年休は負債!?

 使わない年休はいくらになるか・・・ 年次有給休暇(=年休)は雇い入れの日から数えて6カ月たつと、10日付与されます。
日給8千円の人が働き始めて半年たったとします。法律上、年休が10日付与されます。有給で休みを与えるとは、費用換算すると8千円の10日ですから8万円になります。
年休は6年半も勤めると最高で40日付与されます。2カ月分の月給に近くなります。
年休未消化の従業員は、2カ月の月給を溜め込んでいるというイメージです。
今までは何日、いくら分年休が残っているかなどあまり気にしなくて良かったのですが・・・

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■ 重要ポイント

国際財務報告基準では、未消化の年休は負債として計上します。
今までは、年休は病気のときに使うもの、特別の用事のときに使うものだったかも知れません。けれどもこれからは、年休を取らないことは経理上負債になってしまうからと、取得の向上を考えなければならなくなりそうです。

■ 国際財務報告基準とは

経済がグローバル化する中、国際財務報告基準(IFRS)は世界の100カ国以上が採用しているという会計の基準です。
EU各国の公開企業の連結決算はすべて2005年よりIFRSにもとづいて決算を発表しています。オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなどはIFRSと同じか近い基準を採用しています。中国でも2009年度よりIFRSに準拠した会計基準が上場企業に適用されています。
日本もこのIFRSを取り入れようとする動きが、高まっています。

■ 国際基準と年休の未消化

日本の会計基準と、国際財務報告基準(IFRS)はいろいろな違いがあります。
そのひとつが有給休暇引当金です。有給休暇引当金など、日本では基準も実務慣行もありませんが、IFRSでは計上が求められるのです。
『IFRSでは企業が従業員に付与する有給休暇について従業員給付として費用計上することが求められます。企業は従業員から役務の提供を受けた代償として従業員に休暇を付与しているのであり、有給休暇の付与をその役務を提供した従業員に対する給付として認識する、という考えによるものです。
有給休暇費用は従業員に有給を付与した時点で認識され、期末日において休暇の消化されていない分についても将来の債務として認識されます。』
(IFRSのしくみ  あずさ監査法人 中央経済社 より引用)

これからは、使わない年休は負債になるという意識が高まることは間違いないでしょう。
国際社会で相手にされなくなるからと、週40時間労働制をとりいれていった経緯が思い起こされます。

■ 期間雇用でも年休はある――――相談事例から

「4月から12月までの9カ月間の雇用をしている従業員が複数いる。従業員の一人が年休消化といって最後の月の半分は出勤しないで困っている。年休を請求しないでがんばっている従業員とのバランスをどうすればよいか。」
もちろん9カ月の雇用期間の従業員にも年次有給休暇の制度はあります。
「フツウに6カ月働いた者には、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」というのが労働基準法です。
ですからこの場合、6カ月たった10月から12月の3カ月間に、10日間の有給休暇が付与されるのです。残り1年ないのに10日も与えなければならないの?という疑問がおきるかもしれませんが、年休は過去の勤務実績に対して付与されます。
年次有給休暇を取得したことに対する不利益な取り扱いは禁止されています。
ですから労使で話し合って、業務に支障とならないよう、みんなが交替で計画的に年休をとるようにしていくべきでしょう。退職時に取得できなかった年休については、買い取りすることも認められています。

■ 1カ月ごとに年休取得を奨励することに――――相談事例から

1カ月ごとの勤務シフトで業務をしているある店舗では、シフト作成時に、全員に年休の希望を聞いて年休を与えることにしたといいます。
かつては勤務シフトで働くパート従業員には、年休を与えていませんでした。
退職間際になって年休を請求するパート従業員が出てきたので、対策を考えることになりました。
「みんなが年次有給休暇を取ろう!」
急に休まれると困るけれど、あらかじめシフト作成時に年休の希望を言ってもらい、計画的に年休を使ってもらおうということになりました。皆が毎月1~2日の年休希望を申し出るようになり、退職のとき年休でもめることがなくなったといいます。
休んでもお金がもらえるのですから、パート従業員に不満はありません。

■ 退職前にはきちんと出社してほしいなら――――相談事例から

いくら権利だからといっても、退職前に年休を取って出勤しないでは困る、引継ぎもしてもらわなければならないし・・・ということであれば就業規則に次のような規定を入れておき、退職前の就労を促すことをお勧めします。

「従業員は、退職日より遡って2週間は現実に就労しなければならない。  従業員が前項の規定に反して事務引継ぎ等の業務に支障を発生させた場合、退職金を減額する場合がある。」

■ 2017年、年休取得は100%?!

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が実現する社会に向けて、憲章や行動指針が示されています。
指針によると、年次有給休暇の取得率を現状の46%から2012年には60%、2017年にはなんと100%を目標値としています。
4月から施行の改正労働基準法は、労使協定があれば、時間単位での年休取得を認めることになっています。この法改正も年休の取得率を少しでもあげるためと考えられます。
また、「労働時間等見直しガイドライン」はこの3月19日改正され、4月1日から適用されますが、やはり年休取得を推進しています。

■ 年休を使わない従業員はありがたいか

【未消化年休は負債】というIERSを日本でも取り入れないわけにはいかなくなっています。
「年休なんて使わないで会社のために尽くした」は過去の話になるのかもしれません。

 

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 国家公務員の減給は、1年以下の間、俸給の5分の1以下で可能であるが・・・

業務日誌より

◆ 「知って役立つ社会保険」 新入社員に会社で研修をしました ◆

 「知らないことがたくさんわかった」真新しい制服の社員から研修後にこんな感想を多数いただいた。
初めての給料の手取りが期待した額より少ない・・・それはこんな具合に社会保険料がかかるから。でも皆さんが負担する金額より余計に会社は社会保険料を負担している。雇用保険料は会社の負担の方が多い。労災保険は皆さんの負担がゼロで会社のみの負担。労災とは労働災害のこと。会社で もしけがをしてしまったら、無料でお医者さんに診てもらえる。厚生年金の負担は大きいけれど、入っていると・・・
新入社員にはどのくらい理解してもらえただろう、どのくらい頭に残っているだろう。社会保険を大変だ、と感じるだけでなく、社会保険料を負担することで社会人として1人前になったのだ、会社は個人負担以上の社会保険料を負担して、社会保険という制度が成り立っているのだということをわかってほしいものだ。
給料を受け取る時に思い出してほしいと願っている。
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