腰パンで解雇できる?

 オリンピックで服装が乱れていると話題になった選手がいました。
社長さん、もし御社に腰パンの従業員がいたら、すんなり「服装やファッションは自由だし、今の若者だからねえ」とほーっておかれますか?
それとも、「仕事しているのにとんでもない。誰が見ても不快感のない服装でないと困る。そんなやつはわが社には必要ない、解雇だ!」とお怒りになりますか?

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■ 茶髪社員とトラブルになった事件・・・判例1

髪の色で裁判になった事例があるのです。運送会社のトラック運転手が髪を短髪にして黄色に染めて勤務しました。取引先から好ましくないといわれた課長は、髪の色を元に戻すように命じました。
運転手が指示に従わなかったので、会社は諭旨解雇しましたが、運転手は納得できないと裁判になったのです。
判決は以下のようでした。
「髪の色や服装は人の人格や自由に関する事柄なので、制限を加えるには企業の運営上必要かつ合理的な範囲内に限られるものだ。社内秩序を乱した行為とは言いがたい。解雇事由が存在しないので、解雇は無効である。」
会社には何とも納得できない結果でした。(東谷山家事件)

■ノーネクタイの教師が解雇された事件・・・判例2

私立女子中学校の試用期間中の教諭が、態度が悪く、ノーネクタイであることなどで解雇され、争われた事件がありました。
「解雇は教諭としての適格性がないことが明白な場合にだけ許される。申請人は新規採用で試用期間中の教諭である。校長や先輩教諭から一度も注意を与えられたことがなかった。指導育成のない突然の解雇は無効と認めざるを得ない。」
これも労働者に有利な判決でした。(麹町学園事件)

■教師の解雇が有効とされた事件・・・判例3

私立中学校の社会科教師が、自己のカトリック信仰から在日ペルー人の救援活動を始め、ペルー人の不法就労をあっせんしたとして入国管理法違反で、逮捕・起訴されました。その後、罰金30万円とする有罪判決が確定したため学校を解雇されました。
裁判では
「教師としての適格性を欠き、有罪判決が生徒に悪影響を与え、保護者の信頼や学園の名誉が失墜したものとして行った解雇は、合理性、相当性があり、有効である。」とされました。
教師の行為は授業に支障をきたすこともあったこと、学園も捜索の対象となり、混乱を巻き起こしたこと、有罪判決を受けたことに特段の反省も見られなかったことなども判断の根拠とされました。(明治学園事件)

■ 裁判からいえること

服装が乱れている、髪を染めている程度のことだけでは従業員を解雇することは難しいようです。裁判の結果は、会社に厳しいもののように思われます。
会社としては、服装や髪を正してくれさえすれば 解雇まで考えていなかったということなのではないかと思います。
業務に支障をきたし、有罪判決まで受けたとなるとさすがに解雇は認められています。

■ 服務規律規程に書いておこう

まずは就業規則の服務規律の規定に服装や髪形について会社が求めることを具体的に書いておきましょう。
例 服装などの身だしなみについては、常に清潔に保つことを基本とし、他人に不快感や違和感を与えるものとしないこと。   服装を正しくし、作業の安全や清潔感に留意した頭髪、身だしなみをすること。   服装は顧客、取引先及び他の従業員のひんしゅくをかうようなものであってはならない。

■ 入社時に会社の求めることを説明し、ルールの遵守を誓約してもらおう

新入社員の入社時には、会社の求める服装、頭髪、身だしなみについて話し、理解をえておきましょう。
会社の服務規律の規程にもあることを確認しましょう。
その上で、服務規律を含む就業規則、会社のルールを遵守することを誓約してもらいましょう。

■ 服装の乱れ、勤務態度不良が見られたら

不快感を与える服装、だらしのない格好でだらだら作業をすることは、不良品の発生につながりやすいことでもあります。
そのような会社の従業員としてのぞましくないことがあったら、ほーっておくことは厳禁です。
すぐにその場で指導・注意をしましょう。
後回しにせずすぐおこなうこと、そして 「部下指導記録」などをつけておくことが重要です。
部下指導記録には、いつどのようなことがあったのか できるだけその事実を詳しく書くようにします。それに対し、いつ誰がどのような指導をしたのかを記録します。さらに本人がどのような態度をとったのか、今後どのように改めるといったのかを記述します。上司のコメントも加えるようにするとよいですね。

■ 会社には注意・指導が求められる

判例2では、学校を出たばかりの新米教師に対し、学校側の教育指導がなかったことが指摘されました。
従業員の服装が乱れている、勤務態度がなっていない、そもそも業務の適格性を欠くのではないかと思うことがあっても、そのつど注意や教育指導を行い、改善のチャンスを与えることが求められています。

■ 改善指導をしても改善改まらないなら

たびたびの改善指導にもかかわらず、改まらない、注意や指導の成果がないということであれば、解雇もやむをえないものとされる可能性が高まることになります。

 

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