2013年に備えよう

 60歳になると年金が少しもらえるようになり、数年後には年金が増える・・・
今まではそうでしたが、2013 年になると(2013年度に60歳になる人から)60歳になっても年金は1円ももらえません。 (男性の場合。女性は5年遅れとなります)
 従業員の退職年齢をふまえた対策はとられていますか?

定年制、雇用確保措置、新潟、社会保険労務士

 重要ポイント

60歳定年後年金が1円ももらえない、そんな 2013年が目前となった今、60歳からの雇用をどうするか、改めて考えてみるべきです。

 定年とは

一定の年齢に達したときに、労働契約が終了しますというキマリが、定年制です。
定年に達すると当然に労働契約が終了します。働き続けたい人も自動的に退職とするしくみが定年制です。かつては55歳定年制もありましたが、現在では定年を定める場合には60歳以上としなければなりません。
また、年金支給開始年齢まで働き続けることができるようにと、高年齢者雇用安定法が平成16年に成立、18年より段階的な実施が義務付けられました。年金(定額部分)の支給開始年齢の引き上げに合わせて、平成25年までの間に65歳までの雇用確保措置をとらなければなりません。
定年は年齢に基づく差別という見方もできる一方、定年までは雇用が保障されるという、労働者にとって安心感・メリットもある制度ともいえます。

 定年制と裁判例

60歳は若い、昔の60歳とは違う・・・という実感が多くの人にあると思います。
「およそ定年制は一般に、老年労働者にあっては当該業種又は職種に要求される労働の適格性が逓減するに係らず、給与が却って逓増するところから、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織及び運営の適正化のために行われるものであって、一般的にいって不合理な制度ということはできない」(秋北バス事件 最高裁 大法廷 昭43.12.25判決)
このように最高裁で定年制の適法性を肯定しています。

 雇用確保措置とは

65歳未満の定年を定めている事業主は、定年制を廃止するか、定年を65歳まで引き上げるか、65歳までの継続雇用制度を導入するかいずれかのことをしなければなりません。
定年制の廃止や、65歳まで定年を引き上げるといったことはなかなかできません。
その場合、65歳までの継続雇用制度をたとえば以下のように設けることになります。
「60歳に達した日の属する賃金締切日をもって定年退職とする。継続雇用を希望する者は、60 歳 以 降、1 年ごとの契約更新により65歳まで(平成25 年3月31日までは64 歳までの実施義務)雇用する」
60歳を定年とし、その後は一人ひとりと労働条件を見直して、雇用契約を新たに結ぶことで、60歳以後の雇用を維持すれば、高年齢者雇用安定法に違反することはありません。このような規定は今後もお勧めです。

 職安からの「高年齢雇用継続給付」とは

労働条件を見直して雇用契約を新たに結び、賃金を下げるのであれば、高年齢雇用継続給付のことをきちんと知るべきです。
高年齢雇用継続給付とは60歳になって賃金が大きく下がると、職安から本人にもらえるお金のことです。
従業員本人の口座にお金が振り込まれるのですが、賃金台帳や出勤簿の提出が伴うため、事業主がすることが求められている手続きです。
賃金が60歳時と比べて75%未満になったときに支給される給付金ですが、60%に下がると支給率が一番高い15%となります。
60歳のとき(60歳になる前の6カ月の残業込みの賃金の平均、賞与は含まない)の賃金が 30万円だったとしましょう。60歳以降、30万円の賃金が60%の18万円に下がったとすると、18万円の15%である27,000円(1か月あたり)が給付されます。
70%の21万円では21万円の4.67%である 9,807円が給付されます。
もし、60歳のときの賃金が40万円で、24万円に下がると36,000円が給付されます。
40万円の70%にあたる28万円に下がると、 13,076円がもらえます。
低下率による給付金の金額を調べ、労働条件を検討しましょう。

 60歳以降の継続雇用と労働条件

退職金制度のある会社であれば、定年時に退職金を支払うことが一般的です。
「定年退職時に退職金を支給し、継続雇用者に退職金は支給しない」これが会社にとってリスクの少ない規定です。
60歳で新しい雇用契約を結ぶときに気をつけなけれならないのが、年次有給休暇です。契約はリセットですが、年次有給休暇については継続勤務の実態があるのですから、ゼロからスタートでなく、今までと同様の取扱いを続けなければなりません。
「定年退職時に保有する年次有給休暇は、再雇用後に持ち越すこととする。
年次有給休暇の付与日数の計算上、勤務年数は定年前と定年後を通算する。」
意外と思われるかもしれませんが、「定年後については、年休を持ち越さない」とすることはできません。

 60歳で退職すると失業給付はどのくらい?

60歳定年を楽しみにしていた、退職してこんな生活をするのだとバラ色の新しい人生を考えている方もいらっしゃるでしょう。きっぱり定年退職する、そんな方に失業給付はどのくらい出るのでしょうか。
どんな高額な賃金だった方も、どんなに長く働いた方も、雇用保険の手当には上限があります。
まず、金額ですが、60歳以上65歳未満であれば最高額が6,777円です。60歳の定年退職であればこれ以上の日額はもらえません。
45歳以上60歳未満であれば最高額は7,890 円です。(平成23年8月1日現在。この数字は毎年8月1日に変わります)
次に受給できる日数ですが、雇用保険の被保険者期間により、以下の3種類です。
1年以上10年未満 == 90日
10年以上20年未満 == 120日
20年以上 == 150日

高い賃金で40年以上も働いた方でも、求職活動をして失業と認定された場合に、6,777 円が150日=1,016,550円(1か月20万円が5か月もらえるイメージ)ということです。

 2013年度から気をつけること

60歳以降は賃金と在職老齢年金と雇用継続給付の3本柱で生活を支える仕組みでしたが、2013年からは賃金と雇用継続給付の2本柱で生活をすることになります。(賃金が下がっても75%以上なら、年金も雇用継続給付も無し)
50代後半の従業員がいる会社では、国の制度(年金・雇用保険)と、会社の制度をきちんと説明し、個別の労働条件についても早めに合意形成することが求められます。

 その他の記事

 トピックス

平成23年 厚生労働白書が公表されました 8月23日
50年前の1961(昭和36)年4月に「国民皆保険・皆年金」が実現した。厚生労働白書は半世紀たった社会保障を振り返り、これからの社会保障制度改革の方向性と具体策を示している。
50年で働く人の実態は大きく変わった。
白書は、生活水準は向上しつつも雇用不安は増大したとまとめている。大家族から単身世帯が増加する社会となり、人口は増加から減少に転じた。

昭和36年の人口構成 平成21年
就業者のうち雇用者 55.1% 86.9%
自営業者 21.9% 9.5%
家族従事者 23.0% 3.2
失業者 1.4 5.1

2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げ、社会保障の財源安定化を図る。社会保障・税に関わる交通番号制度の導入を含む納税環境を整備する。非正規労働者への厚生年金・健康保険の適用を拡大するなど生活に影響する改革の方向が示されている。

 

 シリーズ  年   金

平成22年度 平成23年度
老齢基礎年金 792,100 788,900
配偶者加給 396,000 394,500
中高齢寡婦加算 594,200 591,700
加給年金(子) 227,900 227,000

~ 23年度の年金額は減っています ~

また数字を覚えなおさなければなりません・・・

 人事労務の素朴な疑問

  雇用とは?
「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」民法623条

労働者には労働義務があること、使用者には履行が終わった労働義務に対して賃金支払い義務があることを示しています。

  ◆ 「どうすればムダな残業を減らすことができるか」 ◆ 業務日誌 8月□日

 『だらだら残業を減らしたい。リーダーには残業がコストであることを認識してほしい。そんな研修を!』
こんなご要望を受けて、管理職に研修をさせていただいた。
まずは『手取り給与だけを見ていませんか?~管理職なら知っておきたい残業代・社保のしくみ~』 という内容で、講義を行った。今の時代、管理職に労働関係の法律の知識は欠かせない。特に残業をするとき、させるときのキマリをきちんと知っておくことは重要だ。管理職は「事業主のために行為をする者」であり、使用者なのだ。賞与は年2回きちんと支払われている実績があったとしても、「原則として勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が確定されていないもの」なのだ。社会保険料がここ1年半くらいで大きく上がっていること、会社は労災保険や児童手当拠出金などの法定福利費も負担していることにも言及した。「会社がこんなに負担しているなんて!」受講者の感想である。
その後は小グループに分かれ、ワークをしていただいたが、残業削減のアイデア-は、たくさん 挙げられた。次回はその削減実績を検討する。成果はどうか、講師の力量も問われている。