逆に、従業員にしてみると、社会保険料と税金を引いた後、およそ8割の手取りといったところでしょう。
賞与を59歳の人に払ったとしましょう。
60歳で退職なら問題ないのですが、60歳以降、働きながら年金をもらうのであれば、本来もらえる年金が、賞与をもらったため減らされ、実質手取り3割になってしまいます。
せっかくの賞与が、翌年の年金減額という制度のため、本人には3割しか届かないのです。

■ 在職老齢年金のしくみ

60歳過ぎて働きながら(=厚生年金に加入しながら)もらう年金を、在職老齢年金といいます。
月例給与(標準報酬月額)と年金を合計した額が一定の金額以上の人には年金を調整(=減らします)して支給しますというのが在職老齢年金です。
平成15年度から社会保険に総報酬制が導入され、賞与からの保険料徴収がはじまりました。それに伴い平成16年度から在職老齢年金についても賞与が含まれる総報酬制型の在職老齢年金になりました。
(在職老齢年金は、60歳台前半と60歳台後半で仕組みが違います。以下は60歳台前半にかぎっての話です。)

■ 年金はいくら減らされるのか

「退職したらもらえる年金月額と60歳になっての月例給与をたした金額が、多ければ多いほど年金を減らします」
従来からのこの原則に、総報酬制が導入された後は、【直近1年間の賞与の総額の12分の1】が加わることになりました。
【標準報酬月額(ほぼ月例給与と同じ)と直近1年間の賞与額の12分の1を足したもの】を総報酬月額相当額と呼びます。
年金は以下の式で計算された額が減らされます。
年金の減らされる額=(年金月額 + 総報酬月額相当額 - 28万円)÷2

■ 年金月額が10万円で、給与が20万円、59歳の賞与ナシの場合

もらえる年金を計算してみましょう。
(10万円 + 20万円 - 28万円)÷2 = 1万円。
退職であれば10万円満額もらえる年金が1万円減らされて9万円になります。
20万円の給与に対し、本来の10万円ではなく9万円の年金がもらえます。

■ 年金月額が10万円で、給与が20万円、59歳の賞与が年間60万円の場合

賞与の60万円の12分の1は5万円です。総報酬月額相当額にはこの5万円を加えなければなりません。
年金は(10万円+20万円+5万円―28万円)÷2 ですから3万5千円減らされ、10万円の年金が6万5千円になります。
同じ20万円の給与ですが、59歳の賞与60万円があったために、賞与がなかったときと比べて1カ月2万5千円も少ない金額となるのです。1年では30万の減額となります。
60万円の賞与の手取り額は社会保険料と税金を引いて約8割の48万円くらいです。
1年後の年金が30万円少ないのですから、60万円の賞与は見えない形でわずか18万円となってしまうのです。

■ 59歳の賞与額が生きるために

【定年は満60歳に達した日の属する賃金締切日とする。本人が継続雇用を希望する場合、各人ごとに労働条件を見直し65歳まで再雇用する。】
60歳からの雇用ではこのような取り扱いがよく行われています。
ですから定年前の59歳のときに労働条件を変更することは難しいかもしれません。
「こんなに会社に貢献したのに賞与が少ない!」とトラブルになりかねません。賞与と在職老齢年金のしくみを知らないのであれば当然でしょう。
ですから、58歳という早い時点で59歳の賞与と在職老齢年金のしくみについて十分説明し、理解を得ておく必要があるのではないでしょうか。その上で、
対策その1:59歳になるときに特別昇給をし、その後は賞与を支払わない。
対策その2:59歳の賞与は支給しないで、60歳の定年退職金に特別加算金という形で考慮する。
などの対策が考えられます。
会社の従業員数、年齢構成、賞与の額や年収に占める割合、どのような退職金制度なのかなどにより、とれる対策は違ってきます。早めに、対象者の合意を得た上で行いましょう。

■ 59歳で賞与を払っても影響がないケースもある

年金が減額されるのは年金月額と総報酬月額相当額をたして28万円以上になる場合です。
厚生年金の加入期間が短い、あるいは、加入期間は長くてもずーと報酬が低かったなどの場合には、当てはまりません。年金月額が3万円、給与が20万円、前年の賞与の12分の1が5万円以下なら、合わせて28万円に満たないのですから。
また、60歳以降の月例給与が38万円以上なら前年の賞与に関わらず年金はまったくもらえませんから、影響はありません。

 

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