雇用促進あれこれ

 「雇用」を促進するために、新しい税制が創設されます。
また、新卒者雇用の助成金も2月1日から変わる(拡充される)ものがあります。
今回は 創設される 雇用に関する税制 と雇用して受給できる助成金の改正をみてみます。
 税と助成金の両面で、雇用を後押しする制度改正があります。

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■■ 雇用と税 ■■

■ 雇用促進税制の概要

「税制改正大綱」が平成22年12月16日にだされました。
近年にない大改正となりました。 ネットで簡単に大綱を見ることができますが、135ページもあります。
雇用に関しては、雇用を増やした企業の税負担を軽くするという、税制上の優遇措置がとられることになりました。

■ 税の優遇が受けられる要件

税制上の優遇措置を受けるためには以下の3つのことを充たす必要があります。
・ 青色申告書を提出する法人であること・ 公共職業安定所長に雇用促進計画の届出を行うこと・ 平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、当該事業年度末の従業員のうち雇用保険の一般被保険者数が、10%以上 かつ 5人以上(中小企業者等については、2人以上)増加したこと 新規に大勢雇用したとしても、退職者も同じくらいいたら、該当しないことになります。
雇用保険の被保険者には一般被保険者のほか、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇い労働被保険者がありますが、一般被保険者であることが要件です。
短時間労働者であっても1週間20時間以上、31日以上働いているのであれば雇用保険の一般被保険者であり人数に含まれます。
短時間労働者を多く雇うことでも税の優遇は受けられるのです。

■ 優遇の内容

  • 法人税額から一定額が控除されます。
  • 控除額は、増加した増加した雇用保険一般被保険者の数に20万円を乗じた金額です。
  • 雇用増×20万円】が税額控除されます。

多く雇いいれるほど税金が安くなるということですが、当期の法人税額の10%(中小企業者等は20%)が上限となっています。
法人住民税も同様に適用されます。

■ 次世代育成支援をする企業への優遇

雇用促進税制ではさらに、次世代育成支援対策推進法に基づく認定を受けた企業にも税の優遇措置が新設されます。
【要件】
・平成23年4月1日~平成26年3月31日までの間に
・青色申告所を提出する法人で、
次世代育成支援対策推進法の認定を受けたもの(くるみんマーク取得企業)が
事業用建物を一定期間内に増改築・新築した場合
【内容】
普通償却限度額の32%の割増償却が認められます。

■■ 雇用と助成金 ■■

 =22年度卒業予定者も助成金の対象に!=

 学校を卒業しても就職していない人たちを就業させようと、3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金 や 3年以内既卒者トライアル雇用奨励金があります。(22年9月から)
平成22年度の卒業予定者も対象になるという改正が今年に入って行われました。
平成23年2月1日以降は、平成22年度卒業予定者で就職先が未決定の方も対象となります。

■ 3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金  は どんな人を雇えば?

対象者は大学、大学院、短大、高専および専修学校を平成20年3月以降に卒業後、安定した就労の経験がない(1年以上継続して同一の事業主に正規雇用された経験がない)人。または、平成22年度に大学等の卒業を予定している人です。
ハローワークまたは新卒応援ハローワークに求職登録をしていなければなりません。
知り合いからの紹介で新卒者を採用しても、職業安定所を通さなければ奨励金は支給されません。

■ 3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金はいくらもらえる?

正規雇用から6か月後に100万円が支給されます。
奨励金の支給は、雇用保険適用事業所単位で、1事業所あたり1回限りです。
正規雇用とは「期間の定めのない雇用で、1週間の所定労働時間が通常の労働者と同程度である労働契約を締結し、雇用保険の一般被保険者(ただし1週間の所定労働時間が30時間未満の者を除く)として雇用する場合」をいいます。

■ 3年以内既卒者トライアル雇用奨励金はどんな人を雇えば?

この助成金の対象者は、中学、高校、高専、大学、大学院、短大、専修学校を平成20年3月以降の卒業者です。平成22年度卒業予定者も対象です。

■ 3年以内既卒者トライアル雇用奨励金はいくらもらえる?

原則3か月の有期雇用を結びます。その間必要な技術や知識を身につけてもらい、その後正規雇用へとつなげることをねらいとする制度です。
3か月の有期雇用期間は月額10万円が受給できます。3か月のトライアル期間終了後、正規雇用契約をすると、正規雇用から3か月後に50万円が受給できます。

■ 二つの助成金の共通点、相違点

二つの助成金は新卒者就職実現プロジェクトとして昨年9月にできました。
この2月1日から卒業を間近に控えた学生も含まれるよう対象が拡大されたことは共通しています。
けれども、既卒者採用拡大奨励金の対象に中学、高校卒業者は含まれていません。
正規雇用したら100万円を払いますという大きな金額の思い切った助成金の対象者は、大学等の卒業者に限られています。
高校卒業者をすぐに正規雇用したら助成金はもらえないで、3か月のトライアル雇用の後正規雇用すれば合計で80万円もらえるのです。受給に当たっては注意が必要です。

■ 雇用を積極的に

これらの雇用対策がどのように効果を発揮するのかわかりませんが、優秀な人材を求める企業には好機といえるでしょう。

その他の記事

 ト ピ ッ ク ス

【 年金給付50兆円突破 】平成21年度厚生年金・国民年金事業の概況                                                              平成23年1月24日    厚生労働省発表 報道発表資料によれば、公的年金受給者の年金総額は年を追うごとに増加し、平成21年度末では過去最高額の50兆3千億円、前年に比べ1兆4千億円(2.8%)増加したという。
年金の受給者数は3,703万人と前年度比3.1%で過去最高となった。年金制度加入者は0.9%減の6,874万人に減った。現役1.8人で受給者1人を支えていることになる。
厚生年金保険の被保険者数は2年連続で減少、3,425万人。標準報酬月額の平均は30万4千円(うち男子34万5千円、女子22万9千円)で、前年度末に比べ2.8%減少している。
標準賞与額の1回あたりの平均は41万9千円で前年度に比べて8.1%減少している。
また、65歳以上の男子の平均年金月額は193,393円となっている。(詳細は厚労省のHP参照)
今後年金給付総額はさらに膨らみ、2015年に59兆円、2025年に65兆円になる見通し。

 シリーズ  年   金

~ 加給年金はいつから? ~
Q 今年60歳になる男性は65歳から満額の年金を受給できますが、加給年金はいつからになりますか?
A 定額部分の支給が65歳になる前までは、定額部分の支給開始年齢になったときに加給年金が受給できました。今年60歳定年を迎える男性は、65歳で老齢厚生年金がもらえます。
20年以上の厚生年金の加入期間があり、生計維持関係にある配偶者(65歳未満)がいれば、加給年金が65歳から支給されます。

 健康保険のことば

【限度額適用認定申請書】
私傷病で入院しなければならなくなったとき(本人・家族)は、限度額適用認定申請書を協会けんぽに提出し、認定証をもらうことで経済的負担を軽くすることができます。
保険証のコピーを添え、認定証の送付先、入院予定期間などを申請書に記載します。
入院時に認定証を提示すれば、高額療養費を現物給付というかたちで(現金の負担なく)受けることができます。

 『パートタイマーとは?』 1月□日 業務日誌より

 質問を受けました。「パートタイマー就業規則を作成するに当たり、定義で困っている。どうすれば・・・」
パートタイマーとして雇用している人のすべてが1日の労働時間が正社員より短いのであればまず問題はおきませんが、正社員とほぼ同じ労働時間・態様で、賃金のみ時給という人がいると、社会保険の加入などでは正社員と同等なので、「パートタイマー」に入れてよいかと悩むことになります。
正社員に昇給、賞与、退職金を支給する会社の多くで、パートタイマーにはそれらがないことがあります。
『フルタイムのパートタイマー』はあくまでも臨時的な扱いとして正社員登用への道筋をつけておき、3か月とか6か月とか期間の定めのある雇用契約にしておくのがよいのではないでしょうか。
その場合就業規則には、「パートタイマーとは所定労働時間が正社員より短い労働者、または6か月以内の雇用期間を定めて雇用される労働者」と定義しておくこととなるでしょう。
(会社ごとの実情によりそのほかに考慮しなければならないことはあります。)