3号被保険者って何?

 専業主婦の年金未納を救済する特例の是非が話題になっています。
保険料を払わなくても払ったことになって、将来年金がもらえるというしくみ。
いったい何故、どのようにしてできたものなのでしょう。会社が気をつけることは?

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 重要ポイント

従業員の扶養家族である配偶者の年金(国民年金の第3号被保険者)の手続きは、健康保険の扶養手続きとセットで会社が行うことになっています。
手続き忘れが大変なことになることをキチンと知って、届け出もれを防ぎましょう。

 3種類の国民年金加入者

国民年金の加入者は第1号から第3号まで3種に分けられています。
第2号被保険者は、厚生年金または共済年金に加入している人です。
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者(専業主婦(夫))で20歳以上60歳未満の人のことです。
第1号被保険者は、もともと自営業者等を対象としていましたが、自営業者の配偶者や学生、農林漁業者、国会議員、フリーター、無職の人も入ります。第2号被保険者、第3号被保険者でない人は全て第1号被保険者です。

 第3号被保険者は昭和61年に遡る

昭和60年まで、専業主婦などの年金については加入が強制されていませんでした。離婚したときや障害を負ったときに年金がもらえないという問題がありました。
そこで、専業主婦など、配偶者が厚生年金や共済年金に加入している人も国民年金の強制対象とし、保険料の負担はしなくてよいという制度ができました。
保険料は、配偶者が加入している厚生年金や共済組合が負担すると決められたのです。
この制度は世帯単位で年金を考えていて、夫が稼ぎ妻は専業主婦を想定しています。
一方、夫が自営業なら、妻は国民年金の保険料を自分で支払う第1号被保険者になり、世帯単位という制度はありません。

 男女で違いがあった厚生年金

今では信じられないことですが、厚生年金の保険料率は男女別に決められていました。昭和22年、男子の保険料率は94/1000、女子は68/1000でした。
男女差の解消は段階的に進められ、ようやく平成6年から男女同率となりました。(平成23年現在の厚生年金保険料率は160.58/1000で平成29年には183/1000になります。)
年金をもらえる年齢も男子は60歳、女子は55歳という違いがありました。特別支給の老齢厚生年金(60歳から65歳までの間に支給される年金)の支給開始年齢は今も男女で5歳の差があります。
また女性は長期に厚生年金に加入しないだろうと脱退手当金という制度もありました。加入期間2年以上、女性であれば年齢制限なしで退職時に支払われていたお金です。(男性には年齢制限がありました。今、脱退手当金の制度はありません)

 働いているのに3号

雇用されて働いているからといって、第2号被保険者とは限りません。
いわゆる4分の3要件です。
昭和55年、短時間労働者の厚生年金の適用は「1日又は1週間の所定労働時間、1カ月の勤務日数がそれぞれ通常の労働者のおおむね4分の3以上であること」という通知が出されました。
実務ではこの要件に当てはまるか否かが重要ですが、この通知は法律でも通達でもなく内款という取り扱い通知に過ぎないものです。この通知が出されてから30年になりますが、現在も続いています。
要件では労働時間と勤務日数が問われていて、給与額は問われていません。
第3号被保険者は女性とは限りません。第2号被保険者の被扶養配偶者である男性も第3号被保険者になれます。

 パートでも1号

扶養されているとはどういうことをいうのでしょうか。 年収で130万円を超える見込みがあると、社会保険の被扶養者でいることができません。
時給1200円で週25時間、1か月100時間で働くパートタイマーを考えてみましょう。
雇用されている会社では4分の3を満たさないので社会保険に加入できません。この場合、月収が12万円で年収は144万円になりますから配偶者の扶養にもなれません。
2号でも3号でもなく第1号被保険者になります。自分で自分の国民年金保険料を納めなければなりません。

 種別変更の手続き

就職したときは会社が年金加入(第2号)の手続きをしてくれます。
退職して自営業になるのなら、第1号被保険者になるわけですが、住所地の市区町村へ本人が届け出ることになります。
会社員だった夫の第3号被保険者であった妻も、夫の退職に伴い、第1号被保険者になりますが、この届出も同様に市区町村に本人がしなければなりません。そして夫婦でそれぞれ国民年金保険料を負担します。
OLが会社員と結婚して退職し、専業主婦になったりパートタイマーになったりしたときは、配偶者の扶養家族になれます。年金の区分は第2号被保険者から第3号被保険者に変わります。この手続きは夫の会社が行います。
また無職の女性が会社員と結婚して専業主婦になると、区分は第1号被保険者から第3号被保険者に変わりますが、手続きは夫の会社が行います。
この種別変更の手続きを被保険者本人ではなく事業主が行うことになったのは、平成14年4月からです。

 会社手続きの重要性

万が一、会社が被扶養配偶者の手続きを忘れているとどうなるでしょう。
国民年金の未納期間となってしまいます。
その場合、さかのぼって第3号被保険者としての保険料納付済み期間とみなされるのは2年間が限度です。
従業員から妻が退職したと連絡を受けた場合は第3号被保険者になる手続きを遅滞なく行うようにしましょう。 配偶者が派遣社員、5か月などの雇用契約で働く臨時職員の方は種別変更を頻繁に行う可能性が高いですが、従業員と連絡をよくとって間違いのないようにしましょう。

 定年退職の従業員に一言説明を

区分変更については従業員が定年退職するとき、気をつけてほしいことがあります。
年下の扶養の配偶者がいて60歳未満であれば、退職後その配偶者は第3号被保険者でなくなるということです。保険料負担なしの3号から1カ月1万5千円の保険料負担となる1号になるのです。

公平で魅力ある年金制度であってほしいと強く思います。

その他の記事

 ト ピ ッ ク ス

<<外国人労働者が前年比15%強の増加>>
外国人雇用状況の調査から(平成21年10月末現在)
平成19年10月1日からすべての事業主に対し、外国人労働者の雇い入れ又は離職のときに、外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間についてハローワークに届け出ることが義務付けられている。
職業安定局の道発表資料によれば、外国人労働者数は649,982人(前年は562,818人)で15%増加した。国籍別では中国が最も多く287,105人で外国人労働者全体の44.2%。ついでブラジルが17.9%。
産業別では外国人労働者を雇用する事業所、外国人労働者ともに、製造業が最も多く全体に占める割合はそれぞれ31.6%、39.9%。製造業に次いで卸売業小売業、サービス業従事者が多い。事業所規模別では「30人未満の事業所」が最も多い。
正式な届出の数字だけで15%以上の増加である。
労働法の遵守や社会保険の実態はいかがなものであろうか・・・

 シリーズ  年   金

~ 日本年金機構 ~
社会保険庁が廃止され、平成22年1月1日から日本年金機構が設立されました。
日本年金機構は国(厚生労働大臣)から委託・委任をうけ、公的年金に係る業務(適用・徴収・記録管理・相談・裁定・給付等)を行っています。これにともない、社会保険事務所は年金事務所に名前を変えています。
また届書処理業務は年金事務センターで行われています。

 健康保険のことば

【 出産手当金 】
健康保険の被保険者が出産のために仕事を休み、給料を受けられないときに支給されます。
出産日(出産予定日より遅れた場合は予定)以前42日から出産日後56日までの間。

支給額は欠勤1日につき標準報酬日額の3分の2です。

 『社会保険に加入すると?』

・・・ ご相談から
 「社会保険に加入したいのだが相談にのってほしい」
まずは広い意味で社会保険といっても、労災保険と雇用保険、それに健康保険と厚生年金があることを説明しました。労働保険と社会保険のちがいからの説明です。
「労災保険と雇用保険は働いている従業員を守るための国の保険。労災保険は業務中だけでなく通勤のときのケガも保険の対象。アルバイトも例外なく労災の適用があります。雇用保険は失業したときだけでなく育児休業のときなどにも給付がある制度。パートタイマーでも加入できる場合があります。 社会保険は15万円の人が加入すると健康保険と厚生年金で約4万円(会社と本人が2万円ずつ負担)かかります。制度に加入していると・・・」
会社負担もバカにならないけれど、スタッフにとって魅力ある職場とするため、きちんと加入しようということになりました。 あいまいだった雇用契約もみなおして、きちんと保険にも。誠意を持ってサポートします!