「週25時間勤務のパートタイマーが、妊娠
し、育児休業をとりたいといってきました。
イマーの育児休業は前例がないのですが、育
児休業を与えなければなりませんか? 何か本
人が利用できる制度はありますか?」
重要ポイント
休業給付金がもらえます。パートタ
イマーにも育児休業は付与しなけれ
ばなりません。
育児休業で休むとき、私傷病で休むとき、
業務災害で休むとき・・・様々な働けない場
面でいろいろな保障があります。
育児休業で休むとき
雇用保険に加入している人が、育児休業
(女性の場合は産後休業の翌日から原則子供
の誕生日の前々日まで)中で会社から給与が
支払われないのであれば、育児休業給付金が
もらえます。
休業に入る前の賃金の約67%のお金が180日
間もらえ、その後は50%のお金がもらえま
す。
男性が育児休業を取る場合は、配偶者の出
産日当日から育児休業の取得が可能で、同様
の育児休業給付金がもらえます。
短時間労働者であれば、毎月数百円の雇用
保険料を負担すると、数万円の給付金が10カ
月ほどもらえるというイメージです。今後は
雇用保険だけ加入している者が育児休業を申
し出るケースが増えてくると思われます。1年
以上雇用保険に加入していることが受給の要
件です。
社会保険に加入しているのであれば、育児
休業期間中は保険料が免除されます。(免除
は本人分だけでなく事業主負担分も)
産前産後で休むとき
産前産後の期間については健康保険から出
産手当金が支給されます。本人が健康保険に
加入していなければなりませんが、標準報酬
日額の3分の2のお金が産前産後の休業期間に
ついてもらえ、その間は社会保険料の負担も
ありません。
私傷病で休むとき
不注意で転倒してしばらく会社に行けな
い、あるいは、病気になって入院しなければ
ならない・・・そんなときには健康保険から
傷病手当金が支給されます。
療養のため業務につくことができず、給与
をもらえないとき、休業4日目から、標準報酬
日額の3分の2のお金がもらえます。支給開始
日から1年6か月が限度です。
業務災害で休むとき
仕事中の事故で怪我をしたり、病気になった
りしたときは、労災保険から休業補償給付が受
けられます。
育児休業給付金は雇用保険の加入者に限る
保障ですし、出産手当金と傷病手当金は健康
保険の加入者に限る保障ですが、業務災害の
休業補償は労働者であればだれでも受けるこ
とができる所得補償です。
労働基準法が業務災害の休業補償を事業主
に義務づけているからなのです。実務的には
労災保険がこの役割を果たしています。
事故発生の時から遡って3か月の賃金をベー
スにして、平均賃金を出し、治癒するまで期
間の限度なく休業補償を受けることができま
す。休業補償は平均賃金の6割ですが、特別支
給金が2割加算されるので、働いていた時の約
8割のお金がもらえます。
休業補償給付は休業4日目からの支給なの
で、3日間については事業主が直接補償しなけ
ればなりません。
休業補償は本人の過失で怪我をしても支給
されるものです。また、治癒していない状態
が続くのであれば、会社を辞めても支給され
ます。
業務上の災害とは、業務遂行性(労働者
が、雇用の指揮命令の下に置かれている状態
であること)と業務起因性(そのけがと仕事
の間に関連性があること)の2つの要件を満
たしている場合をいいます。
通勤災害で休むとき
通勤途上の災害は、事業主が補償しなければ
ならない性質のものではありません。しかし、
通勤も業務に付随する行為であるとして、昭和
48年から通勤災害にも労災保険から休業給付が
行われています。(休業補償給付ではなく休業
給付といいます)
通勤災害で休業の場合、業務災害と違って、
最初の3日間について事業主に補償の義務はあ
りません。
通勤災害とは、労働者が就業に関し、住居と
就業の場所との間を合理的な経路及び方法によ
り往復する途上における事故であって、業務の
性質を有しないものとされています。(労災
保険法第7条)
日用品の買い物のために通勤経路をはずれ
た程度であれば通勤ですが、合理的な往復の
経路を逸脱した場合、通勤災害とされない場
合があります。
メンタル疾患で仕事を休むとき
家庭の人間関係のトラブルでメンタル疾患
となる、借金など金銭的な悩み事からメンタ
ル疾患を発症したなどで仕事を休むときは傷
病手当金を請求します。
最近はメンタル疾患になったのは会社が強
いた過重労働や、職場のいじめのせいだと労
災申請する人が増えています。
業務災害は業務中の事故によるケガや病気
など身体的なことだけに限りません。
長時間労働が続いてメンタル疾患になると
業務が原因だと労災に認定される可能性があ
ります。
部下指導の名の下に、人格を否定するよう
な言動が執拗に続いたことが誘引となって、
メンタル疾患となった場合も労災認定される
可能性が高まります。
労災に認定された場合、治療費や薬代の本
人負担はありませんし、働いていたときの8
割の休業補償を治癒するまで受けることがで
きます。
業務上の災害で休んでいる期間とその後30
日は解雇が禁止されています。
労働者を保護するために手厚い給付となっ
ている労災の休業補償ですが、精神疾患が業
務災害とされ、労災認定されることは珍しい
ことではありません。
精神疾患の労災請求件数が増え続ける中、
どのようなときに精神疾患が労災認定される
のか、平成23年12月に通達で判断基準が示さ
れています。
その他の記事
ト ピ ッ ク ス 時間ではなく成果に対して賃金を払う?
ホワイトカラーの生産性を向上させようと、より柔軟な労働時間制度を導入する議論が進められている。
いわゆる残業代ゼロ法案。労働時間規制の除外(残業代や深夜手当を払う必要はない)を認めようという議論だ。
新制度の対象とする労働者に対して、企業は労働時間や在社時間を把握する義務を負う。
過重労働防止のために 次のいずれかの措置を企業に義務付ける。
① 一定日数の休日取得
② 労働時間の上限を設ける(労働時間の総量規制)
③ 終業から翌日の始業までの勤務間に一定時間の休息確保
今後は対象者の年収や職種をどうするか、議論が続けられる。
⇒ 実現すれば労働時間制度の大改革となる。>
シリーズ 労働関係の言葉
~ ストレスチェック ~
改正安衛法による、ストレスチェック制度の
施行は平成27年12月1日。
労働者本人に対する結果の通知は、医師など
のストレスチェック実施者が、他の者に見られ
ないよう封書、メールなどで行う。併せて必要
に応じ面接指導を受けるよう勧奨することにな
る。
事業主への結果通知は労働者個人ごとに同意
を得る必要がある。
【スタッフからひとこと】「育休で復帰後は3カ月後に注意」
産前産後・育児休業の間、社会保険と
雇用保険の手続きで気が抜けません。
復帰後は残業ができない、短時間勤務
など、賃金が下がることが多いようで
す。3カ月後の給与の変化を見て社会保
険の月額変更届、養育特例の手続きをれないように
行いましょう。
【 ソーシャルワークにおける就労支援 】研修 講師 12月○日
「医療相談員の就労支援研修で労働法規について研修講師をお願いしたい」
と頼まれた。病院の医療相談員(MSW)は、病気を抱えた人の医療から生活相
談、就労支援などさまざまな相談に応じている。就労支援に当たって、基礎的
な労働関係法令の知識を身につけたいという。全国のMSWが参加した。
『就労』という言葉が私にはなじみがうすい。働くことなのに、労働でも勤
労でも就職でもない。女性の就労、障害者の就労、就労ビザなど、何か困難な
ことを抱えながら働くときに就労と使うようだ。今回のテーマは難病をもつ方の就労支援であった。労働契約は、健康で労務提供する労働者と賃金を支払う使用者との契約が基本で、病気を抱
えながらの労働という問題を労使関係だけで解決することはできない。病気が治っても就労
先の理解不足が病気を再発させたりするという。医療関係者、行政機関、職場の人事担当、
福祉関係者など、連携が必要なことを意見交換して学ぶことができた。難題だ。